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しおりを挟むもう何も発せられない俺に、彼はニコリと笑い口を開いた。
「今から30年後、偶然タイムマシンが開発される」
それは、本当に偶然。
失敗作ばかりを入れてるゴミ溜めからいきなり化学反応が起こり、気付いたら出来ていた。
「それをやってのけたのは、私たちのラボのチーム」
「ぇ……生田…が……?」
「高校の頃から私は理数系は得意だったよね?」
「っ、ぁ」
『休んだ分のノート見る?
あ、でも生田くん理数系得意だから無くても余裕か』
『余裕じゃない!余裕じゃないから見せてください神様~』
『あははっ』
「ひたすら勉強して、理数系で大学に進んだんだ」
そしたら、『一緒にタイムマシンを作らないか?』と声をかけられた。『君の頭脳が必要だ』と。
その手を取り、そのラボへ就職して研究に明け暮れて。
来る日も来る日もずっと休みも取らず研究を重ね……そして、遂にゴミ溜めからーー
「だが、このことをまだ世間に公表していない」
「ぇ……? なん、で」
「正確な実証ができてないから」
実証するには、誰かが実験体となり実際にタイムマシンを使わなければならない。
ーー真っ先に手をあげたのは、自分だった。
「期間は2週間。未来か過去どちらかに行き、帰ってくること。
勿論私は過去を選んだ。そしてこの時間軸にやってきたというわけさ」
「ちょっと、ちょっと待って…待て……」
30年後の生田?
研究? タイムマシン? 実験??
話がぶっ飛びすぎてよく理解できない。
大体、あいつあんな小柄なのにこんな背高くなんのか?
ふわふわした雰囲気はまぁなんとなく想像つくかもしんないけど、こんな感じに成長すんの? 待って??
「……っ、ふふふ、まぁそんな顔になるよねぇ。気持ちはわかるよ。
ーーねぇ真崎くん。私はどうして君に告白した後、歩道橋から落ちたと思う?」
「ぇ……」
あの日、生田が怪我をした理由。
そう言えば何があったか聞いていない。
「君に憧れてね、私も困ってる人を助けたんだ」
おばあさんの重そうな荷物を持ってあげた。
そしたら、運悪く階段を踏み外して真っ逆さま。
「クスクスッ、下手な事はするもんじゃないね。
けど君に告白して、僕も君に相応しい人になろうと…隣に並んでもおかしくない人になろう思った」
困ってる人や助けが必要な人に、真っ直ぐ手を差し伸べられる人。
初めは憧れだった。でもそれがだんだん愛情に変わって、気がついたら好きになってた。
無意識に目で追ってしまって、彼の好みを把握するようになって。
「告白、物凄く動揺してたね。本当にごめん。
でも、申し訳無いけど悩んでるその顔が見れて、私は幸せだった。
悩ませてるのは自分なのにね、真剣に考えてくれているのが分かって嬉しかったよ」
つい茶化してしまって、申し訳なさからショッピングモールへ連れていった。
それから、自分は考えをまとめるのに邪魔だろうと姿を消して……
(ーー待て)
さっきこいつは、「期限は2週間」と言った。
これは世間に公表するための実験で、自分は過去に来たのだと。
俺の前に姿を見せなくなったのは1週間前くらいから。
ショッピングモールに行ったのはその1日前。
その5日前くらいから、こいつは俺の前に現れ始めてーー
「君と少しでも長く居たいと思ってね、この日が最後になるよう逆算して来たんだよ」
「……っ、」
ーーということは、やっぱり俺は…ここで死ぬのか。
また思考を読んだかのように話されて、今度こそ自分の寿命を理解した。
そうか、俺ここで死ぬのか。
まだ結構やり残したことあるんだけどな。
ちょくちょく進めてるゲームも、続きを待っている漫画も、行きたい場所だっていっぱいあんのに。
(生田にも、まだ返事して…ねぇのに……)
想いを告げた人に死なれたら、その人はどんな気持ちになるんだろう。
引きずる? それとも忘れてしまう?
あいつはーー
「おい、外に警察が来たぞ!包囲されてる!!」
「大丈夫だ落ち着け。こっちにはこんだけ人質がいる、下手に入ってはこれねぇだろう。
試しにその辺に1発撃っとけよ、奴等びびんだろ?」
ハハッと笑いながら構えた銃から弾が放たれ、映画のような音で壁に穴が開いた。
「っ…ぁ……」
その光景で、思考が一気に現実に戻る。
そうだ、俺はここで死ぬんだ。
どうやって? 一体、どの場面で??
「大丈夫」
ふわりと、震える俺の背を温かい温度が撫でた。
「私が〝わざわざ〟この時間軸を選んで来たんだ。安心して」
(…わざわざ……?)
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