453 / 536
番外編 1
初デート 1
しおりを挟む【side レイヤ】
日曜日
天気も良く、絶好の出掛け日和。
今日はそこまで寒くもねぇしな。
待ち合わせ場所の校門の塀に寄りかかりながら腕時計を見ると、間も無く約束の時間帯で。
「おーい!レイヤー!!」「かーいちょーっ!!」
(来たか)
声のした方へ目を向けると、ゆっくりながらもパタパタこちらに走ってくる影が3つ。
「おはよっ、時間ジャストだね!」
「おはよう。まぁ、15分前行動は意識して欲しいところだがな」
「もーそういう固いことは言わない!今回は見逃して、ねっ?」
「ほらアキ、会長のとこ着いたよ!」
「ぅ…イロハぁ……」
ハルと丸雛の後ろから一向に出てこない人影。
恥ずかしいのか不安なのか、2人の手をぎゅっと握っているのが分かる。
「だいじょーぶだよアキ!凄い似合ってるから!!」
「うんうん、僕らが言うんだし間違いないよ!」
「で、でも…俺こんなの初めて、だし……」
「「絶・対・大・丈・夫!!」」
「っ、うぅ………」
「ほら、もうレイヤ待ってるから。ね? 行っといで?」
「……うん。わ、かった」
決心がついたのか、2人の間から恐る恐る姿を見せたのは。
(……へぇ)
タートルネックのセーターに、アーガイルのカーディガン。
黒い細身のズボンには、お洒落な靴ではなくスニーカー。恐らく、今日は沢山歩くからわざとスニーカーを選んだんだと思う。
カーディガンの上には少し長めのコートを羽織って、ちょこんとベレー帽を被ったアキが恥ずかしげに俯いていた。
(ククッ、成る程 成る程)
ちらりとハルたちを見ると、ニヤリと笑う顔。
〝そういう事〟か。
分かってんじゃねぇかお前ら。
「ぁの…お、お待たせ……しましたっ」
「ん。似合ってる」
「!!」
「本当に!?」というようにぴょこんっと上がった頭を、ベレー帽の上から撫でる。
そのままぎゅっと右手を掴んだ。
この格好はユニセックスだ。恐らく男女兼用のもので、どちらが着てもおかしくはない。
アキの背丈からしても全然違和感がなく馴染んでる。
そして、なによりもーー
(こうやって手繋いでても〝普通〟だしな)
俺らの世界やこの学園では普通であるこの行為
だが、外の世界…日本では、それは全く普通ではない。
男同士が手を繋いで歩くなど注目の的だ。
俺はそれでもいいが、初めてのこいつには毒だなと思っていた。
だが、この服装だとそれがまったく問題ない。
喉仏はタートルネックで隠れてるし、アキの顔からして男か女かも曖昧…ベレー帽を被っている分、髪型的にはボーイッシュな女性に見えなくもない。
寧ろ俺が隣にいるから、女性に見える可能性が高いかもしれない。
これからすれ違うのはみんな知らない人、この先もう会うこともない奴らだ。
変なカツラや化粧などせずとも、きっとこの服装なら互いに気兼ねなくできるだろう。
ハルと丸雛と…多分月森も関わってんな。
後で礼でも言っとくか。
「じゃ、行くぞ」
「ぁ、うんっ。
2人ともありがとう、行ってきます!」
「はーい!行ってらっしゃいアキ!」
「会長も行ってらっしゃいです!楽しんできてください~!」
心配りに感謝しつつ、今日をしっかり楽しもうと外に停まっていた龍ヶ崎の車へ乗り込んだ。
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
同室のイケメンに毎晩オカズにされる件
おみなしづき
BL
オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?
それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎
毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。
段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです!
※がっつりR18です。予告はありません。
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる