21 / 49
後日談
後日談1 : 王妃とリシェの会話 1
しおりを挟む【side: ロカ】
「こんにちは」
「ぇ、王妃、様」
「起きなくていいから。そのまま寝てて」
外はいい天気。
風も気持ちよくてぽかぽか。
この日、あの子と話をしたいなと思って医務室を訪ねた。
医師たちは気を利かせて部屋を出て行ってくれて。
慌てて起き上がろうとするのを制して、側にある椅子に座った。
「少しいいかな。
僕と2人きりが不安なら扉の外にいるアーヴィングを呼ぶけど、どうする?」
「大丈夫、です。お気遣いありがとうございます」
「んーん」
「大丈夫」と言いながらオロオロ不安げに見上げてくる視線に、クスリと笑ってしまう。
「身体はどう? まだ痛む?」
「それ程までは。
正直、最近目が覚めたばかりで身体より頭が追いついてない感覚で」
「あぁそうだよね。あれからだいぶ経ってるもんね」
「はい。本当に、驚きました……」
ほぉぉ…と安堵の息を吐きながら目を閉じるその子。
本当に、生きていてよかった。
「ぁの、王妃様。
医師から聞きました。王妃様の血を分けていただいたと……すいませんでした。
僕は、どう恩返しをすればいいか」
「恩返しとかいらないから。
〝すいません〟って謝るのもいらない」
知らなかったとはいえ、自分を盾にしてこの国や僕を守ってくれたこの子。
もう十分貰ってしまっている。
寧ろ、僕がその恩を返さなくちゃいけないほうで。
(血やアーヴィングへの助言で、少しは返せてるかな?)
まだまだ釣り合ってないかな? わからないけれど。
でも、
「どっちかというと、〝ありがとう〟がいいなぁ」
僕は自ら血を差し出した。
負い目は、何も感じなくていい。
「ーーっ、ぁ…りがと……ございます、」
「うんっ!」
びっくりした表情の後、泣きそうにお礼を述べたその声に元気よく頷いた。
48
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
いっそあなたに憎まれたい
石河 翠
恋愛
主人公が愛した男には、すでに身分違いの平民の恋人がいた。
貴族の娘であり、正妻であるはずの彼女は、誰も来ない離れの窓から幸せそうな彼らを覗き見ることしかできない。
愛されることもなく、夫婦の営みすらない白い結婚。
三年が過ぎ、義両親からは石女(うまずめ)の烙印を押され、とうとう離縁されることになる。
そして彼女は結婚生活最後の日に、ひとりの神父と過ごすことを選ぶ。
誰にも言えなかった胸の内を、ひっそりと「彼」に明かすために。
これは婚約破棄もできず、悪役令嬢にもドアマットヒロインにもなれなかった、ひとりの愚かな女のお話。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。
扉絵は、汐の音様に描いていただきました。ありがとうございます。
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
【完結】もう一度恋に落ちる運命
grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。
そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…?
【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】
※攻め視点で1話完結の短い話です。
※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる