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「〝こんやくしゃ〟って、ロマンチックよね~」

部屋に帰って来て、女の子たちがわいわいはしゃいでる。

(そうだよな、婚約者なんていて当たり前か)

時間が経ち、だんだん冷静になってきた。
だって相手は医者、しかも将来を約束された超エリート。
お相手なんて引く手数多だろう。

ははっ、王子様だった頃と変わらない。
人気者はやっぱり人気者だ。

(女の人、いい人そうだったな)

微笑みながら先生を見つめるその表情は、お金目的だとか地位目的だとか、そんな感じではないように見えた。

(良かった……)

前世でも、たくさん心配したけどお妃様になられる方は本当にいいお人で。
だから、安心して身を引く事ができた。

今回も、大丈夫そうだ。

まぁ、どの道欠点があったとしても僕には何も出来ないんだけどね。
8歳児で男だし、あの頃みたいに声は出ないし。

はぁぁ……ほんと、酷いや。


「ひっく……ぅ、ぅぇえ…ぇ……っ」


〝?〟


隣から泣き声が聞こえる。

確か隣の女の子は…先生の事が好きだったよな。

ーーあぁ、そっか。

ベッドを降りて、ポンポンその子の頭を叩いた。

〝大丈夫だよ〟

「っ、りん…くん……!」

ガバッと抱きついてきた体を受け止める。

(失恋かぁ。クスッ、可愛いな)

こんな小さな子を泣かせるなんて、シルウィズ様は罪な男ですね。

「どうしたの? どうしたの?」と寄ってくる子たちに〝何でもないから〟と待ったをかけ、優しく背中を撫でてあげた。

ねぇ、僕も全く一緒なんだよ。
こうなることは知ってたんだけどさ、また……失恋、しちゃったよ。

鼻の奥がツンとし始めて、グッと奥歯を噛みしめる。

そのまま、その子の泣き声をただ聞いていた。




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