元カレに囲まれて

花宮守

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第2章 元カレ、また元カレ

第20話

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「香原は、お母さんと同じような方面の仕事、目指してるんだっけ?」
「うん。自分で会社を興すとかは考えてないけど、会社の中の、歯車が止まらないように油をさすっていうか、メンテナンス的なことに興味があって。そうなると会社や社会の仕組みをよく知らないといけないから、結果的にいろいろ勉強する羽目になってる」
「ハハッ、やっぱりお前らしいや。頑張れよ……っと、これはお前には禁句だっけ」
「え?」
「天城先生にも真にもそう言われたんだけど、つい口から出るよなあ。頑張れ、ってさ」
 針が二本、胸の奥に刺さった。痛みは一瞬だけ。先に薬が塗ってあるみたいに、甘いものが広がっていく。二人とも、ほんと、優しいんだから……。
「大丈夫だよ。私、頑張るから。翔太君も、気を付けて行ってね。千香のこと、よろしくね」
「ああ。任せとけ!」
 よかったね、千香。仲直りして、幸せになってね。

 笑顔で翔太君と別れたあと、大学の校舎の屋上へ行って、夕日を見た。先生は、あの校舎の窓辺にいるんだろうか。それとも資料庫? またたくさんコピーとりすぎて困ってる?
 日が沈んでいく。
 真、どこにいるの? 携帯もつながらない、って翔太君が言ってた。これから日が昇る、地球の裏側にでも行っちゃったのかな?
 元気でいてね。
 笑っていてね。
 私の、双子の片割れさん。

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