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しおりを挟む初めて先輩を好きになったのはいつだったっけ?
あぁそう、みんなが〝王子様〟と噂しだしてそれから気になったんだ。
知れば知るほど……その内側の優しさに惹かれてしまって。
でも、極力目立ちたくは無いし告白とかする予定はなかったから、そっとそっと見つめていて。
それからーー
「こんにちはっ」
「あ、やっほー唐草君」
「今日もがんばろー」
あれから他のクラスの人たちとも少しづつ目線を合わせ話す努力をして、徐々に仲良くなることができた。
「早く終わらないかな」と役をこなすだけの日々だったのに、今は放課後の委員会がすごく待ち遠しくて。
(メガネは取れてないけどね)
アンバランスと言われてしまったが、まだ不安が勝って度の入ってないこれをかけ続けている
どうしても過去のトラウマが…いじめられていた日々が怖くて……
(ーーけど)
目に見える視界は狭くとも、僕の世界は明先輩と話してから大きく広がったと思う。
少しは、変われてるかな?
明先輩と並んでも、おかしくない…かな……?
(って、並ぶってなに……)
「あーこのプリント今日提出のだった」
「それ俺も持ってる、出さなきゃな」
「ぁ、あのっ、良かったら集めて持って行こうか……?」
「まじ? サンキュー頼むわ。多分先輩たちも持ってたはず」
「わかった、声かけてみる」
できることから、少しづつ 少しづつ。
周りの委員に声をかけ、1枚1枚プリントを集めていった。
コンコンッ
『どうぞ』
「し、失礼します……っ」
ガチャリと生徒会室のドアを開けると、いたのは明先輩だけ。
「唐草君? どうしたの?」
「ぁ、の…これ……全部集めたので」
「あぁそれね!他の役員みんな出払ってたから助かったよ。
俺が集めなきゃと思ってたんだよね」
(良かった…余計なお世話とかじゃなかった)
内心ほっと息を吐きながら、プリントの束を手渡す。
「これさ、唐草君が1人で集めたの?」
「そうですけど…」
「うん、そっか……凄いね」
「ぇ?」
「これ集めるためみんなに声かけて回ったんでしょ? 今までの君だったら絶対できないことだったと思う。緊張とか話さなきゃとか、いろいろ考えたよね。
そんな中全員分揃えるのは本当に凄い。よく頑張ったね」
「ーーっ、ぃや、そんな」
この人は、どうしてそんな部分まで察して声をかけてくれるんだろう?
見えてないはずなのに、どうして分かるのかな?
(こういうところが好きなんだよ)
心臓がキュウキュウしてどうしようもない。
ポツリ
「俺も、君みたいに前へ進みたいな」
「へ……?」
顔を上げると、苦しそうに笑う先輩がいた。
「俺もさ、前に進まなきゃなって」
「? 明先輩も、何か困ってることがーー」
(野菜のこと…? ぁ、もしかして)
「……探してる人、ですか?」
「うんそう、そっち。やっぱり唐草君も知ってたんだね。ってか知らない人いないくらい広まっちゃってるのか? 逆に恥ずかしすぎる……」
はぁぁ…とため息を吐きながら背もたれにもたれかかる。
「もうね、ずっと……俺が中学生の頃から探してるんだ」
(えっ、そんな前から……)
「生徒…ですか? それとも先生?」
「多分生徒。確証は無いけどね」
「そうですか……
ぁ、あの…何か手伝えることがあればーー」
「だーめ」
ニコリと先輩が笑った。
「手伝うも何も、先生に聞けばきっと一発なんだ。でもそれは絶対にしない。生徒会メンバーや生徒の手も借りない」
「っ、どうして……」
「俺が、俺だけの力で見つけたいから」
「ーーっ、」
カタリと先輩が立ち上がる。
「記憶は曖昧だけど、今でも覚えてるんだ、ちゃんと。
特徴も…なんとなく。けど、俺はそれを言うことは絶対無いし、ちゃんとその人を守りながら答えにたどり着きたい。
〝あの日〟のことを、無かったことにしたくないんだ……」
〝あの日〟
(待って、僕の〝あの日〟はいつだった?)
確か、僕が中学2年生…これから3年に上がる一歩手前の頃。
その頃に先輩に抱かれた。
ってことは…先輩はひとつ年上だからまだ中学生。
もしか、してーー
「…ー草君? 唐草君っ?」
「ぁ、はいっ!」
パッと顔を上げると、先輩が目の前まで歩いてきていた。
「ごめん、変なこと言ったから悩ませちゃったね。忘れて?」
「ぃ、いえ……ぁの」
「? なに?」
「もし…もしその人が見つかったら、なにをするんですか……?」
ドクリ ドクリ
心臓が嫌な音をたてて動き始める。
「…………そうだな……」
シーンと静まった生徒会室に、ポツリと響く声
それはクスリと申し訳なさそうに微笑み、「秘密」と答えた。
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