43 / 56
第2章 元カレ、また元カレ
第18話
しおりを挟む
「俺、休学することにしたよ」
真がそう言い出したのは、何も変わったことの起こらなかった、天気もニュースもこの上なく穏やかだった日の夜。全身とろとろにされて、行為のあとも布団の中でぼんやりしていた。耳に飛び込んできた言葉に、意識が急速に覚醒した。
「どこかに行くの?」
自分探し、とかかな?
彼は私をぎゅっと抱きしめた。
「いろんなとこ、見てくる。日本も、海の向こうも。うまく言えないし、お前にも無責任な話なんだけど、何かを見つけないとって思ってさ。それは、今行かないと見つからない気がするんだ」
「ん……その感じ、分かる」
説明できない、自分が正しいなんて言い切れない。ただ、今、そうせずにはいられない。それだけが道しるべ。私には、真を止めることはできなかった。
「あのね」
「ん?」
「止めはしないけど、寂しいな。好きだから」
正直な気持ちを、我慢せずに伝えて見送りたい。
「分かってる。ごめんな」
「……私たちは?」
「俺はお前をつかまえていたい。だけど、何年かかるか分からない。その間、宙ぶらりんにさせとくわけにはいかないから……。俺の未来探しが終わった時、また会えたら」
「未来探し、か。うん……」
真は将来が不安なんじゃなくて、やらなければならないことを探しに行く。迷うんじゃなくて、スタートを切ろうとしている。彼の辿り着く未来の中に、私が混ざれるのなら。もしかしたら、その時は。
「真。約束」
私は小指を立てた。彼も同じようにした。絡めて唱えるのは、再会の約束でも、いつかまた恋人に戻る約束でもない。
「諦めないで。絶対に」
あなたの未来を、つかまえて。
「ああ。約束する」
微笑み合って、指が離れていく。
二人目の彼との、夏が終わった。
真がそう言い出したのは、何も変わったことの起こらなかった、天気もニュースもこの上なく穏やかだった日の夜。全身とろとろにされて、行為のあとも布団の中でぼんやりしていた。耳に飛び込んできた言葉に、意識が急速に覚醒した。
「どこかに行くの?」
自分探し、とかかな?
彼は私をぎゅっと抱きしめた。
「いろんなとこ、見てくる。日本も、海の向こうも。うまく言えないし、お前にも無責任な話なんだけど、何かを見つけないとって思ってさ。それは、今行かないと見つからない気がするんだ」
「ん……その感じ、分かる」
説明できない、自分が正しいなんて言い切れない。ただ、今、そうせずにはいられない。それだけが道しるべ。私には、真を止めることはできなかった。
「あのね」
「ん?」
「止めはしないけど、寂しいな。好きだから」
正直な気持ちを、我慢せずに伝えて見送りたい。
「分かってる。ごめんな」
「……私たちは?」
「俺はお前をつかまえていたい。だけど、何年かかるか分からない。その間、宙ぶらりんにさせとくわけにはいかないから……。俺の未来探しが終わった時、また会えたら」
「未来探し、か。うん……」
真は将来が不安なんじゃなくて、やらなければならないことを探しに行く。迷うんじゃなくて、スタートを切ろうとしている。彼の辿り着く未来の中に、私が混ざれるのなら。もしかしたら、その時は。
「真。約束」
私は小指を立てた。彼も同じようにした。絡めて唱えるのは、再会の約束でも、いつかまた恋人に戻る約束でもない。
「諦めないで。絶対に」
あなたの未来を、つかまえて。
「ああ。約束する」
微笑み合って、指が離れていく。
二人目の彼との、夏が終わった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
甘々に
緋燭
恋愛
初めてなので優しく、時に意地悪されながらゆっくり愛されます。
ハードでアブノーマルだと思います、。
子宮貫通等、リアルでは有り得ない部分も含まれているので、閲覧される場合は自己責任でお願いします。
苦手な方はブラウザバックを。
初投稿です。
小説自体初めて書きましたので、見づらい部分があるかと思いますが、温かい目で見てくださると嬉しいです。
また書きたい話があれば書こうと思いますが、とりあえずはこの作品を一旦完結にしようと思います。
ご覧頂きありがとうございます。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる