ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
353 / 536
おかえり編

sideアキ: クリスマス

しおりを挟む








(クリスマス、かぁ………)

テレビに映ってる賑やかな街の様子やインタビューされている人たちの映像を、ぼうっと眺めた。

今日はマサトさんと月森さんも家で仕事をするらしく、書類を持ちながらリビングでつくろいでいて。
トウコさんは床で洗濯物を畳んでいる。

家事手伝いたいって言ったら、絶対ダメって言われちゃったんだよね……
「お世話になってるんだからせめて何かやらせてください」と言うと、「貴方は子どもなんだし学生なんだから、今のうちにゆっくりしてなさいな!確かにお手伝いは大切だけれど、貴方にはさせないわっ」と笑いながら断られてしまった。

(でも、俺やる事ないし……)

あれから梅谷先生が宿題を持って来てくれたけど、嬉しくて一気に終わらせてしまった所為で暇で暇で…計画的に少しずつやれば良かった……

今も、何もせずにただテレビを観てるだけ。
リラックスは…出来てると思うけど。

前とは比べ物にならないくらいゆったりと時間が流れてて、自分でもびっくりしてる。

でも、凄く心地いい。


『あらあら彼女さんですか!? クリスマスプレゼントはどうするんですか~?』

『えぇー秘密です!』

楽しそうにマイクへ話す女の人。

(クリスマスプレゼント……)

そっか、クリスマスってプレゼントあげたりするんだったっけ。

ハルは、毎年俺と均等に分けれるようなプレゼントばかりを両親にお願いしていて。
貰ってからそれを俺に分けてくれた。
お菓子とか一緒に遊べるおもちゃとか…他にもいろいろあったな。

いつも申し訳ないと思いながら、その気遣いがとても嬉しくて。
他にももっと欲しいもの沢山あっただろうに、俺のことを1番に考えてくれて。
本当…世界一の兄だ。今年は是非、自分だけのクリスマスにしてほしい。
もう俺とは離れちゃってるんだし、イロハ達きっとハルにプレゼント考えてくれてるだろうし。

今まで迷惑かけちゃってた分、もう俺のことは考えずに心からクリスマスを楽しんでほしいなぁ……


「ねぇアキくん」


「? なんでしょうか?」


「クリスマスプレゼントは、何が良いだろうか?」


「へ?」


マサトさんが、書類から顔を上げて笑いかけてくる。

「アキくんは何が欲しいかな?」

「え、俺……?」

「ふふふ、君だよ。君も私たちの大切な息子だからね」

息子って…まぁ確かに書類上ではそうだろうけど、でも、


「俺、いりません」


俺はいいかな。
そもそも貰ったことないし、俺の事は考えて貰わなくていい。
それよりもレイヤやハルにあげて欲しい。

「あの、遠慮とかそういうんじゃなくて、本当に」

此処に居させてもらってるだけで十分、だから。


「うーん、アキくん。それは違うなぁ」


「ぇ?」


「私たちはね、私たちの我儘で君にあげたいんだよ」


「わが、まま……?」


クスリと微笑まれる。

「そう。私たちの勝手な押し付けだから、君は何も思う事なくただ受け取ればいいんだ。要らなかったら捨てればいいしね。
まぁでも、どうせだったら喜ぶ顔が見たいじゃないかい? だから欲しいものを聞いたんだけど…」

「でも俺、本当にいらなくて……その分をハルに」

「それは駄目ね」

トウコさんが、洗濯物を畳む手を止めた。

「貴方たちは双子だわ。双子でなくとも、私たちは貴方たちを平等に扱うわよ。片方だけにあげるのは私たちの中ではNGなの。
だから、アキくんにもハルくんにもあげるわね」

「そ、そんな…」

普通はそれが当たり前だろうけど、でも本当に気を使ってもらわなくていいからーー

「アキ様」

「っ、はい、」

「ここは、お受け取りください」

「ぇ?」

無表情でやり取りを聞いてた月森さんが、目を細め笑っていた。

「我々大人が、渡したいと駄々をこねているだけなのです。気を遣っている等、余計な詮索はせずとも良い」

「ーーっ、」

「貴方は素直に、ただそれを受け入れればいい。私たちがしてあげたいだけなのですよ。
どうか、了承してはいただけないでしょうか?」

(りょう…しょう……)

