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しおりを挟む「ねー先生、どうして〝こんやくしゃ〟とさよならしちゃったの?」
「何があったんですかー?」
いつも通り賑やかな病室。
噂を聞きつけた女の子たちに早速質問責めに合ってる先生は、苦笑していた。
「うーん、そうだな。
先生はね、愛を思い出したんだよ」
「あい?」
「そう。だからね、これからは、愛のために生きていくんだ」
(えぇぇ何あれ…すっごい王子様じゃん)
前世の記憶と混同してるのかな? 大丈夫かな…?
「りんくん、おはなし止まった!つづき読んで!」
「ぁ、ごめんごめん。えっと……っ、ケホッ、コホコホッ」
「っ、凛。
悪いね、凛はここまでだよ。後は他の子に読んでもらってね」
「ぇ、せんせ ーーわぁっ」
直ぐに抱きかかえられ、「ちょっと診察しようね」と診察室へ運ばれてしまった。
「凛。いくら声が戻ったからって絵本は早すぎる。また声が出なくなったらどうするんだ?」
「ごめんなさぃ……」
「長いこと喉を使ってなかったんだ。焦らずに、これから少しずつ戻していこうね」
「は、はぃ…」
優しく笑いながら頭を撫でてくれ、思わず顔が赤くなるのが分かる。
(うぅぅ…恥ずかしい……)
「っ、あぁーもう無理。なに? 可愛すぎ」
「ぇ?」
グイッと腕を引っ張られ、先生の膝の上に乗せられた。
そのままぎゅぅぅっと抱きしめられる。
あの後、「男同士とか年の差とか関係ないから。俺はお前が好きなんだ、凛」と言われ、秘密ではあるけどちゃんとお付き合いしている。
先生は、婚約者や両親にちゃんと話を付けたらしい。
有無を言わさない先生の目に、両親はもう結婚については何も口出ししてこないとのことだった。
(僕、こんなに幸せでいいのかな)
毎日がふわふわしてて、どうしようもない。
でも、これは現実で……こうして今2人で触れ合うことが出来ていて。
「ねぇ、凛」
「はい」
「今生では、一生いっしょに過ごしていこうね」
「ーーっ、はぃ……!」
嬉しくてじんわり浮かんでしまった涙を、先生が拭ってくれる。
そしてそのまま、ふわりと優しいキスが落ちてきたーー
こうしてメルヘン史上最も哀れと謳われたプリンセスは、
幸せになる事が、できましたとさ。
めでたし、めでたし。
(ねぇ凛、〝精通〟ってまだだよね)
(せい…つう……?
ごめんなさい、僕前世じゃ女だったし人間じゃなかったから、そういうのは…全然……)
(あぁそっか!そうだよね、うーんそうだなぁ。
いいかいよく聞いて。朝起きて、自分の身体がおかしかったすぐに呼ぶんだ。周りの子を頼っちゃ駄目だからね。すぐ俺を呼んで。分かった?)
(は、はい。分かりました)
(……耐えるんだ俺。今はまだ早い、ゆっくり…ゆっくり)
(……?)
***
優しい大人 × 一途子ども
〈篠塚(シルウィズ) × 凛(リーシア)〉
fin.
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