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最終話 星と海
最終話 星と海⑨
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「だが、お前が産まれた時……俺は怖くなっちまった。また俺と郁次のように、兄弟で争う日が来るかもしれねえ。一海も流星も失いたくねぇ。だったら、流星をカタギとして育てるしかねえって思ったんだよ」
俺は、親父にとって妻の連れ子で、家を継がせるための存在でしかないと思っていた。流星は実子で、唯一愛した女との間に生まれた子だ。だから、当然大切に思って流星を危険な極道の世界から遠ざけようとした――と、そう思っていた。
しかし、それは俺の勝手な思い込みだった。親父は流星と同じように、俺のことも考えてくれていたのだ。
「一海はやっぱり海舟の子だし、流星は俺の子だ。こうならぁな」
親父は窓の外に視線を投げて、苦笑交じりにそう言った。
そうして、後のことは母さんと洸祐に任せて、俺達は病院を後にした。
藤本さんと杉内さんと連絡を取り、親父が目を覚ましたことを伝え、その流れで杉内さんの事務所に向かうことになった。流星が二人に挨拶したいと希望したからだが、俺は杉内さんが流星を受け入れるのかどうか、心配があった。
が、それは杞憂だった。流星は杉内さんにすぐに気に入られて、「組入ったらしばらく俺の下で勉強すりゃあいい」と言われたぐらいだ。流星は「兄ちゃんの下がいいから嫌ッス!」と不貞腐れていたが。
その後流星が賢太に電話をし、親父のことと自分のことを伝えた。賢太は流星の決意に戸惑っていたが、「お前の人生だからな。ま、怪我が良くなったら新人の指導してやっから待ってろよ」と冗談を言って電話を切った。
俺の事務所に連れて行くのは明日以降でいいだろうと思ったが、流星を家に一人にしておくわけにもいかず、何より流星が来たがったので、事務所に連れて行った。
流星を親父と盃を交わしてからと断って、軽く組員に紹介するに留めたが、すっかり林田は流星が将来の跡目だというつもりでいるのか、敬語で話していた。
「あー疲れたー」
流星は家に着くとソファに倒れ込むように寝転んだ。体調が万全でない状態で慣れないことをしたのだ。疲労が溜まるのも当然だろう。
「リュウ、今日はもうシャワー浴びて寝ろ」
コートとジャケットを脱ぎ、ソファに近寄ると流星が俺のネクタイを引っ張って引き寄せた。
「昨日みたいに身体洗ってよ」
誘うような台詞に、俺は流星にそっと口付け、
「身体を洗うだけじゃ済まねぇぞ」
と笑みを浮かべた。
流星は声を上げて笑うと、頬を上気させて小さく「いーよ」と俺の首に腕を絡ませる。そうしてどちらともなく深く深く唇を重ねた。
互いを求め合うことが、当たり前のことであるかのように、ただ愛を貪り合って、ただ愛を与え合って、確かな幸福を抱き締めて――。
俺は、親父にとって妻の連れ子で、家を継がせるための存在でしかないと思っていた。流星は実子で、唯一愛した女との間に生まれた子だ。だから、当然大切に思って流星を危険な極道の世界から遠ざけようとした――と、そう思っていた。
しかし、それは俺の勝手な思い込みだった。親父は流星と同じように、俺のことも考えてくれていたのだ。
「一海はやっぱり海舟の子だし、流星は俺の子だ。こうならぁな」
親父は窓の外に視線を投げて、苦笑交じりにそう言った。
そうして、後のことは母さんと洸祐に任せて、俺達は病院を後にした。
藤本さんと杉内さんと連絡を取り、親父が目を覚ましたことを伝え、その流れで杉内さんの事務所に向かうことになった。流星が二人に挨拶したいと希望したからだが、俺は杉内さんが流星を受け入れるのかどうか、心配があった。
が、それは杞憂だった。流星は杉内さんにすぐに気に入られて、「組入ったらしばらく俺の下で勉強すりゃあいい」と言われたぐらいだ。流星は「兄ちゃんの下がいいから嫌ッス!」と不貞腐れていたが。
その後流星が賢太に電話をし、親父のことと自分のことを伝えた。賢太は流星の決意に戸惑っていたが、「お前の人生だからな。ま、怪我が良くなったら新人の指導してやっから待ってろよ」と冗談を言って電話を切った。
俺の事務所に連れて行くのは明日以降でいいだろうと思ったが、流星を家に一人にしておくわけにもいかず、何より流星が来たがったので、事務所に連れて行った。
流星を親父と盃を交わしてからと断って、軽く組員に紹介するに留めたが、すっかり林田は流星が将来の跡目だというつもりでいるのか、敬語で話していた。
「あー疲れたー」
流星は家に着くとソファに倒れ込むように寝転んだ。体調が万全でない状態で慣れないことをしたのだ。疲労が溜まるのも当然だろう。
「リュウ、今日はもうシャワー浴びて寝ろ」
コートとジャケットを脱ぎ、ソファに近寄ると流星が俺のネクタイを引っ張って引き寄せた。
「昨日みたいに身体洗ってよ」
誘うような台詞に、俺は流星にそっと口付け、
「身体を洗うだけじゃ済まねぇぞ」
と笑みを浮かべた。
流星は声を上げて笑うと、頬を上気させて小さく「いーよ」と俺の首に腕を絡ませる。そうしてどちらともなく深く深く唇を重ねた。
互いを求め合うことが、当たり前のことであるかのように、ただ愛を貪り合って、ただ愛を与え合って、確かな幸福を抱き締めて――。
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