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第1章 大罪人と救世主
第7話*
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目が覚めると、日がだいぶ高くなっていた。
「けっこう寝ちゃった……?」
「一時間半というところか」
「うわ、すみません。足、痺れてませんか」
「構わん。いくら眺めていても飽きない寝顔だ」
「さらっと言いますね……」
僕は、彼の一言一言に、いちいち赤くなってしまうのに。性格的なものだろうか。いや、きっと素敵な恋人がいたんだろうな。っていうか、王妃様みたいな人はいないんだろうか。いたら……僕は、どうする? うーん、あまり考えたくない。
「難しい顔をしているな。いいものを見せよう。あの箱を開けてごらん」
テーブルの上に、平たい大きな箱がいくつも積まれていた。一番上のを開けてみると、僕のサイズのガウンが入っていた。ほかにも、部屋で寛ぐのによさそうな服が。その下の箱には、外へ行く時に着るための服が何着も。
「これ……」
「急いで用意させた。合わないところがあれば直させるから、そのつど言うといい」
「ありがとうございます」
ソファーに乗り上げて、彼にぎゅっと抱きついてお礼を言った。すごい。昨日の今日でこんなに。嬉しい。物だけじゃない、昨日からいろんなものをたくさん、この人やこの国からもらっている。ここにいる間に返しきれるだろうか。
「遠慮はいらない。俺を救ってくれたお返しだ」
「あなたを、僕が……?」
「ああ。この国を全部やっても足りないくらいだ」
「よく分かりませんけど……僕には王様は無理ですよ」
「そうかな」
時と場合によっては、冗談に聞こえたかもしれない。でも彼の声は、笑い話にするにはあまりにも切なかった。
再びベッドに運ばれたのは、昨日、彼と出会ったのと同じくらいの時刻だった。そこにも意味があるんだろうなと思った。枕元には香油が置かれている。
彼は僕をベッドに腰かけさせ、隣に座った。肩を抱かれ、ガウンの隙間から大きな手が入ってくる。耳にかかる吐息が熱い。首に腕をまわし、口づけに応えた。
「レオ……」
「ラトゥリオ、様……」
息継ぎの合間に互いの名を呼び、見つめ合いながらシーツに沈む。この瞬間が好きだ。彼の髪のカーテンに閉じ込められていく。優しく見下ろされ、ガウンを脱ぐ彼の仕草や肉体にドキッとするのも、恥ずかしくて落ち着かない感覚も、好きだ。彼と、だから。
「ンッ……ふ、ぅん」
「いい声だ」
横向きに寝て向かい合って、胸の中心を舌が転がす。声を出すのも恥ずかしいけど、彼が喜んでくれるから……。低い声が紡ぐ言葉にも、どうしようもなく反応してしまう。胸元の水音、僕自身を包み込む手のひら。感じやすいところを同時に攻められて、これ以上の幸せなんてないって気持ちになる。そう、幸せなんだ……ラトゥリオ様と、こうしていられることが。
「あ、ぁ……はぁっ……」
「今日からこれを使うが、違和感があれば言いなさい」
「ん……はい」
ぼんやりと、香油の瓶を眺めた。つーっと手のひらに零れたそれは、ほのかに蜂蜜の香りがした。僕のガウンは、かろうじて腰にかかっている状態。その中を探るように手が這って、双丘をなでなでされて……うっとりしていると、するっと指が奥へ忍び込んだ。行き止まり……でもそこは、お風呂の時の感覚を覚えてる。期待している。香油を塗り込まれ、力が抜けていく。
「アッ……」
自分のものとは思えない、高い声。長い時間をかけてほぐされ、今は彼が僕の後ろに寝て、指で中を慣らしている。きゅっと締め付けてしまうのが、恥ずかしくてたまらない。香油が足され、二本の指が、言い聞かせるように僕の体をひらいていく。
「大丈夫か? レオ」
「ん……なんか、すごく……」
幸せ、と続けるまでに少し迷った。そんなの言っていいのかなって。彼は僕の肩に、腕に、背中にキスを降らせてくれた。中の指は、僕を傷つけないように慎重に、確実に奥へ進みながらも、何かを探している。ふと、お腹の側を指先が掠めた時、ビリビリッと電気が走る感覚があった。意志とは関係なく、体がビクッと動く。シーツをギュッと掴んだ。二度、三度、同じところを指が行き来して、頭の芯まで痺れてきた。
「そこ、あ、アァッ……」
「いい子だ、レオ……」
甘くて低い声、怖いぐらいの快感、優しいけど執拗に快楽を刻み付ける指使い……遂には三本入り、前も愛撫され、意識が飛びそうになりながら昇り詰めた。
途中で水分補給したり、果物をつまんだりしながら、気付けば夜が来ていた。食事の時間をすっ飛ばしたけど、それよりも彼とくっついていたかった。
寝る前に、お風呂にゆっくり入った。
「よく頑張ったな。ありがとう」
「今日も、お役目果たせましたか?」
「ああ。十分すぎるほどにな」
「よかった……」
後ろから抱きしめられ、甘えるように体重を預けた。うん、僕はすっかり甘えている。男の人にも、女の子にも、こんな気持ちになったことない。きっとラトゥリオ様だけ。
僕のお腹のところで重なった手。どちらからともなく指が絡んでいく。
三日、って言ってた。明日で、この幸せな時間はおしまいなんだろうか。そしたら、僕はどうなるんだろう。いろんなところの修理、手伝わせてもらえるかな。どんな形でもいい、この人の役に立ちたい……。
「レオ……ここで寝てはいけないな」
「ん……」
「フ……かわいい救世主だ」
こめかみに唇の感触。それが、この夜の最後の記憶。
「けっこう寝ちゃった……?」
「一時間半というところか」
「うわ、すみません。足、痺れてませんか」
「構わん。いくら眺めていても飽きない寝顔だ」
「さらっと言いますね……」
僕は、彼の一言一言に、いちいち赤くなってしまうのに。性格的なものだろうか。いや、きっと素敵な恋人がいたんだろうな。っていうか、王妃様みたいな人はいないんだろうか。いたら……僕は、どうする? うーん、あまり考えたくない。
「難しい顔をしているな。いいものを見せよう。あの箱を開けてごらん」
テーブルの上に、平たい大きな箱がいくつも積まれていた。一番上のを開けてみると、僕のサイズのガウンが入っていた。ほかにも、部屋で寛ぐのによさそうな服が。その下の箱には、外へ行く時に着るための服が何着も。
「これ……」
「急いで用意させた。合わないところがあれば直させるから、そのつど言うといい」
「ありがとうございます」
ソファーに乗り上げて、彼にぎゅっと抱きついてお礼を言った。すごい。昨日の今日でこんなに。嬉しい。物だけじゃない、昨日からいろんなものをたくさん、この人やこの国からもらっている。ここにいる間に返しきれるだろうか。
「遠慮はいらない。俺を救ってくれたお返しだ」
「あなたを、僕が……?」
「ああ。この国を全部やっても足りないくらいだ」
「よく分かりませんけど……僕には王様は無理ですよ」
「そうかな」
時と場合によっては、冗談に聞こえたかもしれない。でも彼の声は、笑い話にするにはあまりにも切なかった。
再びベッドに運ばれたのは、昨日、彼と出会ったのと同じくらいの時刻だった。そこにも意味があるんだろうなと思った。枕元には香油が置かれている。
彼は僕をベッドに腰かけさせ、隣に座った。肩を抱かれ、ガウンの隙間から大きな手が入ってくる。耳にかかる吐息が熱い。首に腕をまわし、口づけに応えた。
「レオ……」
「ラトゥリオ、様……」
息継ぎの合間に互いの名を呼び、見つめ合いながらシーツに沈む。この瞬間が好きだ。彼の髪のカーテンに閉じ込められていく。優しく見下ろされ、ガウンを脱ぐ彼の仕草や肉体にドキッとするのも、恥ずかしくて落ち着かない感覚も、好きだ。彼と、だから。
「ンッ……ふ、ぅん」
「いい声だ」
横向きに寝て向かい合って、胸の中心を舌が転がす。声を出すのも恥ずかしいけど、彼が喜んでくれるから……。低い声が紡ぐ言葉にも、どうしようもなく反応してしまう。胸元の水音、僕自身を包み込む手のひら。感じやすいところを同時に攻められて、これ以上の幸せなんてないって気持ちになる。そう、幸せなんだ……ラトゥリオ様と、こうしていられることが。
「あ、ぁ……はぁっ……」
「今日からこれを使うが、違和感があれば言いなさい」
「ん……はい」
ぼんやりと、香油の瓶を眺めた。つーっと手のひらに零れたそれは、ほのかに蜂蜜の香りがした。僕のガウンは、かろうじて腰にかかっている状態。その中を探るように手が這って、双丘をなでなでされて……うっとりしていると、するっと指が奥へ忍び込んだ。行き止まり……でもそこは、お風呂の時の感覚を覚えてる。期待している。香油を塗り込まれ、力が抜けていく。
「アッ……」
自分のものとは思えない、高い声。長い時間をかけてほぐされ、今は彼が僕の後ろに寝て、指で中を慣らしている。きゅっと締め付けてしまうのが、恥ずかしくてたまらない。香油が足され、二本の指が、言い聞かせるように僕の体をひらいていく。
「大丈夫か? レオ」
「ん……なんか、すごく……」
幸せ、と続けるまでに少し迷った。そんなの言っていいのかなって。彼は僕の肩に、腕に、背中にキスを降らせてくれた。中の指は、僕を傷つけないように慎重に、確実に奥へ進みながらも、何かを探している。ふと、お腹の側を指先が掠めた時、ビリビリッと電気が走る感覚があった。意志とは関係なく、体がビクッと動く。シーツをギュッと掴んだ。二度、三度、同じところを指が行き来して、頭の芯まで痺れてきた。
「そこ、あ、アァッ……」
「いい子だ、レオ……」
甘くて低い声、怖いぐらいの快感、優しいけど執拗に快楽を刻み付ける指使い……遂には三本入り、前も愛撫され、意識が飛びそうになりながら昇り詰めた。
途中で水分補給したり、果物をつまんだりしながら、気付けば夜が来ていた。食事の時間をすっ飛ばしたけど、それよりも彼とくっついていたかった。
寝る前に、お風呂にゆっくり入った。
「よく頑張ったな。ありがとう」
「今日も、お役目果たせましたか?」
「ああ。十分すぎるほどにな」
「よかった……」
後ろから抱きしめられ、甘えるように体重を預けた。うん、僕はすっかり甘えている。男の人にも、女の子にも、こんな気持ちになったことない。きっとラトゥリオ様だけ。
僕のお腹のところで重なった手。どちらからともなく指が絡んでいく。
三日、って言ってた。明日で、この幸せな時間はおしまいなんだろうか。そしたら、僕はどうなるんだろう。いろんなところの修理、手伝わせてもらえるかな。どんな形でもいい、この人の役に立ちたい……。
「レオ……ここで寝てはいけないな」
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