ハルとアキ

花町 シュガー

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番外編 2

3

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不安・恐怖・体の震え
この期間ずっと抱えたままかと思ってたそれは、始まってからすぐ頭の隅へ追いやられた。


「レイヤ次の場所!ここから遠いから走れって!」


「待て引っ張るな!もう少し落ち着け」


午前中からレイヤとクラスの見回り担当。
滞りなく始められたか・何かトラブルは起きてないかの確認なんだけど、とにかく人が多くて多くて……

(ぜんっぜん進めないんだけど!?)

なんでだ!? ちゃんと人が多くなる順番予測しながら回り方検討したのに、外れた!? なんでこの時間ここ混んでんの!?
なんか聞き漏らしたことあったっけ…もらった資料と違うことしてるクラスがあるとか? 実行委員近くにいないの? 戻ってイロハたちに確認してみたほうがいい?
一体なにがーー


「アーキ」


「ぅわ、っ」


すれ違う人とぶつかりかけて、グッと腰に手を回された。

「お前忘れたのかよ、行事のあるある」

「? あるある?」

「去年の体育大会。来場者が多くて当日駐車場を広げて片付けで使う場所使えなくて、お前が計画し直しただろうが」

「……あ」

あったそんなこと、懐かしい。
確か、外からの歓声を聞きながら静かな生徒会室で練り直したんだ。
そのときはまだ〝会長〟呼びで、突然訪ねてきたこいつに膝枕してやったんだっけ…

「行事なんて大抵そんなもんだ。どんだけ計画しても結局当日は人の動きで変わる。臨機応変が1番ってことだ。
来年はお前らが仕切るんだからちゃんと学んどけよ」

「っ、はい」

「もう現状からしてその順番で回るのは無理だ、時間内にも終わりそうにない。人の流れで空いてそうなとこから訪ねていったほうが効率的だ。
おい、後どこが残ってる」

「えっと…この校舎だと上の階に2つ、その上に3つ。
それから隣の校舎はまだ全然回れてない」

「なら先に隣行くぞ。多分今こっちのほうが人が多い。
先に向こう終わらせてからまた戻ってくるか」

「わかった」

俺たちのことをチラチラ見てくる人はいる。
そりゃ生徒会役員だし龍ヶ崎と小鳥遊だし、いろいろ要素はあるだろう。
でも誰も話しかけてこない。遠巻きに見てくるのみで、去年みたいに囲まれることはない。
明らかに急いでるのが分かるから? それともレイヤや先輩がなにかした?
わからない…けど、ありがたすぎて

そのまま互いに相談しながら集中し、なんとか時間内に周りきった。









「はーーー……」

チャプンと沈む、浴槽の中。
生徒会として走り回って、少し休憩したらクラスの手伝いでまた動いて…
気づいたら、1日目が終わっていた。まさに戦争。もう抜け殻状態。

(人が多すぎるんだよなぁ……)

有名校だし全寮制だし、そりゃ親も親戚もこぞって我が子を見にくるわけで。
わかってるんだけど本当びびる…でもこれでも入場制限してんだよなぁ……やば……

去年は人酔いした。キツい香水のせいもあってそれが原因だったけど、今年はなんともない。
多分外に行くようになったからだ。街へ出かけてるから。俺も人慣れできてきたってことかな…でも、一応明日も薬忍ばせとこう。

明日もきっと多い。今日と同じくらいの…はず……だから………


「……だめだ寝そう、あがろ…」


ザバッと立ち上がり、風呂の扉を開けた。

文化祭期間中、俺はレイヤの部屋に泊まることが決まってる。
その間月森先輩が俺たちの部屋に泊まってくれるそうで、ハルに「楽しんでおいで」とニヤニヤされた。

(いや…楽しむも何ももう指一本動かしたくないけど……)

夕食はさっき食べた。
あとはもう歯磨いて寝るだけ。

レイヤはまだリビング。
呼びに行くと疲れたように立ち上がった。流石のこいつも疲れるか、そりゃそうだよな……

「先寝とけ。瞼閉じかかってんぞ」

「そう、する」

「俺も後で行くから…と、待て。
お前髪濡れてんじゃねぇか」

「今日はもういいじゃん……」

「駄目だ。そういうので一気に風邪ひいたりすんだ、ちゃんと乾かせ。
おら、もっかい風呂場行くぞ」

「うぇぇやめろひっぱるなー」

「俺が風呂出るまでドライヤーしとけ。
チェックするからしっかりな」

「っ、くぅ……」

はいはい睨んでも無駄だーと洗面所の椅子に座らされ、ドライヤーを握らされ
しょうがないとウトウト手を動かすけど、すぐそこで聞こえる水の音につい瞼が落ちて、洗面台に突っ伏すように眠ってしまっていて。

最終的に上がったレイヤに苦笑され、抱きかかえられながら

知らず知らずの間に、ベッドで眠りこんでしまったーー


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