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第四話 流星
第四話 流星②
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兄ちゃんは俺に「投資家」という仕事をしていると言っていたけれど、賢太という雑用係が迎えに来たりするようになった頃から、何か変だなと思い始めた。
周りの子供の親は「ヤクザ」なんじゃないかと噂していて、小学校に上がった頃に、その意味が分かっているんだかいないんだか、とりあえず「悪いことをしている」と親から教わったらしいクラスメイトのボス的な奴にいじめを受けた。兄ちゃんの金髪にサングラスの格好を馬鹿にされて悔しくて泣いて帰った。
兄ちゃんに「どうしてそんな髪の色してるの?」って聞いたら、「舐められないためだ」って。兄ちゃんは顔がすごく優しいから、周りの人が馬鹿にしてくることがあって、そんな風に馬鹿にされないために強いんだぞって見せているんだって答えた。
俺はまた馬鹿にされないようにって兄ちゃんに頼んで髪を金色に染めてもらった。次の日俺を馬鹿にしてきたクラスのボスはかなりビビっていたけれど、向こうにもプライドがあったのか、言い掛かりをつけてきて、俺が相手をしないでいるとこう言って突き飛ばしてきた。
「お前もお前の兄ちゃんも、雑魚のくせに!」
倒れた先が悪くて、頭を机の角で打った。ずきずきと痛む側頭部、手にこびりついた血――俺の中で張り詰めていた糸が、プツンと切れた。
気付いた時には血だらけでボスの上に馬乗りになって顔を殴り付けていた。駆け付けた先生に止められるまで。
俺が怪我をしたと聞いて病院に駆けつけたのは賢太だった。兄ちゃんは仕事の都合ですぐに来られなかったらしい。正直、ボスを殴ったことを怒られると思っていたので、胸を撫で下ろした。
「賢太、兄ちゃんには言わないで!」
「言わないでって……お前が本当に殴ったのか?」
賢太は信じられないような顔で俺を見た。今まで暴力を振るったこともなく、虫を殺したことさえ無かったからだろう。
「……あいつ、俺も兄ちゃんも、雑魚だって言ったんだ。だから、俺が兄ちゃんは雑魚じゃないって分からせなきゃって」
俯く俺の頭をぽんと撫でて「まあ兄貴のメンツのためなら仕方ねえわな」と苦笑した。そうして兄ちゃんも知らない俺と賢太の秘密ができた。
俺は兄ちゃんの前では素直な弟のままでいたけれど、俺の見た目や噂を理由に喧嘩を売られるようになって、その度に返り討ちにし、賢太が後始末に追われるようになった。賢太も律儀に兄ちゃんに告げ口しないでいるから不思議だった。
小さい頃から歌が好きだった。というよりも、俺が歌うと兄ちゃんが上手いと褒めてくれるから嬉しくて、「将来は歌手になるのか」と聞かれたから、素直にそれを将来の夢にするようになっただけだった。俺はずっと兄ちゃんと結婚するのが夢なんだけどな、と男同士で結婚できないことを知りつつ、思ったりした。
高校に上がり髪をペールブルーに染め、両耳にピアスを空けた頃には、兄ちゃんはもうほとんど家に寄り付かなくなっていた。週に一、二度顔を見に会いに来るくらいで。
兄ちゃんも賢太も、仕事が忙しいからと誤魔化していたが、兄ちゃんはきっと「ヤクザ」の中で偉くなったのだろう。何かあった時に俺に迷惑が掛からないようにと距離を取ったのだ。
その頃には無論精通もして性欲は最盛期。後ろを使った自慰も覚え、毎晩くらい兄ちゃんをおかずにしていた。
周りの子供の親は「ヤクザ」なんじゃないかと噂していて、小学校に上がった頃に、その意味が分かっているんだかいないんだか、とりあえず「悪いことをしている」と親から教わったらしいクラスメイトのボス的な奴にいじめを受けた。兄ちゃんの金髪にサングラスの格好を馬鹿にされて悔しくて泣いて帰った。
兄ちゃんに「どうしてそんな髪の色してるの?」って聞いたら、「舐められないためだ」って。兄ちゃんは顔がすごく優しいから、周りの人が馬鹿にしてくることがあって、そんな風に馬鹿にされないために強いんだぞって見せているんだって答えた。
俺はまた馬鹿にされないようにって兄ちゃんに頼んで髪を金色に染めてもらった。次の日俺を馬鹿にしてきたクラスのボスはかなりビビっていたけれど、向こうにもプライドがあったのか、言い掛かりをつけてきて、俺が相手をしないでいるとこう言って突き飛ばしてきた。
「お前もお前の兄ちゃんも、雑魚のくせに!」
倒れた先が悪くて、頭を机の角で打った。ずきずきと痛む側頭部、手にこびりついた血――俺の中で張り詰めていた糸が、プツンと切れた。
気付いた時には血だらけでボスの上に馬乗りになって顔を殴り付けていた。駆け付けた先生に止められるまで。
俺が怪我をしたと聞いて病院に駆けつけたのは賢太だった。兄ちゃんは仕事の都合ですぐに来られなかったらしい。正直、ボスを殴ったことを怒られると思っていたので、胸を撫で下ろした。
「賢太、兄ちゃんには言わないで!」
「言わないでって……お前が本当に殴ったのか?」
賢太は信じられないような顔で俺を見た。今まで暴力を振るったこともなく、虫を殺したことさえ無かったからだろう。
「……あいつ、俺も兄ちゃんも、雑魚だって言ったんだ。だから、俺が兄ちゃんは雑魚じゃないって分からせなきゃって」
俯く俺の頭をぽんと撫でて「まあ兄貴のメンツのためなら仕方ねえわな」と苦笑した。そうして兄ちゃんも知らない俺と賢太の秘密ができた。
俺は兄ちゃんの前では素直な弟のままでいたけれど、俺の見た目や噂を理由に喧嘩を売られるようになって、その度に返り討ちにし、賢太が後始末に追われるようになった。賢太も律儀に兄ちゃんに告げ口しないでいるから不思議だった。
小さい頃から歌が好きだった。というよりも、俺が歌うと兄ちゃんが上手いと褒めてくれるから嬉しくて、「将来は歌手になるのか」と聞かれたから、素直にそれを将来の夢にするようになっただけだった。俺はずっと兄ちゃんと結婚するのが夢なんだけどな、と男同士で結婚できないことを知りつつ、思ったりした。
高校に上がり髪をペールブルーに染め、両耳にピアスを空けた頃には、兄ちゃんはもうほとんど家に寄り付かなくなっていた。週に一、二度顔を見に会いに来るくらいで。
兄ちゃんも賢太も、仕事が忙しいからと誤魔化していたが、兄ちゃんはきっと「ヤクザ」の中で偉くなったのだろう。何かあった時に俺に迷惑が掛からないようにと距離を取ったのだ。
その頃には無論精通もして性欲は最盛期。後ろを使った自慰も覚え、毎晩くらい兄ちゃんをおかずにしていた。
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