ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
377 / 536
中編: イロハ編

sideアキ: 帰ってこない

しおりを挟む





「ねぇ、カズマ。イロハ大丈夫かな……」


3学期が始まった冬の学園。
「ちょっと家に呼ばれたから行ってくるね!」と元気よく教室を出ていったきり、もう1週間も帰ってきてない。

(イロハ…)

「アキ、やっぱり僕たちも一緒に行った方が良かったかな……」

「そ、かもなハル…」

もし…もし前回小鳥遊屋敷に乗り込んだ時のイロハの行いを問いただす為、連れ戻されたのだとしたら。

ーーそれは、確実にこちらが悪い。


「っ、カズマ…やっぱり俺たち」

「いや、その考えはないと思う。仮にそうだとしても、それをきっかけにあいつは前に進もうとしている。だからそんな顔するな。イロハが悲しむ」

カズマの優しい手が、そっと俺たちの頭に添えられる。


「大丈夫だ。
あいつも、2人と会ってから強くなった」


「「ーーっ、」」



『ハル!アキ!おはよー!!』

『え、ねぇ今の授業全然わかんなかったんだけどどうしよう…』

『終わった!うわー食堂行こ!』

『大丈夫っ? 無理してない?』

『じゃーん!お菓子作ったんだよ!食べて食べて!!』


(……ねぇイロハ)

この学園に俺として通いはじめて、まだ少ししか経ってない。
けど、もう既に溶け込めてる。

それはさ、勿論レイヤや月森先輩や先生方のフォローもあるけど。
でも、1番はイロハのお陰なんだよ?

何処にいても隣で元気に笑ってくれたから、それにつられて俺も笑っちゃって、周りの目なんか…どうでも良くなるくらい楽しくて……

気がついたら、クラスにも学園にも溶け込めてた。


『アキっ!』


(イロハ……)

俺さ、イロハがいないとやっぱり寂しいよ。
何か寒いんだ、本当。


でも、


(カズマが1番心配してる…よな)

ここ最近、遠くを見ていることが多くなった。
きっと俺たちよりずっと心配してるんだと思う。
でも、それを全く顔に出さずに…寧ろ俺たちの事を安心させようと笑ってくれて……

「っ、」

ねぇ、イロハ。泣いてない?
痛い事されてない?遠くに行ってない?

ちゃんと戻って…くるよね……?


「~~っ、カズマ…やっぱり俺」



Prrrrrrrr…Prrrrrrrr……!!



「っ!」


「「え……?」」


クラス中に突如響いた、その音は

これまで一緒に過ごしてきて一度も鳴ることが無かった


カズマの、携帯電話だったーー





しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】25人の妖精〜第十九章〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

聖女のひ孫~婚約破棄されたのなら自由に生きます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:108

弱小国の王太子に転生したから死ぬ気で国を生き残させる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:16

single tear drop

BL / 連載中 24h.ポイント:689pt お気に入り:463

もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:312pt お気に入り:382

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,675pt お気に入り:502

久遠の海へ 再び陽が昇るとき

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

セブンスワールド〜少年、世界を知る〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

処理中です...