異世界転移は終わらない恋のはじまりでした―救世主レオのノロケ話―

花宮守

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第5章 家族

第3話

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「礼生! 礼生なの!?」
「お前、一体どこにいるんだ! 昨夜から帰らないから、私たちがどれだけ探したか」
 昨夜? 
「え、ひょっとして昨日……かな、地震あった?」
「ああ。計測されたデータに反して揺れが極度に小さかったと、ニュースで騒がれてる。とにかく早く帰ってきなさい」
「それは……」
 両親の横から、女の子がひょっこり顔を出した。妹の沙良だ。
「礼生くん、もしかして異世界にいる?」
「そうだけど、何で分かるんだよ」
「だって、かっこいい衣装着てマントなんかしてるし、お城っぽい背景もぼんやり見える。あと、超イケメンが隣にいない!? それって運命の出会いの旦那様だったりする!?」
「お前なあ。大体当たってるけど、盛り上がりすぎ」
「えー!! やっぱりそうなんだ! パパ、ママ、礼生くんは大丈夫だよ。多分、異世界の王様に見染められて才能が開花してってやつ! 漫画や小説で流行ってるの、読んだことない?」
「何が何だかさっぱり分からん」
 うん、父さんごめんね。僕にも詳しいことは分からないんだ。
「あの娘、力を感じるな。ごく弱いものだが」
『旦那様』が、玉の中を覗き込んだ。
「やばい、超絶イケメン……気絶しそう」
 沙良の感想には反応せず、彼は父さんを凝視している。
「……カルディオに間違いない。なるほど、血筋だったということか」
「話が見えないんですけど」
「耳を貸せ。お前の父親は、元々この世界の者だ。俺のこともアントスのこともよく知っている、頼もしい騎士だった。微力ながら中和の力を持っていたのでな、彼が子を生したら俺とアントスの養子にしてはどうかと進言する者もいたほどだ」
 父さんが、この国に!? 僕は叫びそうになり、口を押さえた。
「以前話したな。俺とアントスの力がぶつかり合い、世界が危機に陥った時のことを。あの時に行方知れずとなったのがカルディオだ。記憶を失っているようだが……生きていたのだな」
「父さんは若い頃に病院に運び込まれて、気が付いた時にはそれがなぜかも、それまでのことも、何も覚えていなかったんです」
 救急車を呼んだのは、たまたま通りかかった母さんだったという。見ず知らずの、意識不明の男。気にかかって何度もお見舞いに行き、交際が始まったと聞いている。今度は息子の姿が見えなくなって、どんなに心配したか。
「ちょっとー。仲がいいのは分かったから、説明してくれない? パパとママが目のやり場に困ってるじゃない」
 沙良の声が思考に割り込んできた。
「あ、ああ、ごめん。どこから説明すればいいか」
「俺が話そう。レオの父上に尋ねたい。右の肩から腹にかけて、斜めに走る傷跡があるかどうかを」
「確かにあるが……」
 うん、僕も何度も見たことがある傷だ。
「記憶を失ったということだが、何ひとつ覚えていなかったのだろうか」
「いや。この世界ではない風景のことと、いくつかの名を覚えていた。だから夢を見ていたのかと」
「その名は、今でも?」
「ああ、忘れたことがない。その風景とともによく夢に出てくるんだ。ラトゥリオ、アントス。あとは、ゾ……何だったか」
 僕はラトゥリオ様の服をぎゅっと握った。彼は僕の頭を撫で、優しく父さんの言葉を補った。
「ゾイ、ではないか?」
「ああ、そうだ。あなたは一体……」
「ゾイはあなたの姉の名だ。こちらの世界にいる」
「何だって?」
「ラトゥリオは俺の名で、アントスは……友人の名だ。あなたの傷は、俺を庇ったために残ってしまった。相手は、迷子の子を探して気が立っているドラゴンだった」
 父さんが、大きく目を見開いた。ふらついたのを、母さんが支えた。
「……ラトゥリオ様。陛下」
 あ……思い出した?
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