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中編: イロハ編
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しおりを挟む「ぁ……の………」
「……………」
い……い、い、い
言えない…!?
あれ!? 言えないんだけど!嘘、なんで!?
たった4文字、いや2文字。
早く言たくて仕方なかったはずなのに。
いざこうやって面と向かってみると…言葉が出てこなくなって……
え、緊張してるの?
まじ? ここで?
目の前でじぃ…と見つめてくる目に、たらたら変な汗が出てくる。
「ぇ…とですね……その………」
「……………」
「ぁの…え……とぉ………」
「…………っ、ぷは」
「!! わっ」
もう無理というように吹き出され、ぐしゃぐしゃ髪を掻き回された。
「いいよ、分かってるから」
「え?」
「無理に全部片付けようとすんなって言っただろ?」
(ぁ………)
「まったくお前は」と呟きながら笑うその顔が
一瞬だけ、寂しそうに歪んだ気がしてーー
「ーーーーっ、カズマ!」
「っ……イロハ?」
離れていく両手を思いっきり掴んで、自分の膝の上に置いた。
(駄目だ)
ここで逃げたら…またカズマの優しさに甘えてしまったら、駄目だ。
カズマは今まで何回、さっきみたいな顔をしてたんだろう?
どれくらい苦しかった?
いつも自分よりぼくのことを考えてくれるカズマ。
たくさん迷惑かけて…でもそれを「迷惑じゃないよ」と優しく笑ってくれて。
その優しさに……わたしはいつまで甘えているんだ?
(ねぇカズマ。
気持ちを伝えるのって、怖いね)
中学生だったあの日も、こんな気持ちで伝えてくれたの?
そしてそれを断ったのに…一緒にいてくれたの?
「待つよ」って…言ってくれたの……?
「~~っ、ぁの、おれ…ぇ……!」
泣きたくもないのに、まだ言ってもないのに、涙で目の前が歪んでくる。
それを拭う為、手を振り解こうとするカズマを、力を込めて制した。
「イ、ロハ…?」
「…………っ!」
もう、待たせたくない。
これ以上…寂しい思いはさせたくない。
ーーちゃんと、言うんだ。
「カ、ズマ…カズマ、あのね? わたしっ」
「いいよ、ちゃんと分かってるから」って貴方は言うけれど。
でも、ちゃんと言葉にしないと伝わらないものがある。
お母さんとのことだってそうだった。
だから、
「お、れ……おれはっ」
丸雛 イロハは、矢野元 カズマのことが
「す……き………好き、です……っ」
ほろりと、涙がこぼれた。
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