ハルとアキ

花町 シュガー

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番外編 1

3

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「わぁ………っ!!」

初めて来た、大きな大きな商業施設。
大きな扉を抜けると、その先はびっくりするほど別世界だった。

(す、ごい……)

学校の校舎よりも広い空間。
長い廊下は先が全然見えなくて、その両脇に数々のテナントが軒を連ねている。
突き抜けの作りになっているから、上を見れば4階や5階まで全部見ることができて。

楽しそうに笑う沢山の人の声と、キラキラがいっぱいの空間。
まるで、夢の中のような……

グイッ

「わっ」

「ほら、入り口で止まってると邪魔になんぞ」

「ぁ、ありがと」

「こういうとこ初めてだよな?」

「うん、初めて!!」

「それじゃ、取り敢えず時間が来るまで店の中見て回るか」

「? 何の時間?」

「これ」

ヒラリと取り出されたのは、2枚の紙切れ。

「映画。お前映画館も行ったことねぇだろ? ジャンルは色々あったが、まぁ初めはアクションだな。俺は吹き替えより字幕が好きだからそれにしたけど良かったか?」

「映画…館……!」

「あ、別に興味ねぇなら観なくていいぞ。このモールすげぇでかいから全部見て回ってもいいし」

「!? 行く行く!行きたい!!」

何言ってんだよ!そんなのチケットが勿体ない!!
ってかいつの間にそんなの用意してたの!?

「ククッ、なら時間までぶらつくか。
午後からの上映だから昼飯も済ませとかなきゃな」

「うん!…レイヤ、チケットありがとう」

俺、なにも用意してないや。
初めてで浮かれてて、自分のことしか考えてなかった。
恥ずかしいし申し訳ない……

「別にこれくらいどうってことねぇよ。

ほら、それよりーー」

繋いでた手が離され、グッと腰に回された。

「時間は無限じゃねぇんだ、早く行くぞ」

「っ、そうだな」

折角学校じゃなくこんなとこに来てるんだ。
今を楽しまなきゃ、後で絶対後悔する。

顔を上げると、ニヤリと笑う顔。
いつもよりずっと楽しそうに笑ってて、つられて俺も笑い返した。






「おぉー……!!」

静かな空間に佇む、思ったより大きなスクリーン。
全体的に暗くて、かなり広い場所。

「俺たちの席はKの……ここだな」

「椅子がふかふかだー!」

「フハッ、そうだな」

ボフっと座ると、目の前いっぱい端から端まで全部画面。
凄い、これからここに映像が流れるんだよな?

「どうしよう、俺目2つで足りるかな」

「何言ってんだ、足りる足りる」

「まじ? だって凄い大きいよスクリーン…予想以上」

「大丈夫だって。人間が見るもんなんだから目が2つ以上必要ならやべぇだろ」

「そりゃそうなんだけど…ってか横の壁って全部音響?」

「いや、全部ってわけではないだろうがスピーカーは取り付けられてるだろうな」

「わぁ…そうなんだ……!」

両側の壁から音が聴こえるのだろうか。
凄い臨場感なんじゃ……? やば、めちゃくちゃ楽しみ。

「昼飯も美味かったな」

「ん!美味しかった!」

1階2階付近を暫くぶらぶらして、互いに気になったとこに入ってみたりして。
沢山のものが売られおりディスプレイはどれも華やかで、見るだけでも楽しかった。
その後休憩も兼ねてレストランの通りに行って、何処へ入るか悩みながら歩いて。

「お前お好み焼き焼くの本当下手くそな。クククッ」

「なっ、初めだけだっただろ!? 2枚目はちゃんと完璧に出来たし」

匂いにつられて「ここにしよう」となったお好み焼き屋さん。
自分たちで鉄板を使って焼くシステムで、お好み焼きなんか焼いたことなかったからとにかく難しくて……

大体具材が多いのがいけないんだよ!
大量のキャベツに魚介類に豚肉に…あと天かすに。
ひっくり返した時のあの千切りキャベツが飛び出す瞬間は、自分で言うのもなんだけど大分傑作だった。

「レイヤは初めてじゃないのか?」

「まぁな。家でも作ってたし自分でも時々作るぞ」

「え、部屋で?」

「部屋で」

え、待っ、レイヤ1人部屋だよな?
1人でお好み焼きひっくり返して食ってんの……?

(わぁ、今度ハルとイロハたち誘ってお邪魔しよう)

そっかこいつ友だちいないんだった、そうだ。
月森先輩も誘わなきゃ。後、梅谷先生と櫻さんも。

「ついでにたこ焼きパーティーもしような、レイヤ」

「? 何言ってんだ……っと、始まるな」


ビーッというサイレンのような音と共に、どんどん辺りが暗くなる。
ざわざわ話をしていたお客さんたちも、一気に静かになってきて。

(わぁ……いよいよだ)

ポソッ

「寒くないか?」

「大丈夫、ありがと」

暗がりでよく見えないけど、俺の耳元にあった顔が正面を向いたのがわかった。

微かな緊張と、わくわくする興奮と。

「……っ!」

キュッとカーディガンを握って、俺も正面のスクリーンを見た。




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