俺も、プレゼントなんてもの貰っても…良いのだろうか。

「アキくん」

いつの間にか隣にトウコさんが座っていて、ぎゅっと手を握られる。


「あげても、いいかしら?」


「………っ、はぃ、ありがとうございます」


そんな目で見られたら、断るなんて無理すぎる。

やっぱり、龍ヶ崎は強引で優しいな…
流石レイヤの家だ。

「やったわ!」とトウコさんに抱きつかれ、慌てて受け止める。

「あぁ母さんずるいぞ!私も抱きつきたいアキくん!」

「社長はおやめ下さい」「あなたは駄目よ」

「えぇー少しくらいいいじゃないか!!」

「っ、あははっ」

「さぁアキくん。アキくんは何が欲しいのかしら?特に無いのなら私たちのお任せコースにするわよ?」

(俺の、欲しい…もの……)

本当に、何でもいいの………?

みんなの顔を確認しながら、おずおず口を開く。


「あ、あの、欲しいものは本当に無いんですが…でも、その……

出来れば、ハルとお揃いのものがいいなぁ…なん、て」


双子だけど、お揃いのものは今のところクマのぬいぐるみのみで。
十分嬉しいんだけど、でももし…また何か貰えるのならば、今度もまたハルとお揃いの物がいいと思う。

「まぁっ!任せてちょうだい!!」

「お揃いのものかぁー!うんうんいいね。そうしよう」

「お手伝いいたします」

そうと決まれば即行動!と言うように3人が一斉に動き出す。


(……そう言えば)

俺、レイヤと恋人同士なんだし…もしかしたらレイヤからも貰えたりするのだろうか?

前に貰ったこのネックレスのお礼もまだなのに、これ以上貰っちゃったら俺駄目になりそう。
何か返さなきゃ。

後は、イロハたちや先輩・先生方にもお礼がしたいな。
俺のこと助けてくれたのに、まだ何もお礼をしていない。

……俺も、みんなにクリスマスプレゼント…あげたい。


「っ、でも」

「? どうしたんだいアキくん?」

「何かあったかしら?」

「ぁ、その…俺もみんなにプレゼントあげたいなと思って、でもお金が……」

プレゼントを買うお金なんか、持ってるわけが無い。

「んん、一応アキくんとハルくんをうちで預かるにあたって、小鳥遊からある程度の金額は渡されたが…」

「それは使っちゃ駄目です」

それは、俺のお金じゃない。

「そうだよね。うーんそうだなぁ……」

マサトさんと月森さんも一緒になって考えてくれる。


「あら、これだからお金持ちは駄目なのよ」


「? 母さん?」「奥様?」


「ふふふ、アキくん」


「…? はい、トウコさん」



「物が買えないなら、作ればいいのよっ」



「作る……?」


(作るって、一体なにを)


〝?〟を頭に浮かべる俺にニコリと笑って。



「大丈夫っ、私に任せなさい!!」




楽しそうにぎゅっと抱きしめられたーー






[おかえり編]-end-

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

同室のイケメンに毎晩オカズにされる件

おみなしづき
BL
 オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?  それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎  毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。  段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです! ※がっつりR18です。予告はありません。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

運命と運命の人【完結】

なこ
BL
ユアンには10歳のときに結ばれた婚約者がいる。政略でも婚約者とは互いに心を通わせ、3日後には婚姻の儀を控えていた。 しかし運命と出会ってしまった婚約者はそれに抗うこともできず、呆然とするユアンを前にその相手と番ってしまう。 傷ついたユアン、運命の番たち、その周りにいる人々の苦悩や再生の物語。 『孕み子』という設定のもとに書かれております。孕み子と呼ばれる男の子たちは、子どもを産むことができる、という、それぐらいの、ゆる~い設定です。 3章ぐらいまでは、文字数が少ないので、さくさく読めるかと思います。 R18シーンありますが、下手くそです。 長い話しになりそうなので、気長にお付き合いいただける方にお楽しみ頂ければと思います(◞‿◟) *R18の回にRつけました。気になる方はお避け下さい。そんなに激しいものではありませんが…

処理中です...