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未来へ編
[未来へ編]sideハル: 僕は……
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[未来へ編]
『おーい、そっち準備いいか!?』
『オーケーいける!』
『こっちもだよー!!』
『よし、じゃあいくぞ!』
『『『せーのっ!!』』』
「っ、わぁ………!!」
12月
クリスマスパーティーの準備でバタバタしてる学園。
「年末の決算に向けて早めに動いておくぞ。6月みたいな失敗はしねぇ」というレイヤの一言で、今回生徒会は早めに決算締め切りへ向けて動いている。
(残すところは、もうクリスマスパーティーの資料だけだな)
受験が終わった先輩たちも仕事をしてくれるから、5人集まればどんどん業務が進んで行く。
6月は大変だったってアキが言ってたけど…まぁ2人でやったみたいだし、そりゃそうだね。
よく頑張ったね、アキ。
(それに、よくここまで関係を整えたよ)
バラバラだったのが信じられないくらいに、生徒会はみんな仲が良くて…
本当にいいメンバーだなぁって、思って……
今は、放課後。
クリスマスツリーの点灯確認の真っ最中だ。
体育館や学園の外に設置したモミの木に生徒がそれぞれ飾りつけして、一気に光を灯す。
パァァッと一瞬にして学園全体が明るくなって。
言葉が、出なくなって。
(凄い……)
こんな景色、見たことない。
煌びやかに光る様々な色のイルミネーションが、飾った飾り物に反射して、キラキラ輝いている。
(き、れい…)
まるでおとぎの国のよう。
生徒たちもみんな、笑い合いながらツリーを見上げていて。
ーー嗚呼、本当に
(どうして、ここいるのが僕なんだろう)
だってそうじゃん。
クラスも、生徒も、親衛隊も、先生方も、生徒会も、友人関係も、恋人だって全部全部アキが作り上げた…なのに。
どうして我が物顔のように、僕が居座ってるの……?
『〝気味が悪い〟って…言われたの?』
『そ、なんだよね……でも今は本当に大丈夫だから!』
〝気味が悪い〟
(どうして、アキばっかりが傷つくの?)
いつもいつも、傷つくのはアキの方。
僕は、平気でその上を歩いてる。
(本当に、最悪…)
母さんの件だってそうだ。
アキは「もういい」って言ってたけど、全然良くない。
もし僕の身体が弱くなかったら、きっと状況は変わってた。
僕が弱いばっかりに母さんは僕主体で物事を考えるようになって、結果アキをないがしろにしてしまった。
きっとアキと同じように元気だったら、母さんの見方は変わっていたはず。
それでも月森さんは「それぞれに個性があるからどの道悩まれていたでしょう」って言ってたけど、でも少なくともこんな未来にはならなかったはずだ。
それに、もし母さんがアキの個性を受け入れたなら?
傷つく方は、アキではなく僕になってたんじゃないのだろうか。
アキはきっと、もっと幸せに笑っていたんじゃないのだろうかーー
ポソッ
「あぁ、本当に」
これを言ったら、きっとアキは笑って否定してくる。
「こんな未来だったからこそ、俺は今こうしてレイヤと出会えてハルとも一緒に過ごせて幸せなんだよ」って。
レイヤには、本当に感謝しかない。
ハルとして生活してた中からアキを見つけだしてくれて、こうして大切にしてくれて…
(僕の所為で、たくさん悩んだね)
レイヤはハルの婚約者だからって、何度も何度も自分の気持ちに蓋をしてしまっていたね。
痛かったよねアキ。 本当にごめん。
帰ってきて僕の顔を見るたび、泣きそうな顔して笑って…儚すぎて消えてしまうのでないかと思うくらい、見ていて切なかった。
(ほんっと、僕って迷惑でしかない)
2人の邪魔をして、たくさん傷つけて…しまって……
(僕は、)
僕は、やっぱりーーーー
「おい、ハル」
