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リクエスト番外編 2
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しおりを挟む「ーーさぁて、」
「「??」」
2人が用意してくれたケーキは、小さいのに凄く美味しかった。全然甘くなくてハルと一緒にどんどん食べれて、なんか上品な味…絶対高いんだろうな……
チラリとハルと目が合うけど、多分一緒のこと考えてる。
他の料理も、少ないながらとても美味しかった。
少しだけ雑談して、食後のお茶を飲んでーー
「月森、もういいだろ?」
「はぁぁ全く貴方は…もう少しゆっくりでもいいですのに…… えぇ、どうぞ」
「よし。 おいアキ行くぞ」
「へ? ぅわっ」
グイッと腕を掴まれて立たされる。
「ハル、アキ貰ってくからな」
「はーいどうぞ。行ってらっしゃいアキ」
「は、えっ、ちょ」
「ハル様は私が寮までお送りしますね。この後は再び丸雛くんたちの部屋へ行くことになっています」
「わぁそうなんですねっ!お願いします」
「ということだ。ほら、歩くぞ」
「ぁ、待っ……分かった、分かったから!」
ズルズル引きずられるのを何とかやめさせて、大人しく後をついて行った。
「お、お邪魔します……」
レイヤの部屋へ着くと、どうぞと扉を開けてくれた。
「ほら、リビング行けよ」
「うん」
いつものように靴を脱いでガチャリとドアを開ける、と
「………っ、ぁ」
真っ暗な部屋の中。
いくつものキャンドルが、柔らかい光を灯していた。
凄く幻想的で…御伽噺に出てくる世界みたいで……
「ほら、入れアキ」
「っ、ぅん」
背中を押され、一歩踏み出す。
これ、レイヤが準備してくれたの?
こいつは基本的に俺以外を部屋に入れたがらない。ってことは…一個一個全部お前が火付けたの……?
ーー俺の、ために?
「…………っ、」
「ハハッ、すげぇ顔」
ソファーまで着いて、レイヤに抱っこされるように膝の上へ座った。
「ここからは恋人の時間だ、アキ」
「レイ、ヤ……んぅ」
頬に手を添えられたかと思えば、すぐ近くに顔があって。
吸い付くように、唇が触れ合った。
「……みんなが、ね? 祝ってくれたんだ」
抱きしめられた腕の中、肩口に顔を埋めながら話をする。
「クラッカーとか鳴らしてもらって…飾り付けも凄く綺麗で……あとご飯も美味しくて」
「そうか」
「ケーキもね?こんなに食べたの初めてだったんだ…プレゼントもハルとお揃いのものばっかりで……みんな笑って、俺たちに『おめでとう』って手を叩いてくれて……」
「良かったな」
ポツリポツリと、話すことひとつひとつに相槌を打ってくれて。
「…っ、俺」
(俺…おれ……)
「こんなの、初めて、で………っ、」
知らず知らずに、涙がボロッと溢れてきた。
「ぅ、えぇ……ひ、くっ」
「泣いとけ」というように頭を撫でてくれるレイヤが、ただ暖かくて。
こんなに祝ってもらったのは初めてだった。
弾幕にも俺の名前があって、プレゼントも俺の分があって。
嬉しかったけど心がビックリしすぎて、感情が忙しなくグルグルしてる。
キャンドルの綺麗な空間の中…落ち着けるように深呼吸しながら、涙が止まるまでレイヤに受け止めてもらった。
「ほら」
「ぇ?」
両手の上に乗せられたのは、細長い箱。
「プレゼントだ」
「へ、さっきも貰った…」
「あれは月森と選んだやつ。こっちは俺がお前に選んだものだ」
カサリと包みを外し、中を開けていくと……
「っ、これ……」
入っていたのは、上品なボールペン。
レイヤが持ってるのと一緒だ。
「ハルとお揃いのもんは、もういっぱい貰ってんだろ?
だから、これは俺とお揃いだ」
「ーーっ、」
手に取ってみると、ちゃんと〝Takanashi.A〟と彫られていた。
(レイヤと…お揃い……)
大好きな人と、お揃いのもの。
「~~っ、ありがとうレイヤ」
「ん。インク無くなったら換えてやるよ。一生使えるやつだからな」
「ぅん、うんっ。ずっと大切に使う……っ」
丁寧に箱へ戻し胸に抱くと、クククッと笑っておでこにキスをしてくれた。
「本当は指輪にしようかとも思ったんだが、それはちゃんと俺が働き始めてからな。学生のままでは俺はあげたくはねぇ。
ちゃんとしたもんが買えるまで、待っとけ」
「っ、はい」
今のままでも、十分嬉しいのにな。
というか、俺からも指輪をあげたい。
指輪じゃなくても、何かお揃いのいつも身につけられるものを。
「さぁてアキ。
今日はお前の日だ。この後は、どうやって過ごしたい?」
今日は、俺の誕生日…俺が生まれた特別な日。
少しだけ我儘になっても…いいのだろうか……?
「ぎゅって、してほしい」
いっぱいいっぱい抱きしめてもらって
「そのままお風呂入って、眠りたい」
暖かい体と気持ちのまんまで……眠りにつきたい。
そうして、また新しい年が始まる1番初めの瞬間を
「〝おはよう〟を、一緒に言いたい……っ」
この1年、いろんなことが大きく変わった。
そのきっかけをくれたのは…紛れもなくレイヤで。
あの時俺を見つけてもらえてなかったら、今の世界は無かった。
ハルの中の俺に気づいてもらえてなかったら、間違いなく今俺はここにいない。
本当に、まるで奇跡みたいに…全ての選択肢が〝今〟を作っていて。
だから、だからーー
「あぁ、いいぜ」
いっぱいいっぱいになってる俺に優しく笑って、抱きしめてくれる。
「~~っ、」
涙を止めるのは、もう今日は無理。諦めた。
あなたが気づいてくれたから、今がある。
あなたが名前を呼んでくれたから、今がある。
今日はいっぱい泣いて。
明日から始まる1年、またたくさんの時間をみんなで過ごして…思い出を作っていって。
そんな日々を生きていきたい。レイヤの隣で…生きていきたい。
(あぁ…幸せだ……)
そんな奇跡みたいな世界で…これからも日々を過ごしていくことができる。
(本当にありがとう、レイヤ。
ーー愛してる)
「じゃ、先ずは風呂行くか」と抱いたまま立ち上がる首に、ぎゅうっと手を回した
fin.
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