流れる星は海に還る

藤間留彦

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最終話 星と海

最終話 星と海⑤

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 流星の身体を搔き抱いて、もう一度唇を重ねた。湧き上がる衝動のまま、貪るように唇を食む。流星が息苦しそうに薄く開いた口を舌で抉じ開け、上顎の裏を撫ぜた。

「ふっ……ん……」

 身体がびくっと震える。逃げられないように腰を引き寄せ、舌を絡ませて唇を塞ぐと、俺の背にしがみつくようにコートを両手で掴んだ。

 唇を離すと、唾液が絡み合って艶めかしい音が響いた。流星は腰が砕けそうなのを俺の腕を掴んで耐える。そして恍惚として俺を見上げた。
 口端から唾液が垂れ落ち、俺がそれを舐め取ると流星は顔を真っ赤にして俺から身体を離した。その時、ようやく流星の下半身が反応しているのに気付いた。

「悪い、やり過ぎた」

 流星の初々しい反応を見て、こういうことの経験が浅いのだろうかと思う。夜の街に歌手活動のためとはいえ出入りしていれば、大なり小なり誘惑がありそうなものだが。

「冷えてきただろう。車に戻ろう」

 流星は少し間を置いて頷く。俺が先に歩き出すと、後ろから黙ったままついてきた。助手席のドアを開けて先に座らせてから、車に乗り込む。

 エンジンを掛け、バックミラーを確認する時に、流星の方をちらりと確認する。膝の上に手を置いたまま俯いている。流星に触れたい衝動が高まって、自分本位なことをしてしまった。

 およそ恋愛などしたことがなく、今まで性欲処理のための相手しかいなかった上、皆経験豊富な夜職の女だ。経験の少ない流星にはあまりに性急過ぎた。心の準備ができるまでは、直接的な接触は控えよう。

「……家まで、我慢できない」

 車を近くにあったコンビニでUターンさせて、来た道を戻り始めた時だった。黙っていた流星が、ぼそりと呟く。

「抱いて、欲しい」

 その言葉に、見詰める視線に、俺は思わず正面を向いたまま喉を鳴らした。

 街道沿いに派手な照明の建物が見える。ウインカーを出してその建物の駐車場に入った。

「ここがどこか分かるか?」
「わか、る……」

 流星の緊張感が伝わってきて、心音が早くなる。煙草が吸いたい。落ち着かない。唇を触って湧き上がる衝動に戸惑う。

「もし嫌なら、殴ってでも止めてくれ。さっきみたいに、お前の嫌がることしちまいそうだ」
「ち、違う! さっきは嫌じゃなくて……兄ちゃんに、引かれたくなくて……」
「引く? わけねえだろ」

 流星の方を向くと、頬を赤く染め、吐息を零して俯いた。

「……キスだけで、イった、から……」

 内股になって、居心地悪そうに膝を合わせるのを見て、大きな溜息を吐いて車を降りた。そして助手席のドアを開ける。

「あんまり煽るな。手加減できなくなる」

 流星は俺を見上げた後、唇をきつく閉じて車から降りた。衝動を抑えるのに必死でつい険しい顔をしていたようで、流星を萎縮させてしまった。

 俺は流星の先を行き、フロントのタッチパネルで適当な部屋を選ぶ。奥にあるエレベーターで選んだ部屋の階数ボタンを押した。

 エレベーターを降りて一番奥の部屋だった。流星を先に通してから中に入ると、左手に浴室、正面にベッドルームがあった。

「手加減、しなくていい」

 ベッドの前で俺を振り返り、強請るような視線を向ける。

「兄ちゃんになら、何されてもいい」
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