ハルとアキ

花町 シュガー

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未来へ編

sideアキ: クリスマスプレゼントは 1

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(わぁ、雪だ……)


黒い空から白いものがパラパラ降ってて、正にホワイトクリスマス。


(ってか食べすぎた…お腹重すぎ)

『今日はクリスマスなんだからパーティーよ!
さぁ!!召し上がれ!』

広いテーブルには美味しそうな料理が所狭しと並べられていて、マサトさんと一緒に「わぁっ!!」と声を上げて。
月森さんも「今回は」と一緒に席についてくれて、みんなで乾杯した。

何食べても美味しいんだもん…本当トウコさん凄すぎ。俺一生頭あがんないんじゃ……
ってか、

窓から外を見ながら「はぁぁ…」とため息を吐く。

(クリスマスプレゼント、次の日完成でもよかったな)

正直、学園でのクリスマスパーティーの事を忘れてた。
みんな今頃参加してるんだし、ここへ訪ねてくるのは良くて明日なはず。

「あーぁ、馬鹿だったなぁ」

〝プレゼントを渡す〟という事が初めてで、緊張と期待でワクワクしてしまって本当に頭から抜けてた。

みんな、何してるんだろう……
楽しそうにご飯食べてるのかな?
吹奏楽部とか聖歌隊のステージを楽しんでる?
それとも、もうプレゼントの交換なんてしてるのだろうか?

(あれ?ってことは……)

俺のプレゼント、要らないんじゃ…

だって渡すの次の日になっちゃうし、きっとみんないっぱいプレゼント貰ってるだろうし。
大体、こんなお金のかかってないもの受け取ってくれるのかな……

(やば、どうしよう)

一生懸命編んだのに一気に価値の無いもののように見えてきて、だんだん渡すのが怖くなってくる。

(いっぱい貰ってるのに更にあげるって迷惑でしかないよな…しかも次の日とか、「遅い」って思われてもしょうがないし……)

でも…でもお礼がしたくてひとつひとつ作った。だが、それで迷惑をかけてしまったら元も子もない。

(ははっ、プレゼントって)


ーー渡すの、こんなに怖いものなんだな。


驚いてくれるか喜んでくれるのか、それとも…嫌がられるのか。

(レイヤも、あの時こんな気持ちで俺にネックレスをくれたんだろうか)

嬉しくて思わず泣いてしまった俺に、確か安心したような表情をしてた気がする。

チャリ…と貰った翡翠の石を握る。


(レイヤに、逢いたいな)


『アキ』って呼んで、笑いながら抱きしめて欲しいな。


笑ってるレイヤの顔を想像しながら窓の縁に肘をつき、そっと目を閉じた。とーー



キキッ、


「……?」

(何か今、外から車の止まる音が…)


「って、え?」


見下ろた先。
ガチャッと車から降りてくる人影に、びっくりして慌ててドアの方へと向かった。







「アキっ、こんばんは!」

「ハル!?」

玄関まで行ったところでバタンッと目と前の扉が開いて、勢いよくハルが抱きついてくる。

「ぇ、ハル、なんで…」

どうして此処に?
だって生徒会の仕事でクリスマスパーティーの運営とか色々あったはず。

それなのに、一体…なぜ……?

「クスクス、いいからっ、その話は後で!
取り敢えず部屋行こアキ、服脱いで」

「へ? 」


「ーー交代しよっ!!」









「嘘…俺、またハルになるの……?」

「今日だけだよ。ふふふ、制服入るね」

がばっと問答無用で身ぐるみを剥がれて、あっという間に懐かしい服を着せられる。

「ほらっ、外に先生の車が待ってるから早く行っといで!」

「ハルは?」

「僕はもう楽しんだからいいのっ!」

「ご飯も食べたしプレゼントも貰ったしね」と抱えてきた大きな袋を指さされた。

「これ、勿論イロハたちからは僕用の物を貰ったけど大半は親衛隊の人たちとかクラスメイトからの物だから、後で半分こしようねアキ。
分かった?」

「っ、分かった」

前回の喧嘩で嫌という程教えられた事を思い出しながらコクンッと頷くと、「よろしい!」と笑われる。


「さぁ、行っておいでアキ。

みんなに渡したい物、あるんでしょう?」


「ーーっ、はは、やっぱりハルには敵わないや」


ちゃんと隠してたはずなのにな、何で知ってるの?






プレゼントの入った袋をしっかり持って、急ぎ足で再び玄関に向かって……

「2人とも待って!」

ふわり

「っ、え……?」

肩から掛けられたのは、柔らかくてとても暖かいもの。

「わっ、これ…」

見ると、ハルにも同じ物をトウコさんが掛けていた。

「いやぁ何とか間に合ったねぇ、良かった良かった」

「まったく…あなた方がのんびりされているからですよ」

「だってしょうがないじゃない。これは予定外よっ」

「「ぁ、あの…これ……」」

3人でわいわい言い合っていたのを、マサトさんが止める。

「私たちから、君たちにプレゼントだ」

それは、外出用の暖かいポンチョ。
俺のは焦げ茶色のような少し赤色が混ざってるような色で、ハルのは明るい茶色にピンク色が混ざってるような色。

ーーそう、まるで両親から貰ったテディベアのような。

「うんうん、やっぱりあなた達にはこれが似合うわっ」

「前回アキくんに貸した時凄く似合ってたから、参考にしたのよ」と笑うトウコさんを呆然と見つめる。

ただでさえこの色見つけるの大変だっただろうに…しかもめちゃくちゃ肌触りが良くて、一目で高い品物だと分かる。

(あれ、もしかしてこれオーダーメイド…とか……)

チラリとハルを見ると同じことを考えてたみたいで、ゴクッと喉が鳴った。

「あぁ、気にしなくて良いんだよ。私たちがあげたいものをあげたんだから」

「何もお気になさらずに。とてもお似合いです、ハル様、アキ様」

「「あ、ありがとう…ございます……!」」

「ふふっ、さぁアキくんは行ってらっしゃいな。風邪ひかないようにね」

「ハルくんは、アキくんを見送ったらリビングにおいで。温かい飲み物を準備するから少し話をしようか。学校での出来事とか、いろいろ聞かせてほしいなぁ」

「はいっ!」「勿論ですっ!」



3人に見送られながら玄関を出て、カチカチとライトで「こっちだ」と言ってる車に向かって……

(ぁ、そうだ)

ガサガサ袋を漁って、取り出したものをハルのポンチョの上から首に巻いてやる。

「わっ、これ」

「ハル、メリークリスマスっ」

ハルのために編んだ、マフラー。
桜の刺繍とかも入れて春らしく…ハルらしくしてみた。

「どうだろうか」と見つめると、驚いていた表情がだんだん可笑しそうに「ふふふ」と笑い始める。

「やっぱり、僕たち双子だよっ」

ハルが持っていた紙袋の中から取り出した物。


「アキ、メリークリスマス。

行ってらっしゃい」



ーーそれは、紅葉の刺繍が施された俺の為の手編みのマフラーだった。





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