元カレに囲まれて

花宮守

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第2章 元カレ、また元カレ

第21話

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 ――で。彼は今、健康そのもの、活力全開!という様子で、私の目の前にいる。

 入社式の後、細々とした事務手続を終えて休憩となったところで、真に物陰から手招きされた。すいすいと歩いていくのを追っていくと、屋上に出た。そこでやっと、「何でも聞くぜ?」と言いたげな顔で笑った。
「久しぶり、衣純」
「真っ……今までどこにいたのよっ」
 言いたかったのは、とにかくそれ。元気に違いないという確信はあったけど、ここまで驚かされることは想定してない。
「うんうん、元気そうで何より」
「説明してよっ」
「どの辺から?」
「……とりあえず、今ここにいるわけと、そこに至るまでのいきさつを簡単に」
「あれから、海外をあちこち一人でまわってた。バイト代がたまったらまた旅に出るっていう生活でさ。シンガポールで会った榊さんに拾ってもらって、今一年半ってとこ。新人教育係主任で、香原衣純の担当になった」
 精悍さを増した風貌と、変わらない、裏表のない話し方。ホッとするというか、脱力っていうか。
「お前に合うのはこういう会社なんじゃないかなーって思ってた。まさか二人ともここに入るなんてな。高校のやつらなら、さすがは双子!って言いそうだよな」
「確かに……」
 声も張りがあって、突き抜けるように明るくて、頼もしさが加わった感じ。お互い、わだかまりがあるわけじゃないから、働くのに支障はないし……びっくりはしたけど!
「私が来るの、いつから知ってたの?」
「半年前、内定の直後。この子を担当してもらえるかな、って榊さんに言われて」
「あの頃から……」
 しんみりして画像を消したのは、何だったんだろう。先生といい、真といい、どうしてこう私の人生の中心に再びどーんと現れるわけ? それもほぼ同時に。
「休憩時間、終わるな。戻るか」
「うん。あ、はい」
「ハハッ、いいって。俺たちの間で敬語なんておかしいだろ。俺も多分、気を付けてても、みんなの前で下の名前呼ぶことあるだろうし。まあ、よろしくな」
「うん。よろしくね」
 屋上の出口へ向かいながら、私たちは新しい関係の構築を始めた。

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