ハルとアキ

花町 シュガー

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中編: ハル編

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「初めは気持ち悪いし怖いしでとにかく大変で、マサトさんも恨んだし先生に会うことを了承した自分も恨んだ。
実際夏休みは最悪だった。初日から体調が崩れて、脅されてまた崩れて…海にも落ちて……
でも多分、それがなかったら僕はあなたを所有物にしてなかったと思う」

信じれなかった。言うのは簡単だから。
でも実際にその姿を見せられて、変わった。

この人は本当に僕しか眼中にない。
海へ落ちたとき、アキよりも早く飛び込んで沈む僕に追いつき、レイヤへ引き渡した。
医者なら普通、引き渡さずに船へ上げ応急処置をするだろう。
でも、先生は僕の想いを優先した。助けながらこの体の現状維持ができるのを確認し、僕が探していたイルカを探しにいった。命に関わる場面では考えられないこと。

僕の想いを100%叶えるという意思と、自分は絶対僕より先に死なないという自信。
それを目の当たりにして、こんな人と出会う確率はどれくらいなんだろうと思った。
人間なんだから想いを捻じ曲げたって命を最優先する。それが医者なら尚更。
でもこの人はそうじゃない。命より想い。その人がどうしたいのかを最優先にし、叶える。

眼中に入れたそのたった1人の人が、どうしたいのかをーー


「先生。僕はここに着いて、あなたが普段使う場所を案内してほしいと思いました。文化祭で僕の使う場所ばかり知られて不公平だって。

……僕も、あなたを知りたいって」


知りたい。
誰よりも1番知っておきたい。

そうじゃないと


「嫉妬…してしまいそう、で」


事実、もうしてる。
文化祭からずっとだ。最悪、まさかこんな気分になるなんて。
でも、なってしまったものはしょうがない。


「僕は、あなたに所有物以上の気持ちを抱いています。
あなたに向けられる視線は全部排除したいし、想いも僕のだけを叶えてほしい。先生の手で触られるのは僕だけがいい。キスも、その先も、絶対絶対僕だけ。僕だけじゃないと嫌だ。

それぐらい……先生のことを、愛してます…っ」


(言っ、た)


言った。言ってしまった、全部。


帽子のツバからチラリと見上げると、未だ微動だにしない顔。
ローブを握りながらあわあわと視線を下げる。

どうしよう、引かれたんだろうか。
『依存していい』とは言ったけど、それが愛情に変化するなんて思いもしなかったとか?
僕にはただの所有物で…お気に入りで、いてほしかった……?

(っ、でも)


「なので…あのっ、

ーー責任、取ってください!」


この人のせいで僕はこうなった。
こんなに変えられてしまった。

だから責任もって



「僕に、同じ『好き』を…返してください……っ」



「…………」


「……ちょっ、先生聞いてます? いつまでだんまりなんですか? 意味わからない…?
僕のこと大好きなのは知ってるけど、favoriteじゃなくloveで返してほしいって言ってて、それで」


「…………」


「…せ、んせ……?」




「…………なにこれ…現実?」




「……はぁ??」



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