純情天邪鬼と、恋

花町 シュガー

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社会人編

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「外回り終わりました」

「おかえりなさい!」「お疲れさまですー」

今日も慌しく人が動く一般企業のオフィス。
ひと息吐いて、ネクタイを緩めながら自席に座りPCを立ち上げた。

「鈴木さん!契約どうでした?」

「大丈夫、更新完了。ついでに来年新店舗立ち上げるからそこもシステム導入お願いって」

「うっわ流石。それ今月始まったばっかなのにもう数字達成しません? どんな技使ってんですかまじで」

「クスクスッ、運も実力のうちかな。俺ここ長いし」

嘘。
本当は前々から情報集めてて今日山かけたらドンピシャに当たっただけ。

(まぁ、こういう下準備とかタイミングは経験だけどね)

「コツとか教えてくださいよ~」

「新坂(ニイサカ)もそのうち取れるようになるって」

「そのうちじゃ駄目なんですよ!今すぐにでも実力ください~」

「そりゃ無理だ」

「ちぇー!」


名字が〝杠葉〟からごくごく一般的な〝鈴木〟へ変わり、大学卒業を機に上京してもう4年。

まさかあの自分が営業職に就くとは思わなかったが、やってみると案外しっくりきて今も続けてる。
仕事もだいぶ板について、成績も順調で。
そのおかげか有難いことに役職へ移動の辞令がくるが、これまで全て断ってきた。
マネジメントは向いてない。後輩ならいいけど部下は欲しくないし、このままプレイヤーでいたほうが気が楽だし。

自分自身のことと、自分に課せられた数字。
これだけを追っていきたい。
他人の面倒を見る余裕なんざ持ち合わせてない。

ーーだって、ただでさえ自分は他とは違うのだから。

(ま、チームワークとか言いながら結局はこの仕事個人戦だからな。それが居心地良くて此処にいるんだけど)

このまま目立たず、成績も落とすこと無く仕事を続け、上手に世間を渡りながら生きてさえいければいい。

「あ、そうだ鈴木さん!」

「なに?」

「今日仕事終わり時間あります? ちょっと相談したいことが……」

「あぁ……上司より俺がいいの?」

「はい」

「分かった、悪いけど飲み屋じゃなくてここでいい? さっき取れたやつ今日中に処理したいから、残業しながらになるけど」

「全然いいっす!ありがとうございます!!」

新坂は今年の新卒で、俺がメンターを任され最近ひとり立ちさせたひよっこだ。

(早速悩みごとか? 仕事教えたはいいけど、懐かれるのは困る……)

けど、先輩としてこればっかりはしょうがないかと思いながら、目の前の仕事に取りかかった。







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