2 / 12
2
しおりを挟む突然だけど、僕には前世の記憶がある。
僕は前世では女の人……それも人魚姫だった。
メルヘンの絵本にある人魚姫の話、あれはまんま僕の前世のようで。
お母さんが買ってきてくれた絵本を見て、全てを思い出した。
僕は、かつて人魚姫としてひとりの人間の王子様に恋をして。
魔法使いの力を借りて何とか陸に上がり会いに行ったけれど、もう結婚が決まっていてどうにもならなかった。
姉さんたちがくれた短剣で王子様の心臓をひと突きにするなんて……出来るはずもなくて。
結局タイムリミットの満月の夜がやってきて、僕は泡になって溶けていったんだ。
全てを思い出した瞬間、何故だか声が全く出なくなってしまった。
それは年少の頃で、両親が慌てて病院に連れて行ってくれて。
ーーーーそこで、僕は〝運命〟を見た。
〝っ、しるうぃず…さま……〟
『ん? なにか言ったかな?』
あの頃と全く変わらぬお姿のまま、僕の前にいる〝先生〟。
『どうしたの? そんなに目を丸くして…先生の顔になにかついてる?』
〝っ!〟
顔を近づけられて、思わずビクッと体が震えた。
『あぁごめんね。驚かせるつもりは無かったんだ。
うーん……にしても、どこにも異常は見つからないし、もしかしたら心理的なものが原因なのかもしれないな』
こうして診断結果を両親と相談した結果、様子見の入院ということになって。
その様子見が、ずるずる ずるずると伸びてしまって……今に至る。
現在、僕は学校に通ってたら小学2年生…8歳だ。
年少の頃からこの病室にいるから、もう今年で4年目。
周りの子たちの中では長い方で、先輩的存在。
先生は、今年で27歳。
研修医の頃から優秀だったみたいで、将来有望なお医者さん。
面倒見のいい優しい性格と整った顔で、病院みんなの人気者だ。
(あの頃とは、全然違う)
あの頃、〝私〟と貴方は種族が違うだけだった。
まぁ、だからこそあの日海に落ちた貴方を助けることができたのだけど。
今、〝僕〟と貴方は何もかもが違う。
男性同士が結婚できない国にこうして男として生まれ、その年の差は19。
しかも前世の記憶があるのは僕だけ。
シルウィズ様は、僕の顔を見ても何の変化もなかった。
(はっ、なんて残酷な運命なんだろう?)
あの頃と同じなのは、こうして声が出せなくなってしまったことくらい。
それと………この〝気持ち〟だけ。
男同士、年の差19、医者と小学生の患者。
そんな全くフェアじゃない、この世界においても
ーーーー僕は、貴方に〝恋〟をしてしまっている。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

その、魔法の味は
花町 シュガー
BL
『僕の身体は、あなたが作る〝魔法〟で出来ている』
優しい大人 × 健気学生
〈堤 輝 × 栗山 柚紀〉
α一族の元に生まれたΩと、とあるケーキ屋さんの話。
---------------------------------------------
※「それは、キラキラ光る宝箱」とは?
花町が書いた短編をまとめるハッシュタグです。
お手すきの際に覗いていただけますと幸いです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ネモフィラの花冠
花町 シュガー
BL
『わたしは、あなたを許します』
一途 × 一途健気
〈明 × 唐草 瑠璃〉
ネモフィラの花言葉=可憐・あなたを許す
表紙に使わせていただいている【うむぎさん(@xxxxksm)】の綺麗なネモフィラのお写真から話を膨らませました。
-----------------------------------------------
※「それは、キラキラ光る宝箱」とは?
花町が書いた短編をまとめるハッシュタグです。
お手すきの際に覗いていただけますと幸いです。
その、梔子の匂ひは
花町 シュガー
BL
『貴方だけを、好いております。』
一途 × 一途健気
〈和孝 × 伊都(梔子)〉
幼き日の約束をずっと憶えている者同士の話。
梔子の花言葉=喜びを運ぶ・とても幸せです
---------------------------------------------
※「それは、キラキラ光る宝箱」とは?
花町が書いた短編をまとめるハッシュタグです。
お手すきの際に覗いていただけますと幸いです。

記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる