ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
388 / 536
中編: イロハ編

sideカズマ: それは、イロハとの思い出 1

しおりを挟む


「初めて会ったのは、幼稚園生の頃だった。
イロハは女の子としてうちに紹介されて、だから俺も両親もみんなイロハを女の子として扱ってた」

お人形のようにくるくるした長い髪の毛のお母さんと、そのお母さんにそっくりなくるくるした髪の子。
目が凄く綺麗で、俺よりも小さくてちょこんとしてて、恥ずかしいのか一生懸命目線を下にさげていた。

『これから同じ幼稚園に通うのよ』と紹介され、俺がこの子の手を引いて行かなきゃいけないんだと思った。

「幼稚園でも当然、イロハは女の子だった」

みんなに『イロハちゃん』と呼ばれ、女の子と一緒に遊んでいた。
イロハは他の女の子よりもずっと可愛くて、俺たち男子はみんなイロハのことが好きだった。
それに俺が嫉妬したりとかして……本当、可愛い幼稚園生だった。

「今もそうだけど、本当によく笑う奴だったんだ。ままごととか折り紙とかが好きで、いつも付き合わされてた」


『きょうもわたしがおかあさんするから、かずまくんおとうさんね!』

『おれも、たまにはおかあさんしたい…』

『だめ!おかあさんはいろはなの!おりょうりいっぱいやりたいの!』

『め!』と言われながらも、たまには『おとうさんもする?』とおもちゃの包丁を貸してくれたりして、お隣さん同士本当に仲が良かった。


「丸雛と矢野元も、仲がいいの?」

「そうだな。俺の両親もイロハの母さんとは仲がよかった。イロハの父さんは見たことなくて…多分、隣に引っ越してくる前には離婚してたんだと思う」

「そっか……」


『あら、イロハちゃん今日も遊びに来たのね!』

『こんにちはおばさん!あがってもいい?』

『どうぞ~』

幼稚園が終わるといつも遊びに来ていた。
可愛らしいワンピースやふわふわのスカート。髪もキラキラしたゴムでいつもオシャレにして、凄く輝いて見えた。

暗くなる頃には、俺がちゃんと隣の家まで送り届けてた。
インターホンを鳴らすといつもイロハのお母さんが出てきてくれて、『送ってくれてありがとう』と頭を優しく撫でてくれて。

『カズマくん、イロハのこと好きかしら?』

『うんっ。すき』

『ふふふ、ありがとう。カズマくんみたいな同い年の優しい子がいてくれて良かった。
カズマくん、これからもイロハのことよろしくね?』

『うん!』

『この子は女の子だから、俺が守らなきゃいけないんだ』という、よくある謎の使命感が生まれてた。


ーーけど、


「小学生に上がってから、俺たちの世界は一気に崩れたんだ」



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あきらめきれない恋をした

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:20

婚約破棄されたと思ったら伯爵夫人になっていました。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1,381

グレイティニンゲン牧場へようこそ!

BL / 完結 24h.ポイント:156pt お気に入り:117

黒猫と異世界転移を楽しもう!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:1,074

【完結】聖アベニール学園

BL / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:354

【完結】廃嫡された王太子は沼にハマったようです

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:263

逃げても絶対に連れ戻すから

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:75

牧場でイケメンマッチョと乳搾り‼︎

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:70

悠久の機甲歩兵

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:370pt お気に入り:34

処理中です...