あなたの世界で、僕は。

花町 シュガー

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後日談

後日談1 : 王妃とリシェの会話 1

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【side: ロカ】






「こんにちは」

「ぇ、王妃、様」

「起きなくていいから。そのまま寝てて」


外はいい天気。
風も気持ちよくてぽかぽか。

この日、あの子と話をしたいなと思って医務室を訪ねた。
医師たちは気を利かせて部屋を出て行ってくれて。
慌てて起き上がろうとするのを制して、側にある椅子に座った。

「少しいいかな。
僕と2人きりが不安なら扉の外にいるアーヴィングを呼ぶけど、どうする?」

「大丈夫、です。お気遣いありがとうございます」

「んーん」

「大丈夫」と言いながらオロオロ不安げに見上げてくる視線に、クスリと笑ってしまう。

「身体はどう? まだ痛む?」

「それ程までは。
正直、最近目が覚めたばかりで身体より頭が追いついてない感覚で」

「あぁそうだよね。あれからだいぶ経ってるもんね」

「はい。本当に、驚きました……」

ほぉぉ…と安堵の息を吐きながら目を閉じるその子。
本当に、生きていてよかった。


「ぁの、王妃様。
医師から聞きました。王妃様の血を分けていただいたと……すいませんでした。
僕は、どう恩返しをすればいいか」

「恩返しとかいらないから。
〝すいません〟って謝るのもいらない」

知らなかったとはいえ、自分を盾にしてこの国や僕を守ってくれたこの子。
もう十分貰ってしまっている。
寧ろ、僕がその恩を返さなくちゃいけないほうで。

(血やアーヴィングへの助言で、少しは返せてるかな?)

まだまだ釣り合ってないかな? わからないけれど。
でも、


「どっちかというと、〝ありがとう〟がいいなぁ」


僕は自ら血を差し出した。
負い目は、何も感じなくていい。


「ーーっ、ぁ…りがと……ございます、」


「うんっ!」


びっくりした表情の後、泣きそうにお礼を述べたその声に元気よく頷いた。







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