ハルとアキ

花町 シュガー

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リクエスト番外編 1

その6: 月森先輩の日常の話

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◯リクエスト
月森先輩視点で、日常を
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※夏休み明けくらいの時間線です。



【side ミナト】


私の日常は、先ずハル様の本日のスケジュール確認から始まる。

(今日は体育があるのでハル様はこの時間は生徒会室……他は、特に予定なしか)

「よし」と立ち上がって、今日はハル様より早く登校しようと準備にかかった。



「お早うございます、龍ヶ崎」

「おう」

教室に着いて、窓辺にいる龍ヶ崎に声をかける。

「ハル様は見えますか?」

「まだだな」

机に鞄を置き整理して、同じくその隣に並び窓の外を眺めた。

チラリと横を見ると、ボーッと登校してくる生徒を眺めている生徒会長の姿があって……
その目が、突如キラリと光り始める。

視線の先には、案の定丸雛くんたちと楽しそうに登校してくるハル様の姿があった。

(クスッ。まったく、本当に分かりやすくなったものだ)

何ヶ月か前とは大違い。
変わったなと、思う。それもかなりいい方向に。
面白い人間になったものだ。

「2人とも、おはよう!」「お、おはようございますっ」

「お早うございます」

「あぁ」

クラスメイトたちの声かけにも、一言くらいだがちゃんと返事をするようになった。

(初めて返事をした時は、皆んな目を見開いて驚いていたな。「明日何かあるんじゃ……」と心配しだす人もいた)

この龍ヶ崎レイヤをこれほどまでに変えたのは、ハル様への愛なのだろう。

優しくなったし、ちゃんとその人その人の内側を見るようになった。
前の外見だけ見ていた時に比べれば、大きな変化だ。

ハル様と龍ヶ崎は、まだ付き合わないのか?
龍ヶ崎の方はすでに動いているようだ…ということは、「待った」をかけているのは恐らくハル様の方。

(クスクスッ。願わくば、もう少しだけこの状態の龍ヶ崎を見ていたいですねぇ)

この整った顔が試行錯誤するのを見るのは、とても面白い。
でも、ハル様もお早めにご自身の心に素直になられてくださいね。

夏休み明けのハル様を一目見て、その心の変化に気づいた。
恐らく私たちがそれぞれの実家へ帰り龍ヶ崎と2人きりで過ごした期間に、何かがあったのだろう。
まぁ、それは聞かないでおきますがね。

わいわいと賑やかそうに会話して笑っているハル様を、2人で見つめる。

我々がハル様と登下校をたまにしか共にしないのは、友人との時間を大切にしてほしいからだ。
私や龍ヶ崎が一緒だとどうしても気を使われてしまう。
だから、それを考慮して私も龍ヶ崎も時々しか一緒にしていない。

(あぁ、本当丸くなったものだ、龍ヶ崎)

ハル様を目に入れても痛くないんだろうなぁ、きっと。
まぁその点は私も同じだが。

ハル様が校舎の中へ入って行くのを確認し、そっと窓辺から離れた。





お昼は隊の者と共にするか、ひとりでとるか。

本日は隊の者たちと一緒に食堂で。
今後の動きや現状何か困っていることはないかのヒアリング、それからハル様の話等、その時その時で話すことは様々だ。

(今のところは、特に大丈夫そうですね)

「変な波音が聞こえたら直ぐに教えてください」と釘を刺して、また教室へ戻った。






「あっ、月森先輩だー!」

「こんにちはっ、先輩」

「こんにちは」

「丸雛くん、ハル様、矢野元くん、こんにちは。これから帰りですか?」

放課後、ばったりと下校するハル様たちに出くわした。

「そうなんです。先輩もですか?」

「いえ、私はもう少々校舎へ残ります」

「わぁ!そうだったんですねー!」

「また下校時間が被った時は一緒に帰りましょうねっ」

「えぇ、勿論。皆さん気をつけてお帰りくださいね」

「はい」

ハル様たちが見えなくなるまで見送って、用のある空き教室へと足を運んだ。


ガラッ

「遅くなりまして申し訳ありません」

「いいえ!お疲れ様です先輩!!」

待っていたのはタイラと親衛隊の幹部たち。
用意されていた椅子に座り、鞄から親衛隊の名簿ファイルを取り出した。

「それでは、始めましょうか」

「「「よろしくお願いします」」」

もうすぐ、次のお茶会が開かれる。
その為にくじの結果やどんなメニューで楽しむか等を、いつもこうやって事前に決めている。

「今回のくじの結果はこうなりました。次の参加はCグループですので、全てを合わせると75人弱程ですね」

「成る程…それでしたらビュッフェ形式はいかがでしょうか? いつもウェイターに運んでもらってますが、たまには好きなものをみんなで取りに行くのもいいかと……」

「そうですね。Cグループは人数が1番多いですからね。今回はそういった形でもいいかもしれません」

「今は夏なので、ひんやりするデザートが欲しいです!シャーベットとかゼリーとか……」

「ふむ、何種類にしましょうか?」

「最低でも20種類は欲しいです。75人で一気に取ることを考えると、品数は多いほうがいいんじゃないでしょうか……?」

「僕はーー」

どんどんでてくる意見を、タイラが素早く黒板にまとめていく。

そうしてどんどん次のお茶会の方針が決まり、解散となった。





自室に帰って、改めて先ほど決まった案に抜け目がないかを綿密にチェックする。

お茶会は隊の皆んなに楽しんで貰えたらそれでで十分だが、何よりもハル様自身に楽しんでいただかなくては納得がいかない。

(もっと楽しい時間にするためには、どうすればいいのだろう……)


考え耽っていたら、もう夕飯の時間。

私の同室者はとても優しい人で、いつもの時間に私がリビングへ来なかったら作り置きをしてくれている。

(全く、つくづく運がいいな、私は)

同室者にも恵まれ、主人にも恵まれ、友人なのかよくわらない人物の変化を観察することにも夢中になれて。
これから、もっともっと面白いことが起こるのだろうか。

夏休みが開けた今、次に待っているのは文化祭だ。

(文化祭で2人に何かしらの変化があれば良いのだがな)

まぁ、そこは龍ヶ崎の腕の見せ所だろう。


ーーあぁ、これからの未来が楽しみで仕方ない。


(本当、ハル様に出会えてよかった)



これからも、しっかりと見つめ守っていきたいと

そう心に刻んで、その日を終えた。





fin.





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