元カレに囲まれて

花宮守

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第2章 元カレ、また元カレ

第2話

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 階段を、廊下を、時間を追い越すような気持ちで駆けた。走っちゃいけないのは分かってる。でも、でも――。
 彼は、私が引き返すのを上から見ていた。私が教室ではなく、どこへ行くつもりなのかも読んでいた。
 図書館。卒業式の日に利用する人なんかいなくて、資料庫の常連だった天城先生は、いつからか司書さん的な立場になって。鍵も管理してたから、私が行きそうな時は開けてくれてた。今も。
 待っててくれた。いつもの資料庫で。春の柔らかな光。少し肌寒い。私はこの人を、ここへ置いていってしまうんだ……そんな切ない想いに駆られた。なのに、浮かべた微笑は、私の成長を、卒業を、心から喜んでくれているのが伝わってくる。
「先生……ありがとう。ほんと、ありがとね」
 それ以上のことを、私は言うわけにはいかない。言ってはいけない。
「こちらこそ、お姫様」
 お姫様っていうのは、私を抱く時の口癖。
 抱き着きたい。大好きだった、って言いたい。言えない。終わったことだから。自分から、終わらせたんだから。
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