オメガの城

藤間留彦

文字の大きさ
上 下
42 / 45
第四章 革命

第四十二話

しおりを挟む
 フロアが静まり返る中、警備兵に押さえられているユンを見ると、総帥へ激しい怒りの感情をぶつけるように、睨み付けていた。ユンがこれほど怒っているのを見るのは、これが初めてだった。

「……さあ、エイクと言ったか? お前がこれで晴れて女王だ」
「何が女王だ……女王なんて、女なんて居やしない。こんな茶番に付き合ってられるか」
「そう言うな。不満なら、特別に私の番にしてやろう。お前が孕むまで他のΩは抱かないでいよう」

 総帥は俺の身体を起こし、俺の肩を撫でた。七十を超えて未だ衰えないとは恐れ入る。

「残念ながら、もう俺はそこに居るお前の息子と番関係を結んだんだ。あんたの出る幕は無い」

 そう俺が口にした時、総帥は初めてユンの方を見た。今までそこに居たことさえ知らなかったというくらいの反応だった。

「……そうか。ならば殺そう」

 そう、総統が言った次の瞬間には、総統はユンの髪を掴み、顔面目掛けて膝を蹴り上げていた。

「ッ……!」

 更に倒れ込んだユンの腹を蹴り付け仰向けにすると、喉を踏みつけにした。

「やめろッ! それ以上ユンに手を出すな! 俺がお前の言うとおりにすればいいんだろうがッ!」

 総帥は俺の言葉にほくそ笑むと、ユンの首を圧迫していた足を退ける。息を止められていたために、ユンは咳き込みながら、ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返す。

「そうだ。殺されたくなければ、女王となって私の従順な妻になれ。なに、私は寛大だからな。私が相手をしない時は、好きにそれと交合えばいい。それぐらいの自由は与えてやろう」

 そう言うと総帥は俺を縛っていた縄を解き、壇上の椅子に腰掛けた。この機にユンを助けようと思うが、警備兵が電流棒を持っていて、ユンに突き付けている。丸腰の俺では対抗できない。

「服を脱いでここに来い。お前の夫への忠誠心がいかばかりか、見てやろうじゃないか」

 何て悪趣味な爺さんなんだ、と舌打ちして、一枚一枚服を脱いでいく。

「エイク、僕のことはいい! そんなことしないでくれ……! 君だけでも逃げて――」
「馬鹿なことを言うな。言っただろ、お前のことは俺が絶対守るって」

 ――どうか、この言葉遊びで平静さを取り戻してくれ。
 合図を出すことはできない。αで総帥ともなる人間であれば、俺が少しでも可笑しな行動を取れば間違いなく気付くだろう。しかし、ユンならばきっと、起死回生の一手を思い付く。

 下着を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿で真っ直ぐに総帥の居る壇上へ階段を上った。そして椅子に座る、総帥の正面に立つ。
 総帥の手が俺の肢の間に滑り込み、指先が女性器に触れた。

「ああ、良い形だ。そんなところまでソフィアに似るとは」
「っ……!」

 指が挿入され、指先が壁に突き当たる。

「ここに肉棒を咥えたことはあるか? ソフィアにはいつも私の肉棒を半分ほど咥え込ませていたよ。私に憎悪の眼を向けて、苦痛に泣き叫ぶ彼女が愛おしかった。しかし、普段私を憎んでいても、発情期の時は挿入れて欲しいと泣いて縋るのだ。その醜い姿がまた愛おしくて愛おしくて……死ぬまで後ろの孔は使ってやらなかった」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

処理中です...