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しおりを挟むそれから、月日は流れてーー
今日は僕の退院の日。
そして、その日は丁度、年に一度の綺麗な夕焼けが見える日でもあって。
全人類、唯一盗めない色がある。
それは ーー〝空の色〟。
空の色だけは、存在しているようで存在していない遠い場所にあるから、盗めない。
『夕焼けの色はね、エリアージュの色と同じだったのよ』と、家の近くに住むお婆さんが言っていた。
だから、この村の人はみんな夕焼けの日を大切にしている。
「お前、明日から別の場所に引っ越すんだってな」
窓側のベッドに座って一緒に外を眺めていると、ポツリとアルが漏らした。
アルは僕がカラーズだと思ってるから退院だなんて言えないし、他の病院に移るという話にしてある。
「うん、そうなんだよね。なんか僕のこと調べたいって言ってる人がいて、その病院に行く事になったんだ」
「そっか……」
ギュッと、いきなりアルに右手を掴まれる。
「っ、ぇ」
「エアー」
そのまま、手を引かれてきつく抱きしめられて。
「絶対…っ、また会おうな……!」
(………あぁ)
夕焼け色を見ると、何故だか心がキュッとなる。
アルには、色がわからなくてもそれを感じる事が出来るだろうか?
(暖かいや)
「ふふふ、勿論だよアルっ」
優しい、優しいアルド。
自分だって苦しいのに、いつも僕の兄貴分のように強く笑って僕に元気をくれた。
「絶対だからな」
「うん」
「何か嫌なことされたら、すぐ戻ってこいよ」
「うん」
「無理そうだったら、俺が迎えに行くから」
「クスッ、うん。ありがとうアル」
ーーあぁ、アルド 大好きだよ。
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