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しおりを挟む突然だけど、僕には前世の記憶がある。
僕は前世では女の人……それも人魚姫だった。
メルヘンの絵本にある人魚姫の話、あれはまんま僕の前世のようで。
お母さんが買ってきてくれた絵本を見て、全てを思い出した。
僕は、かつて人魚姫としてひとりの人間の王子様に恋をして。
魔法使いの力を借りて何とか陸に上がり会いに行ったけれど、もう結婚が決まっていてどうにもならなかった。
姉さんたちがくれた短剣で王子様の心臓をひと突きにするなんて……出来るはずもなくて。
結局タイムリミットの満月の夜がやってきて、僕は泡になって溶けていったんだ。
全てを思い出した瞬間、何故だか声が全く出なくなってしまった。
それは年少の頃で、両親が慌てて病院に連れて行ってくれて。
ーーーーそこで、僕は〝運命〟を見た。
〝っ、しるうぃず…さま……〟
『ん? なにか言ったかな?』
あの頃と全く変わらぬお姿のまま、僕の前にいる〝先生〟。
『どうしたの? そんなに目を丸くして…先生の顔になにかついてる?』
〝っ!〟
顔を近づけられて、思わずビクッと体が震えた。
『あぁごめんね。驚かせるつもりは無かったんだ。
うーん……にしても、どこにも異常は見つからないし、もしかしたら心理的なものが原因なのかもしれないな』
こうして診断結果を両親と相談した結果、様子見の入院ということになって。
その様子見が、ずるずる ずるずると伸びてしまって……今に至る。
現在、僕は学校に通ってたら小学2年生…8歳だ。
年少の頃からこの病室にいるから、もう今年で4年目。
周りの子たちの中では長い方で、先輩的存在。
先生は、今年で27歳。
研修医の頃から優秀だったみたいで、将来有望なお医者さん。
面倒見のいい優しい性格と整った顔で、病院みんなの人気者だ。
(あの頃とは、全然違う)
あの頃、〝私〟と貴方は種族が違うだけだった。
まぁ、だからこそあの日海に落ちた貴方を助けることができたのだけど。
今、〝僕〟と貴方は何もかもが違う。
男性同士が結婚できない国にこうして男として生まれ、その年の差は19。
しかも前世の記憶があるのは僕だけ。
シルウィズ様は、僕の顔を見ても何の変化もなかった。
(はっ、なんて残酷な運命なんだろう?)
あの頃と同じなのは、こうして声が出せなくなってしまったことくらい。
それと………この〝気持ち〟だけ。
男同士、年の差19、医者と小学生の患者。
そんな全くフェアじゃない、この世界においても
ーーーー僕は、貴方に〝恋〟をしてしまっている。
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