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リクエスト番外編
リクエスト4: リハビリを頑張りすぎて強制的に止められる話
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リハビリを頑張りすぎて強制的に止められる話
※後日談2後の時間軸です。
【side: リシェ】
「リシェ」
「……」
「リシェ、返事」
「っ、は、はぃ……」
「…………はぁぁ」
僕を見るアーヴィング様が、大きなため息を吐いた。
ことの発端は、僕の自主練。
担当の医師と一緒にリハビリをしているけど、段々元気になってきてその日のメニューだけじゃ体力が余ってきて。
もっとメニューを増やしたいと相談したけど「焦りすぎは禁物です」と言われ、体調を見ながら方針を考えましょうと言われ……
でも1日も早く元通りに生活できるようになりたいから、隠れてこっそり自主練をしていた。
そしたら、マッサージの時にーー
『……リシェ、最近きついことをしているのか?』
『え?』
『足の裏の皮がめくれている。それにマメも……
何か医師から強要されているなら教えてくれ。君は言わずに我慢をしてしまう方だから、俺が言っておこう。
後、君の日々のリハビリメニューを知りたい。一応は日々身体を動かしている剣士の身だ、身の丈に合う合わない等には多少理解があるだろう』
『ぁ……』
『前まではこんなこと無かったのに……風呂でも滲みただろう。大丈夫か?』
『いや、えぇっ、と…』
『今からでも何か消毒できるものを貰ってくるか……少し待っていてくれ、医務室に行って来rーー』
『ご、ごめんなさいっ!!』
……と、心配させてしまったのが原因。
(正直、足の裏の皮めくれてるの知らなかった……)
リハビリの時は靴を履いてるから医師やロカ様には気付かれなかった。いや自分でも気付いてなかったけど。
それくらい夢中で歩く練習をしてたのかもしれない。
そろりと顔を上げると、呆れているような顔のアーヴィング様。
居た堪れなくて、またシュンと下を向く。
そりゃ僕だって悪いよ? でも、でもさ……
「何か言いたそうだな」
「………」
「どうしたリシェ? 納得していないようだが?」
「……っ、ぁ、の」
グッと腹に力を込め、再度顔を上げる。
「僕、町の出身で、普通に家族の手伝いで力仕事とかすることあって」
足の裏の皮がむけたりとか、マメができたりとか、そんなの日常にある光景だった。
「アーヴィング様と比べると、ぜ…全然だけど僕だって男で、だからその…これくらい心配されなくてもーー」
「リシェ」
「っ」
両肩を掴まれ改めて見ると、優しく笑っている番。
「俺は、君を女として扱ってるのではない。リシェはちゃんと男だ。何と比べるまでもないだろう?
そうじゃない。俺は、君を生涯のパートナーとして扱っているんだ。
そこは食い違えないでくれ」
「ーーっ、ぁ」
「大切な番の足がこんなになっていたら、悲しむのは当たり前だ。まぁ気持ちは分かる。俺も君の立場だったら自主的に身体を動かしているかもしれない。
だが、これはやり過ぎだ」
苦笑しているアーヴィング様の顔。
「心配してしまうんだ、どうしても。
俺の愛は重い。その話はしただろう?
この愛しい足を傷つけないでくれ。医師と相談して、ちゃんと自分に合ったリハビリをして治していってくれ。
じゃないと……」
「…じゃ、ないと……?」
「一生歩けなくてもいいと、閉じ込めてしまうかもしれない」
「!?」
「はははっ、冗談だ。
だが今回のは少々驚いた。医師や俺に内緒でしていたとは……
明日、朝一で医師のところに行こう。そして指示を仰いで、身の丈に合ったリハビリをしていこう」
「アーヴィング、様……ぁの、ごめんなさい。僕……」
暖かな気遣いと、心配からの注意。
胸がぎゅうっとなって、申し訳なさでいっぱいになる。
(そうか、この身体はもう僕だけのものじゃないんだ)
番としての自覚が足りなかった。
ちゃんと反省しよう。
そして、また明日からのリハビリを頑張ってーー
「だが、その足が治るまでリハビリは中止だな」
「…………え?」
今、なんて?
