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おかえり編
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しおりを挟む「………ほ、んと……に…?」
「あぁ、本当だ。
まぁ婚約者な時点でもう結婚前提なんだがな」
楽しそうにクツクツ笑うのを、呆然と見つめる。
「で、お前は?」
「ぇ…?」
「俺の告白の、返事」
「ぁ、ぇっと、ぁの……!」
言いたいことがいっぱいありすぎて、何から言えばいいのか…わからなくて。
でも、それらを全部通り越して、ポロリとひと言、言葉が漏れた。
「ーーっれも…
俺も、レイヤのことが、好き……ですっ」
「あぁ、知ってる」
「っ! ……っ、レイヤぁ」
ボロッと涙が溢れてきて目の前の体に抱きつくと、すぐにぎゅぅっと抱きしめ返してくれた。
「はぁぁぁ…ったくお前は。なに不安になってんだよ」
「だ、だって…」
「そんなに俺のことが信じれねぇのか?」
「違う!」
「大体な、好きでもねぇ奴の為にわざわざあんな場所まで迎えに行くかよ。ネックレスも渡して、深夜に病室尋ねたりして…この俺が一体誰にそんなことすんだ」
「……俺、だけ………?」
「あぁ、お前だけだ。アキ」
「っ、」
(俺、だけ……)
嬉しくて嬉しくて、更にぎゅうぎゅう抱きついてしまう。
「ハルじゃなくて、俺で…いい……?」
「お前〝で〟じゃない、お前〝が〟いいんだ。
お前のことをハルと思ってたからな……
俺は、ずっとお前に『好き』だと言い続けてたんだぜ」
「ーーっ、俺のこと〝嘘つき〟って、怒らないのか?」
「嘘か……ハルと名乗っていた事はしょうがなかっただろ。お前にとっても不可抗力だ。別にそれを悪いと思っちゃいねぇ」
「俺のこと、〝気味悪い〟って…言わない?」
「…………はぁ?」
ガバッ!と抱きついてた体を引き剥がされる。
「おい、なんだそれは。お前のどこが気味悪りぃんだ。んなこと誰に言われた」
「ぁ、ぇ……と」
「あの学校の奴らか?」
「ちがっ!」
「なら、一緒に住んでた奴らか?」
「……っ、ぁの」
「…………へぇ」
「やっぱこっち帰ってくる前に一回寄ってくべきだったなぁ。別にこれからでも遅くはねぇか」と言い始めるレイヤにギョッとする。
「い、いい!もういいからっ!」
「あぁ? 何でだよ、お前その言葉覚えてんじゃねぇか。ここで出てきたって事は、まだ心に刺さってんだろうが」
「っ、」
確かに、あの言葉は痛かった。
夢を見るくらい……本当に。
でも、
「それでも、もう…いいから。
だから、もう離さないで………」
「っ、たくお前は……」
両手を広げると、再びぎゅぅっと抱きしめてくれた。
「いいか、よく聞け。俺は絶対お前にそんなこと思わねぇ、絶対にだ。学園に帰ったあいつらもきっとそうだ」
「っ、うん」
「お前の過去は、もう全部聞いた。だからと言って別に離れてはいかねぇし離す気もない。
お前はお前だ、アキ」
「おれは、おれ…」
「だからもう辛いことを溜め込むな。これからは全部吐き出せ、俺が受け止める。雷も少しずつ慣れていけばいい。まぁ無理なら無理でも別にいいけどな。
そして吐き出した分だけ、そこに〝幸せ〟を溜めていけばいい」
「しあ、わせ……を?」
「あぁ、そうだ。
これから、俺たちはいろんなところに行く。海や山や、満天の星空や満開や花々や、映画館に水族館に…勿論夏祭りもだ。そして、そこで見たものや感じたものを全部、お前の中に溜め込んでいけ」
(見たものや感じたものを、全部……)
「そんなことしたら、一杯になって直ぐ溢れるよ…っ」
「それでいい。
溢れたら、その時はまた溢れた分を話せ。俺が受け取るから」
(ーーっ、あぁ)
こんな時、何て言えばいいんだろう?
胸が…感情がいっぱいいっぱいで、もうどうしようもない。
「なぁ、アキ」
コツンと、レイヤのおでこが俺のおでこに当たる。
「お前が、まだお前であることに慣れないのは分かる」
「っ、」
「俺に対しても、まだ現実に追いつけなくて戸惑ってるのは分かってる。でも、それでいい。
ゆっくりでいいから、ハルだった時お前が心の中で俺に話しかけてたみたいに、話してくれ」
「ぇ、」
「だから敬語も勿論いらねぇ。ってかお前には似合わねぇしな。実は案外口悪ぃだろお前」
「っ、な!」
「クククッ、分かりやすいんだよ。もうお前が何考えてるか、俺には手に取るように分かるぞ」
ニヤリと直ぐそこで笑われて、ぶわっと一気に体温が上がる。
「アキ」
「な、なに」
「俺は、お前の過去も全てひっくるめてお前を愛しいと思う。俺の心や感情は、全部お前がくれたんだ。
ーーだから」
「わっ」
再びボスッとベッドに倒された。
「不安があるのは分かる。
お前は初めての事だし、後夜祭の時は最後までしなかったしな。
でも、もう俺も遠慮すんのは辞めたんだよ」
「ぇ……?」
「あの時はお前の体を気遣って抱くのを辞めた。俺が〝秋〟って呼んだ時も、俺はお前に涙の意味を聞くのを辞めた。
そしたら、お前は何処かへ行ってしまった。
本当に……死ぬ程後悔したんだ」
「っ、レイ……」
「だから、もう悪りぃが強引にいかせてもらう」
再び、体をゆっくり押し倒される。
「っ、レイヤ、まだ俺…お風呂とか……」
「あーそういうのも全部却下。別に風呂とかどうでもいい。
ーーーーお前はもう黙って、俺に愛されろ。アキ」
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