ビクッ
「っ、レイヤ…」
視界にいきなりレイヤの顔が割り込んできた。
「お前……はぁぁ…」
ポンッ
「っ、なに…わっ!」
頭に手を置かれたかと思ったら、グシャグシャグシャッ!と一気に掻き回される。
「ハハッ、鳥の巣みてぇ」
「なっ、ちょ、やめてってば」
「ククククッ」
ひとしきり好きにされ、ゆっくり手が離れていった。
「もう……いきなり何なの?」
「辛気臭せぇ顔してたからな」
「だいぶマシになった」と頭を軽く叩かれ、ドキリと心臓が跳ねる。
「なぁ、笑っとけよ」
「っ、え…?」
「そんな顔されるために、アキはここまで頑張ったんじゃねぇぞ」
「ーーっ、」
顔を見て一瞬で何を考えてたのか、分かったのだろうか。
(ははっ、本当に…)
レイヤにも、怒られて当然だと思う。
「まんまと騙された」と。「お前の所為でアキと結ばれるのに時間がかかった、どうしてくれるんだ」と。
それなのに何も言わずに…変わらず僕のフォローをしてくれて。
(優しすぎるよ、2人とも)
アキもレイヤも…それ以外のみんなも。
優し過ぎて、本当に心が痛い。
「レイヤだってこの景色をアキに見せたいでしょ?」
「まぁそうだな…あいつの反応とか頭に浮かぶけど」
『わぁ……綺麗…!! レイヤ、凄いね!』
ほわぁぁ…っ!と目をキラキラさせてはしゃぐアキが、直ぐに想像できて。
「でもまぁ、来年もあるしな」
「ぇ?」
「お前も一緒の方が、アキが喜ぶ」
「っ、」
ニヤリと笑われて苦笑する。
(そっか、そうだね)
レイヤは、アキの事を1番に考えてるもんね。
「ねぇ、勿論クリスマスプレゼント考えてるんだよね?」
「当たり前だ」
「幸せに、してあげてよね」
今まで辛い思いをさせてしまった分。
心から…めいいっぱい笑って欲しいから。
「お前も、クリスマス楽しめよ」
「うんっ、当たり前」
ドス黒いドロドロとしたものは、心の何処かへまた隠れてしまって。
今はただ、綺麗に輝く夢みたいな景色を
2人で眺めていたーー
『おーい、そっち準備いいか!?』
『オーケーいける!』
『こっちもだよー!!』
『よし、じゃあいくぞ!』
『『『せーのっ!!』』』
「っ、わぁ………!!」
12月
クリスマスパーティーの準備でバタバタしてる学園。
「年末の決算に向けて早めに動いておくぞ。6月みたいな失敗はしねぇ」というレイヤの一言で、今回生徒会は早めに決算締め切りへ向けて動いている。
(残すところは、もうクリスマスパーティーの資料だけだな)
受験が終わった先輩たちも仕事をしてくれるから、5人集まればどんどん業務が進んで行く。
6月は大変だったってアキが言ってたけど…まぁ2人でやったみたいだし、そりゃそうだね。
よく頑張ったね、アキ。
(それに、よくここまで関係を整えたよ)
バラバラだったのが信じられないくらいに、生徒会はみんな仲が良くて…
本当にいいメンバーだなぁって、思って……
今は、放課後。
クリスマスツリーの点灯確認の真っ最中だ。
体育館や学園の外に設置したモミの木に生徒がそれぞれ飾りつけして、一気に光を灯す。
パァァッと一瞬にして学園全体が明るくなって。
言葉が、出なくなって。
(凄い……)
こんな景色、見たことない。
煌びやかに光る様々な色のイルミネーションが、飾った飾り物に反射して、キラキラ輝いている。
(き、れい…)
まるでおとぎの国のよう。
生徒たちもみんな、笑い合いながらツリーを見上げていて。
ーー嗚呼、本当に
(どうして、ここいるのが僕なんだろう)
だってそうじゃん。
クラスも、生徒も、親衛隊も、先生方も、生徒会も、友人関係も、恋人だって全部全部アキが作り上げた…なのに。
どうして我が物顔のように、僕が居座ってるの……?
『〝気味が悪い〟って…言われたの?』
『そ、なんだよね……でも今は本当に大丈夫だから!』
〝気味が悪い〟
(どうして、アキばっかりが傷つくの?)
