ハルとアキ

花町 シュガー

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番外編 1

初デート 1

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【side レイヤ】


日曜日
天気も良く、絶好の出掛け日和。
今日はそこまで寒くもねぇしな。

待ち合わせ場所の校門の塀に寄りかかりながら腕時計を見ると、間も無く約束の時間帯で。


「おーい!レイヤー!!」「かーいちょーっ!!」


(来たか)

声のした方へ目を向けると、ゆっくりながらもパタパタこちらに走ってくる影が3つ。

「おはよっ、時間ジャストだね!」

「おはよう。まぁ、15分前行動は意識して欲しいところだがな」

「もーそういう固いことは言わない!今回は見逃して、ねっ?」

「ほらアキ、会長のとこ着いたよ!」

「ぅ…イロハぁ……」

ハルと丸雛の後ろから一向に出てこない人影。
恥ずかしいのか不安なのか、2人の手をぎゅっと握っているのが分かる。

「だいじょーぶだよアキ!凄い似合ってるから!!」

「うんうん、僕らが言うんだし間違いないよ!」

「で、でも…俺こんなの初めて、だし……」

「「絶・対・大・丈・夫!!」」

「っ、うぅ………」

「ほら、もうレイヤ待ってるから。ね? 行っといで?」

「……うん。わ、かった」

決心がついたのか、2人の間から恐る恐る姿を見せたのは。


(……へぇ)


タートルネックのセーターに、アーガイルのカーディガン。
黒い細身のズボンには、お洒落な靴ではなくスニーカー。恐らく、今日は沢山歩くからわざとスニーカーを選んだんだと思う。
カーディガンの上には少し長めのコートを羽織って、ちょこんとベレー帽を被ったアキが恥ずかしげに俯いていた。

(ククッ、成る程 成る程)

ちらりとハルたちを見ると、ニヤリと笑う顔。

〝そういう事〟か。
分かってんじゃねぇかお前ら。


「ぁの…お、お待たせ……しましたっ」


「ん。似合ってる」


「!!」


「本当に!?」というようにぴょこんっと上がった頭を、ベレー帽の上から撫でる。
そのままぎゅっと右手を掴んだ。

この格好はユニセックスだ。恐らく男女兼用のもので、どちらが着てもおかしくはない。
アキの背丈からしても全然違和感がなく馴染んでる。
そして、なによりもーー

(こうやって手繋いでても〝普通〟だしな)

俺らの世界やこの学園では普通であるこの行為
だが、外の世界…日本では、それは全く普通ではない。
男同士が手を繋いで歩くなど注目の的だ。
俺はそれでもいいが、初めてのこいつには毒だなと思っていた。

だが、この服装だとそれがまったく問題ない。
喉仏はタートルネックで隠れてるし、アキの顔からして男か女かも曖昧…ベレー帽を被っている分、髪型的にはボーイッシュな女性に見えなくもない。
寧ろ俺が隣にいるから、女性に見える可能性が高いかもしれない。

これからすれ違うのはみんな知らない人、この先もう会うこともない奴らだ。
変なカツラや化粧などせずとも、きっとこの服装なら互いに気兼ねなくできるだろう。

ハルと丸雛と…多分月森も関わってんな。
後で礼でも言っとくか。


「じゃ、行くぞ」

「ぁ、うんっ。
2人ともありがとう、行ってきます!」

「はーい!行ってらっしゃいアキ!」

「会長も行ってらっしゃいです!楽しんできてください~!」

心配りに感謝しつつ、今日をしっかり楽しもうと外に停まっていた龍ヶ崎の車へ乗り込んだ。



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