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さよなら編
sideアキ: これからの話
しおりを挟む〝さよなら〟の、準備をしている。
いつその時が来ても いいように。
ピッ
ガチャッ
「お疲れ様です、レイヤ」
「あぁ。お疲れ、ハル」
いつも通りの体育の時間。
生徒会室には、やっぱりレイヤがいた。
文化祭が終わって忙しくなくなったのに、こうしてハルの体育に合わせて来てくれてるレイヤが微笑ましい。
いつも通り、生徒会長の席の隣にある自分の席に座って机の上に置かれてた書類に取り掛かった。
「ねぇレイヤ。次の行事って何ですか?」
書類に目を通しながら、ふと気になって聞いてみる。
「次はクリスマスだな。クリスマスパーティーだ」
「へぇぇ、ハロウィンはしないんですね」
「この学園は後夜祭がハロウィンみたいなもんだからな。学校では表立ってしねぇから生徒会も動くことはない。
まぁ、毎年個人個人でちょくちょくやってる奴らはいるらしいがな」
「そうなんですね」
(クリスマス、か……)
きっと、沢山のクリスマスケーキとクリスマスツリーが並ぶのだろうな。
プレゼントの交換なんてのもあるのだろうか。
(…ふふふ、楽しそうだ)
「ククッ、ハルは何か欲しいもんあんのか?」
「ぇ?」
「顔が笑ってる。クリスマスパーティーのこと考えてたんだろ? クリスマスプレゼント、何がいい?」
え、個別にくれるってこと?
(あ、そっか、婚約者同士だもんね)
「そう、ですね………」
(……それは)
「ーークスッ、秘密ですっ」
(これから、ハルに聞いてくださいね)
「はい、お願いします」
「ん」
書類を終わらせてチェックしてもらう。
「………問題ねぇな」
「有難うございますっ」
(やる事終わった…後10分くらいか。まぁ、いい時間帯かなぁ)
「ハル」
「はい? ーーわっ」
横から手が伸びていて、グイッと引っ張られる。
そのまま、倒れこむように座ってるレイヤの膝の上に乗せられた。
「ぇ、な、なにっ」
「あぁ? 何かねぇと触っちゃ駄目なのか?」
「いやっ、そんなわけじゃないけど……っ」
「クククッ、照れんな」
慌てる俺の頭を撫でて、おでこにチュッと軽いキスを贈られる。
「早くこの距離感に慣れろ、ハル」
「ーーっ、はぃ…っ」
「クククッ」
目の前で幸せそうに笑われて、キュッと胸が切なく鳴った。
「んー……」
「…ちょっと、なに触ってるんですか」
「ん? お前の体」
「なんで」
「いやぁ、相変わらず細ぇなぁって……」
「なっ!? こ、これでも大分前の体重に戻ってきてます!もうちょっとですもんっ」
「あーはいはい、そうだな」
「怒るな 怒るな」と苦笑される。
ハルといつ交代が来てもバレないように、今はとにかく食べて元の身体つきに戻ることに専念中で。
(くそぉ……これでもいっぱい食ってんだよ!)
ジドォ…っと睨み付けると、ふわりと抱きしめられた。
「はぁぁ……早く太れよハル」
「…そんな丸々にはなりませんよ」
「ははっ、別に丸々太っても良いんだぜ?どんなお前でも愛せる自信あるわ、俺」
「へ、」
「だって中身は一緒だろ? 変わんねぇよ」
「ーーっ」
(あぁ、もう……っ)
あの外見しか見なかったレイヤから、こんな声が聞けるようになるとは。
(ほんっと…腹立つくらいかっこいい……)
このやろう、どうしてくれるんだ。
胸が痛すぎて泣きそうになる。
「ん、」
「……? どうかしましたか?」
「いや、別に ………ちょっと動くなよ?」
「?」
首筋に顔を埋められてくすぐったい。
我慢して動かないでいると、埋められた部分にピリッとした痛みが走った。
「っ、」
(な、なに!?)
結構長く痛みが続いて、レイヤの顔が離れていくと同時にその痛みはなくなって…なんだかじんじんする感覚が残った。
「ん、もういいぞ」
「……何したんですかレイヤ」
「ん? 〝薄くなってた〟から、付け直し」
「は?」
(何が薄くなったんだ?)
顔を見ても、楽しそうにニヤリと笑われるだけで答えてくれそうな雰囲気ではない。
「ま、大したもんじゃねぇよ」
「……わかり…ました………」
「ククッ、そうむくれんな。 ほら」
「?」
「キスして、〝ハル〟」
「ーーっ」
(ははっ………ほんと)
ーーーーなんて、残酷な人なんだろう。
重ねた唇は、暖かくて。
(あーぁ、まだ授業中なのにな)
だんだん深くなっていくそれに、目を閉じて溺れたーー
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