いつもいつも、傷つくのはアキの方。
僕は、平気でその上を歩いてる。
(本当に、最悪…)
母さんの件だってそうだ。
アキは「もういい」って言ってたけど、全然良くない。
もし僕の身体が弱くなかったら、きっと状況は変わってた。
僕が弱いばっかりに母さんは僕主体で物事を考えるようになって、結果アキをないがしろにしてしまった。
きっとアキと同じように元気だったら、母さんの見方は変わっていたはず。
それでも月森さんは「それぞれに個性があるからどの道悩まれていたでしょう」って言ってたけど、でも少なくともこんな未来にはならなかったはずだ。
それに、もし母さんがアキの個性を受け入れたなら?
傷つく方は、アキではなく僕になってたんじゃないのだろうか。
アキはきっと、もっと幸せに笑っていたんじゃないのだろうかーー
ポソッ
「あぁ、本当に」
これを言ったら、きっとアキは笑って否定してくる。
「こんな未来だったからこそ、俺は今こうしてレイヤと出会えてハルとも一緒に過ごせて幸せなんだよ」って。
レイヤには、本当に感謝しかない。
ハルとして生活してた中からアキを見つけだしてくれて、こうして大切にしてくれて…
(僕の所為で、たくさん悩んだね)
レイヤはハルの婚約者だからって、何度も何度も自分の気持ちに蓋をしてしまっていたね。
痛かったよねアキ。 本当にごめん。
帰ってきて僕の顔を見るたび、泣きそうな顔して笑って…儚すぎて消えてしまうのでないかと思うくらい、見ていて切なかった。
(ほんっと、僕って迷惑でしかない)
2人の邪魔をして、たくさん傷つけて…しまって……
(僕は、)
僕は、やっぱりーーーー
「おい、ハル」
ビクッ
「っ、レイヤ…」
視界にいきなりレイヤの顔が割り込んできた。
「お前……はぁぁ…」
ポンッ
「っ、なに…わっ!」
頭に手を置かれたかと思ったら、グシャグシャグシャッ!と一気に掻き回される。
「ハハッ、鳥の巣みてぇ」
「なっ、ちょ、やめてってば」
「ククククッ」
ひとしきり好きにされ、ゆっくり手が離れていった。
「もう……いきなり何なの?」
「辛気臭せぇ顔してたからな」
「だいぶマシになった」と頭を軽く叩かれ、ドキリと心臓が跳ねる。
「なぁ、笑っとけよ」
「っ、え…?」
「そんな顔されるために、アキはここまで頑張ったんじゃねぇぞ」
「ーーっ、」
顔を見て一瞬で何を考えてたのか、分かったのだろうか。
(ははっ、本当に…)
レイヤにも、怒られて当然だと思う。
「まんまと騙された」と。「お前の所為でアキと結ばれるのに時間がかかった、どうしてくれるんだ」と。
それなのに何も言わずに…変わらず僕のフォローをしてくれて。
(優しすぎるよ、2人とも)
アキもレイヤも…それ以外のみんなも。
優し過ぎて、本当に心が痛い。
「レイヤだってこの景色をアキに見せたいでしょ?」
「まぁそうだな…あいつの反応とか頭に浮かぶけど」
『わぁ……綺麗…!! レイヤ、凄いね!』
ほわぁぁ…っ!と目をキラキラさせてはしゃぐアキが、直ぐに想像できて。
「でもまぁ、来年もあるしな」
「ぇ?」
「お前も一緒の方が、アキが喜ぶ」
「っ、」
ニヤリと笑われて苦笑する。
(そっか、そうだね)
レイヤは、アキの事を1番に考えてるもんね。
「ねぇ、勿論クリスマスプレゼント考えてるんだよね?」
「当たり前だ」
「幸せに、してあげてよね」
今まで辛い思いをさせてしまった分。
心から…めいいっぱい笑って欲しいから。
「お前も、クリスマス楽しめよ」
「うんっ、当たり前」
ドス黒いドロドロとしたものは、心の何処かへまた隠れてしまって。
今はただ、綺麗に輝く夢みたいな景色を
2人で眺めていたーー
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