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番外編 2
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しおりを挟む不安・恐怖・体の震え
この期間ずっと抱えたままかと思ってたそれは、始まってからすぐ頭の隅へ追いやられた。
「レイヤ次の場所!ここから遠いから走れって!」
「待て引っ張るな!もう少し落ち着け」
午前中からレイヤとクラスの見回り担当。
滞りなく始められたか・何かトラブルは起きてないかの確認なんだけど、とにかく人が多くて多くて……
(ぜんっぜん進めないんだけど!?)
なんでだ!? ちゃんと人が多くなる順番予測しながら回り方検討したのに、外れた!? なんでこの時間ここ混んでんの!?
なんか聞き漏らしたことあったっけ…もらった資料と違うことしてるクラスがあるとか? 実行委員近くにいないの? 戻ってイロハたちに確認してみたほうがいい?
一体なにがーー
「アーキ」
「ぅわ、っ」
すれ違う人とぶつかりかけて、グッと腰に手を回された。
「お前忘れたのかよ、行事のあるある」
「? あるある?」
「去年の体育大会。来場者が多くて当日駐車場を広げて片付けで使う場所使えなくて、お前が計画し直しただろうが」
「……あ」
あったそんなこと、懐かしい。
確か、外からの歓声を聞きながら静かな生徒会室で練り直したんだ。
そのときはまだ〝会長〟呼びで、突然訪ねてきたこいつに膝枕してやったんだっけ…
「行事なんて大抵そんなもんだ。どんだけ計画しても結局当日は人の動きで変わる。臨機応変が1番ってことだ。
来年はお前らが仕切るんだからちゃんと学んどけよ」
「っ、はい」
「もう現状からしてその順番で回るのは無理だ、時間内にも終わりそうにない。人の流れで空いてそうなとこから訪ねていったほうが効率的だ。
おい、後どこが残ってる」
「えっと…この校舎だと上の階に2つ、その上に3つ。
それから隣の校舎はまだ全然回れてない」
「なら先に隣行くぞ。多分今こっちのほうが人が多い。
先に向こう終わらせてからまた戻ってくるか」
「わかった」
俺たちのことをチラチラ見てくる人はいる。
そりゃ生徒会役員だし龍ヶ崎と小鳥遊だし、いろいろ要素はあるだろう。
でも誰も話しかけてこない。遠巻きに見てくるのみで、去年みたいに囲まれることはない。
明らかに急いでるのが分かるから? それともレイヤや先輩がなにかした?
わからない…けど、ありがたすぎて
そのまま互いに相談しながら集中し、なんとか時間内に周りきった。
「はーーー……」
チャプンと沈む、浴槽の中。
生徒会として走り回って、少し休憩したらクラスの手伝いでまた動いて…
気づいたら、1日目が終わっていた。まさに戦争。もう抜け殻状態。
(人が多すぎるんだよなぁ……)
有名校だし全寮制だし、そりゃ親も親戚もこぞって我が子を見にくるわけで。
わかってるんだけど本当びびる…でもこれでも入場制限してんだよなぁ……やば……
去年は人酔いした。キツい香水のせいもあってそれが原因だったけど、今年はなんともない。
多分外に行くようになったからだ。街へ出かけてるから。俺も人慣れできてきたってことかな…でも、一応明日も薬忍ばせとこう。
明日もきっと多い。今日と同じくらいの…はず……だから………
「……だめだ寝そう、あがろ…」
ザバッと立ち上がり、風呂の扉を開けた。
文化祭期間中、俺はレイヤの部屋に泊まることが決まってる。
その間月森先輩が俺たちの部屋に泊まってくれるそうで、ハルに「楽しんでおいで」とニヤニヤされた。
(いや…楽しむも何ももう指一本動かしたくないけど……)
夕食はさっき食べた。
あとはもう歯磨いて寝るだけ。
レイヤはまだリビング。
呼びに行くと疲れたように立ち上がった。流石のこいつも疲れるか、そりゃそうだよな……
「先寝とけ。瞼閉じかかってんぞ」
「そう、する」
「俺も後で行くから…と、待て。
お前髪濡れてんじゃねぇか」
「今日はもういいじゃん……」
「駄目だ。そういうので一気に風邪ひいたりすんだ、ちゃんと乾かせ。
おら、もっかい風呂場行くぞ」
「うぇぇやめろひっぱるなー」
「俺が風呂出るまでドライヤーしとけ。
チェックするからしっかりな」
「っ、くぅ……」
はいはい睨んでも無駄だーと洗面所の椅子に座らされ、ドライヤーを握らされ
しょうがないとウトウト手を動かすけど、すぐそこで聞こえる水の音につい瞼が落ちて、洗面台に突っ伏すように眠ってしまっていて。
最終的に上がったレイヤに苦笑され、抱きかかえられながら
知らず知らずの間に、ベッドで眠りこんでしまったーー
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