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第二章 第二の秘密
第十八話
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目が覚めると、俺はソファの上で一人横たわっていた。身体にはユンの軍服の上着が掛かっている。
「っ、う……」
身体を起こすと、腰に鈍い痛みが走った。そして尻に痛痒いような感覚がある。そうだ、俺は唐突に発情してユンと――。
「エイク! 今は無理して動かない方がいいよ!」
その声のする方を見ると、ユンがインスタントヌードルとミネラルウォーターを持って立っていた。暑かったのか軍服の下に来ていたシャツのボタンを外していて、ちらりと鍛え上げられた胸筋と腹筋が見える。
ユンはヌードルとミネラルウォーターを近くの棚の上に置くと、逃げるように少し離れたところに移動した。
「エイクが寝ている間はまだ匂いが収まっていたけど、また近付くと危ないから……ごめん」
Ωの発情期は一週間続くと聞いたが、あれからそれほどの時間眠っていたわけではないだろうし、ユンと何度も性行為をしたような感覚は無い。恐らくあの一度で一旦落ち着いたのだと見ていいだろう。
初めての発情期は短かったり、誘引の効果が弱い場合があると聞く。俺の場合不完全な状態で無理矢理抉じ開けられたような感覚があった。それも関係しているだろう。
「お腹空いてると思って……食べて。僕は先に食べたから」
「さんきゅ。あれから結構経ったのか?」
そう言って立ち上がると、ユンは顔を赤くして目を逸らした。そこで自分が下半身を丸出しにしていることに気付く。慌てて脱ぎ捨てられていたパンツを穿いた。
「三時間くらい、かな。今は昼過ぎくらいだよ」
棚の上に置かれたインスタントヌードルの上には丁寧にフォークが乗せてある。俺はそれを持ってテーブルの前に座り、ずるずると啜った。ユンは俺が食べるのを少し遠い所から、じっと見ている。
「……あんまり見られると食べにくいんだけど」
「ご、ごめん! つい、その……意識を、してしまって……」
顔を赤くしているユンを見て、思う。そうか、つい数時間前まで親友だった男とあんな状況では仕方ないとはいえ、セックスしたのだ。戸惑っているのだろう。そして、俺に対して罪の意識があるはずだ。
「別に気にしなくていいぜ。俺ユンのこと好きだし、こっそりキスしたことも何度かあるし? セックスだって……したくないこともなかったし、な」
余計なことを口走っているような気がする。暑くなってきて作業着の上を脱ぎ、邪魔な髪を耳に掛けて麺を啜った。
「……ありがとう。気を遣ってくれて。でも……君のそういう意味で好きなのは、僕じゃないでしょ?」
「は……? 誰のことを言ってるんだ?」
急にユンが少し言いにくそうに目を逸らして、ぼそりと「オリヴァー」と呟いた。そういえば、昨日もあいつの名前を出していた気がする。
「はぁ? 何で俺があいつを好きなんだよ?」
「だって、いつも二人仲良さそうにしてるから。ハグしたり……前に投げキスしたりしてた。僕には……したことないのに」
「そりゃあいつも俺も、何とも思ってねえからだろ? 投げキスとかただの嫌がらせだわ!」
まだ納得していない様子のユンを見ながら、ヌードルの汁を飲み干す。
「っ、う……」
身体を起こすと、腰に鈍い痛みが走った。そして尻に痛痒いような感覚がある。そうだ、俺は唐突に発情してユンと――。
「エイク! 今は無理して動かない方がいいよ!」
その声のする方を見ると、ユンがインスタントヌードルとミネラルウォーターを持って立っていた。暑かったのか軍服の下に来ていたシャツのボタンを外していて、ちらりと鍛え上げられた胸筋と腹筋が見える。
ユンはヌードルとミネラルウォーターを近くの棚の上に置くと、逃げるように少し離れたところに移動した。
「エイクが寝ている間はまだ匂いが収まっていたけど、また近付くと危ないから……ごめん」
Ωの発情期は一週間続くと聞いたが、あれからそれほどの時間眠っていたわけではないだろうし、ユンと何度も性行為をしたような感覚は無い。恐らくあの一度で一旦落ち着いたのだと見ていいだろう。
初めての発情期は短かったり、誘引の効果が弱い場合があると聞く。俺の場合不完全な状態で無理矢理抉じ開けられたような感覚があった。それも関係しているだろう。
「お腹空いてると思って……食べて。僕は先に食べたから」
「さんきゅ。あれから結構経ったのか?」
そう言って立ち上がると、ユンは顔を赤くして目を逸らした。そこで自分が下半身を丸出しにしていることに気付く。慌てて脱ぎ捨てられていたパンツを穿いた。
「三時間くらい、かな。今は昼過ぎくらいだよ」
棚の上に置かれたインスタントヌードルの上には丁寧にフォークが乗せてある。俺はそれを持ってテーブルの前に座り、ずるずると啜った。ユンは俺が食べるのを少し遠い所から、じっと見ている。
「……あんまり見られると食べにくいんだけど」
「ご、ごめん! つい、その……意識を、してしまって……」
顔を赤くしているユンを見て、思う。そうか、つい数時間前まで親友だった男とあんな状況では仕方ないとはいえ、セックスしたのだ。戸惑っているのだろう。そして、俺に対して罪の意識があるはずだ。
「別に気にしなくていいぜ。俺ユンのこと好きだし、こっそりキスしたことも何度かあるし? セックスだって……したくないこともなかったし、な」
余計なことを口走っているような気がする。暑くなってきて作業着の上を脱ぎ、邪魔な髪を耳に掛けて麺を啜った。
「……ありがとう。気を遣ってくれて。でも……君のそういう意味で好きなのは、僕じゃないでしょ?」
「は……? 誰のことを言ってるんだ?」
急にユンが少し言いにくそうに目を逸らして、ぼそりと「オリヴァー」と呟いた。そういえば、昨日もあいつの名前を出していた気がする。
「はぁ? 何で俺があいつを好きなんだよ?」
「だって、いつも二人仲良さそうにしてるから。ハグしたり……前に投げキスしたりしてた。僕には……したことないのに」
「そりゃあいつも俺も、何とも思ってねえからだろ? 投げキスとかただの嫌がらせだわ!」
まだ納得していない様子のユンを見ながら、ヌードルの汁を飲み干す。
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