ギギギ…と首を動かす僕に、ニヤリと笑う顔。
「当たり前だろう。
内緒でしていた罰も兼ね、しばらくは大人くしていろ」
「そ、そんなっ」
「継続は力なりとは言うがな、今の君には休息が必要だ。
なぁに心配するな、王妃様にも俺から伝えておこう」
「ぇ」
「きっと王妃様も慌ててこの部屋を訪ねてきてくださるだろうな。ちゃんと対応するんだぞ?」
「そ、それって…僕ロカ様にも怒られるってことじゃ」
「はははっ、観念しろリシェ」
「……アーヴィングさまぁ」
こうして、いつもより何倍も丁寧にマッサージしてもらって、足の裏の消毒もしてもらって。
次の日、医師の元を訪れたあと全速力で僕を訪ねてきたロカ様に延々と怒られて。
アーヴィング様を敵に回すのは絶対に止めようと、降りることを禁じられたベッドの中で心に決めた。
~fin~
※後日談2後の時間軸です。
【side: リシェ】
「リシェ」
「……」
「リシェ、返事」
「っ、は、はぃ……」
「…………はぁぁ」
僕を見るアーヴィング様が、大きなため息を吐いた。
ことの発端は、僕の自主練。
担当の医師と一緒にリハビリをしているけど、段々元気になってきてその日のメニューだけじゃ体力が余ってきて。
もっとメニューを増やしたいと相談したけど「焦りすぎは禁物です」と言われ、体調を見ながら方針を考えましょうと言われ……
でも1日も早く元通りに生活できるようになりたいから、隠れてこっそり自主練をしていた。
そしたら、マッサージの時にーー
『……リシェ、最近きついことをしているのか?』
『え?』
『足の裏の皮がめくれている。それにマメも……
何か医師から強要されているなら教えてくれ。君は言わずに我慢をしてしまう方だから、俺が言っておこう。
後、君の日々のリハビリメニューを知りたい。一応は日々身体を動かしている剣士の身だ、身の丈に合う合わない等には多少理解があるだろう』
『ぁ……』
『前まではこんなこと無かったのに……風呂でも滲みただろう。大丈夫か?』
『いや、えぇっ、と…』
『今からでも何か消毒できるものを貰ってくるか……少し待っていてくれ、医務室に行って来rーー』
『ご、ごめんなさいっ!!』
……と、心配させてしまったのが原因。
(正直、足の裏の皮めくれてるの知らなかった……)
リハビリの時は靴を履いてるから医師やロカ様には気付かれなかった。いや自分でも気付いてなかったけど。
それくらい夢中で歩く練習をしてたのかもしれない。
そろりと顔を上げると、呆れているような顔のアーヴィング様。
居た堪れなくて、またシュンと下を向く。
そりゃ僕だって悪いよ? でも、でもさ……
「何か言いたそうだな」
「………」
「どうしたリシェ? 納得していないようだが?」
「……っ、ぁ、の」
グッと腹に力を込め、再度顔を上げる。
「僕、町の出身で、普通に家族の手伝いで力仕事とかすることあって」
足の裏の皮がむけたりとか、マメができたりとか、そんなの日常にある光景だった。
「アーヴィング様と比べると、ぜ…全然だけど僕だって男で、だからその…これくらい心配されなくてもーー」
「リシェ」
「っ」
両肩を掴まれ改めて見ると、優しく笑っている番。
「俺は、君を女として扱ってるのではない。リシェはちゃんと男だ。何と比べるまでもないだろう?
そうじゃない。俺は、君を生涯のパートナーとして扱っているんだ。
そこは食い違えないでくれ」
「ーーっ、ぁ」
「大切な番の足がこんなになっていたら、悲しむのは当たり前だ。まぁ気持ちは分かる。俺も君の立場だったら自主的に身体を動かしているかもしれない。
だが、これはやり過ぎだ」
苦笑しているアーヴィング様の顔。
「心配してしまうんだ、どうしても。
俺の愛は重い。その話はしただろう?
この愛しい足を傷つけないでくれ。医師と相談して、ちゃんと自分に合ったリハビリをして治していってくれ。
じゃないと……」
「…じゃ、ないと……?」
「一生歩けなくてもいいと、閉じ込めてしまうかもしれない」
「!?」
「はははっ、冗談だ。
だが今回のは少々驚いた。医師や俺に内緒でしていたとは……
明日、朝一で医師のところに行こう。そして指示を仰いで、身の丈に合ったリハビリをしていこう」
「アーヴィング、様……ぁの、ごめんなさい。僕……」
暖かな気遣いと、心配からの注意。
胸がぎゅうっとなって、申し訳なさでいっぱいになる。
(そうか、この身体はもう僕だけのものじゃないんだ)
番としての自覚が足りなかった。
ちゃんと反省しよう。
そして、また明日からのリハビリを頑張ってーー
「だが、その足が治るまでリハビリは中止だな」
「…………え?」
今、なんて?
ギギギ…と首を動かす僕に、ニヤリと笑う顔。
「当たり前だろう。
内緒でしていた罰も兼ね、しばらくは大人くしていろ」
「そ、そんなっ」
「継続は力なりとは言うがな、今の君には休息が必要だ。
なぁに心配するな、王妃様にも俺から伝えておこう」
「ぇ」
「きっと王妃様も慌ててこの部屋を訪ねてきてくださるだろうな。ちゃんと対応するんだぞ?」
「そ、それって…僕ロカ様にも怒られるってことじゃ」
「はははっ、観念しろリシェ」
「……アーヴィングさまぁ」
こうして、いつもより何倍も丁寧にマッサージしてもらって、足の裏の消毒もしてもらって。
次の日、医師の元を訪れたあと全速力で僕を訪ねてきたロカ様に延々と怒られて。
アーヴィング様を敵に回すのは絶対に止めようと、降りることを禁じられたベッドの中で心に決めた。
~fin~
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