アネモネの花

藤間留彦

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風岡一温編

第三話 始まりの情事②

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「呆けてねえでさっさと脱げよ」

 ジーンズと下着を脱ぎ捨て下半身を露わにした先生を横目に、僕は頭が真っ白になったままパンツを脱いだ。

「ははっ、お前興奮しすぎ」

 自分のグレーのパンツが、先走りの液で滲んで色が変わっているのを、そして中心が盛り上がっているのを目にして、僕は顔が沸騰しそうなほど熱くなった。

「……ま、童貞で処女なら仕方ねえか」

 一瞬何か先生の表情が優しくなったように感じたが、すぐに背を向けてガラス張りのシャワールームに入っていったので正確には分からなかった。

「身体だけな。どうせ風呂入ってきたんだろ」

 シャワーヘッドを取り、レバーを操作して湯を出すと自分の身体、そして僕の身体に掛ける。そうしている間にも、僕はぼうっとしたまま先生の裸を見ていた。
 と、先生は悪戯っぽい表情で僕に身体を寄せて、僕の尻を撫でた。そしてシャワーヘッドを僕の後ろに向けると、指をその間に挿し入れた。

「っ……ん、ぅ……」
「へえ……綺麗にしてきたんだな、ちゃんと」

 指が一本、中を拡げるように挿入ってくるのが分かる。異物感がして心地良いという感覚は無かったが、先生と密着しているという状況が僕を高揚させていた。

「……あっ」

 先生が僕の胸に顔を寄せ、舌で上向いた突起を舐める。甘い刺激が伝わり、身体がびくんと震えた。

「風岡って、胸弱いのな。今中が動いたぜ」

 孔に指を挿入れられたまま、乳頭を何度も舌で愛撫されると、体中の血液が沸騰したかのように熱くなって、この快感から逃れたいような、でも続けて欲しいと思う、堪らない気持ちになる。

「……じゃあ後はベッドで、な」

 と、僕の気持ちとは裏腹に先生はあっさりと愛撫をやめ、シャワーを止めた。

 シャワールームから出て、棚の上にあったバスタオルで身体を拭いて、裸のまま先生の後ろ姿を追うようにベッドの前に立つ。

「正常位と後背位、どっちがいい?」

 先生が鞄から何かを取り出している。本物を見たことが無いけれど、多分ゴムとローションだ。

「……わからない、です……」

 初めてなら後背位が一番痛くない、とネットの情報には書いてあった。

「……でも、先生の顔見て……したいです」

 先生はニヤッと笑みを浮かべると、僕をベッドに横になるように誘導する。足元に立って一糸纏わぬ姿の先生を見上げ、僕の心臓は今にもはち切れてしまいそうだ。

「で、セックスしたい風岡君は、どういう格好すればいいんだっけ?」

 先生の言いたいことは、彼が手に持ったローションを見てすぐに理解した。だから、僕は自分の両脚を抱えるように持って、ゆっくりと股を開いた。

「ははっ、スケベだな」

 散々夢に見てきた先生は、いつも優しく僕を導いてくれたけれど、実際はとても意地が悪い。
 けれど、僕はどうやらマゾヒズムの気があるようで、酷く恥辱を覚えながらも、全身が火照る。

「積極的な方がやりやすくていいけど」

 先生がローションの入った容器を僕の尻の割れ目に向けて傾ける。と、液体の冷たさに思わず身体がびくりと反応する。

「ちゃんと見てろよ。今から自分がされることを」

 先生は自分の右手にローションを垂らし、指に塗り込むとベッドの下の方に膝を立てて座った。そして僕に見えるように中指を立て、僕の搾まりに指先を添え当てる。

「ん……」

 滑りを良くした先生の指は、さっきシャワールームで触られていたせいもあるだろうけれど、すんなり根元まで入ってしまった。

「お前さ、自分で弄ったことねえだろ、これ。結構解さねえと痛いぞ」
「……すみませ、っ」

 鈍い痛みを覚えて下半身を見ると、先生が二本目の指を挿入していた。そして、先生が二本の指を中を拡げるように動かし始めると、両腿の間から艶めかしい水音がし始め羞恥心のあまり顔を背ける。

「目逸らすなよ。お前の身体がどんだけエロいか、ちゃんと見とけ」

 と言うと、先生は僕の片足を掴んで脚をもっと広げさせた。そして、三本目の指を無理矢理挿し入れる。

「っ、う……あ……」

 あまりの異物感と鈍痛、狭いところを強引に拓かれる感覚、そして腹の真ん中辺りがむず痒いような感じを覚えた。

「処女でも解せば、三本も入るんだな」

 指がぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てて自分の中を出たり入ったりするのを見ながら羞恥と自分で持て余すほどの疼きに身体をくねらせる。

「せん、せっ……身体が熱、くて……も、っ……」

 全身の血が沸騰したかのように熱く、身体の奥の方が燻り始めて、「早く」と何かを急いていた。
 唐突に異物感が無くなる。先生が僕の中から指を引き抜いていた。

 苦しかったはずなのに、止めて欲しかったはずなのに、仄かに火を点し始めていた身体には、その指から与えられていた刺激さえ名残り惜しく思えた。

「そんなに欲しがらなくてもくれてやるって」

 僕の孔は、指が入っていた時のように口を半開きにしたまま、ひくひくといやらしく誘うように動いていた。恥ずかしくて顔を背けそうになったが、先生が小さな袋を口に咥えて、片手で破いて中身を取り出すのを見る。

 僕は、思わずごくりと唾を飲み込んだ。いつからだったのだろう。先生の茎が、勃ち上がっている。
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