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緑薔薇の場合
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しおりを挟む知ったのは、たまたま。
図書室で寝ていた先輩の襟元からチラッとチェーンが見えていて、気になって申し訳程度に引っ張ったら指輪がポロリと出てきた。
慌てて直したからバレてはいないはず。
(確か綺麗な緑色だったな……ということは緑の薔薇か)
緑薔薇の運命の人は、先輩と同じ学年の女の人。
なんとかって会社のご令嬢で、結構派手で有名なんだよなぁ。
すれ違ったことあるけど、化粧すごくて香水もキツかった。
(そんな人が先輩となんて……)
はっきり言って真逆すぎる。
大体、先輩はいかにも緑色って感じの癒しオーラだけど運命の人のほうは全然違うようなーー
「村園くん? どうしたの?」
「っ、あぁなんでもないですよ!」
「んーまたいつもの脳内独り言祭り? いい加減口に出してくれていいのに」
「いやいや先輩の本の邪魔になりますって。いいんです僕一人でわーわー考えるのが好きなんで」
「えぇ、聞きたいなぁ」
「やですー」
「えー?」と言う先輩が可愛らしくて笑ってしまう。
僕より背高いし大人っぽいのに、なんでそんななのか。
放課後、毎日のように図書室に寄って帰る。
先輩も放課後によく来てるらしくて、同じ空間で本読んだり話をしたりしてるうちに自然と仲良くなり、今というわけ。
「そういえば、絞り模様の薔薇が結ばれましたね!」
「そうだね。久しぶりに登校したらびっくりしたよ」
「ですよね!? 僕もびっくりしたんです!いやでもあの人たち長かったからなぁ…こう、胸にじぃんとくるというか……今日もここ来る前たまたま2人で並んで歩いてるの見たんですけど、なんか感動しちゃって!
うわぁやっとかぁーってすごい実感しちゃいました!」
「ふふふ、村園くんは本当に薔薇系の話好きだよね」
「勿論!このために学園来たって言いましたよね!?
……他の薔薇はどうなんだろうなぁ」
「今のところ2つか。ペースは例年より早いかなって感じがするけど、どうだろう?
このまま他の色も無事ゴールするといいね」
(他人事、だなぁ)
いつもそう。
それとなく話を振ってみても、先輩は切ない顔ひとつせずさらりと会話を繋げる。
薔薇はみんな運命の人を待ってると思ってたのに。
結ばれたくないのかな?
わからないけど。
……でも、そんな先輩に少しだけ安心してる自分がいるのも謎だ。
(なんでだろう?この関係が崩れるとか考えてるのか僕?)
むむむ、よく分からん感情だ。
まぁいいや。
「あ、けど」
「?」
「そういえば」という様に先輩がぽんっと手を叩いた。
「夏休み、緑薔薇の運命の子に会ったよ」
「……はぁ!?」
きっかけは、街の図書館。
「俺3年だからもう受験でしょ?
それで勉強してたんだよね。そしたら隣に座ってきて」
『ぁ、あのさ!三船って確か頭いいよね!?』
静かな図書館で、大声。
利用者の迷惑そうな視線を浴びながら、その子は顔を真っ赤にしていきなり頭を下げてきた。
「『勉強教えてほしい』って言ってきて。それで、夏休み中図書館で教えてたんだよね」
「ちょちょちょ、待っ、え!?」
こっちも夏休みに急接近してた!!
何事!?!?
(まさか先輩のこと、自分の薔薇だって気づいたの!?)
そんな馬鹿な、だったら既に指輪を返してるはず。
それをしてないということは、きっとまだわかってない?
「そ、それはたまたま会った的な……?」
「うんうん。彼女も勉強するために来てたらしくて、でも分からないとこだらけだったっぽい。
それでちょうど俺を見かけて声かけたって」
「そう、だったんですね」
「うん。夏休み明けにすぐテストあったじゃん? それ上手くいくといいなぁって思ってるんだけど、どうだったかなぁ。
なんか行きたい大学…というか夢があるらしくて、それに凄く必死になっててーー」
「三船っ!!」
バタンッ!といきなり図書室のドアが開く。
慌てて見ると、噂の彼女。
はぁはぁ肩で息するその手には、いま徐々に返却されているテスト用紙らしきものが握られていて。
(あぁ、これは)
「…先輩、僕そろそろ帰りますね」
「え、もう? いつもはもっといるのに」
「もともと今日用事あって早く帰る予定だったんですよ。
じゃぁ、また!」
「あ、そうなんだ。またね」
嬉しそうな顔をして先輩に近づく彼女とすれ違いながら、足早に図書室を去った。
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・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
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