ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
247 / 536
さよなら編

sideアキ: これからの話

しおりを挟む



〝さよなら〟の、準備をしている。

いつその時が来ても いいように。





ピッ

ガチャッ


「お疲れ様です、レイヤ」

「あぁ。お疲れ、ハル」

いつも通りの体育の時間。
生徒会室には、やっぱりレイヤがいた。

文化祭が終わって忙しくなくなったのに、こうしてハルの体育に合わせて来てくれてるレイヤが微笑ましい。

いつも通り、生徒会長の席の隣にある自分の席に座って机の上に置かれてた書類に取り掛かった。



「ねぇレイヤ。次の行事って何ですか?」

書類に目を通しながら、ふと気になって聞いてみる。

「次はクリスマスだな。クリスマスパーティーだ」

「へぇぇ、ハロウィンはしないんですね」

「この学園は後夜祭がハロウィンみたいなもんだからな。学校では表立ってしねぇから生徒会も動くことはない。
まぁ、毎年個人個人でちょくちょくやってる奴らはいるらしいがな」

「そうなんですね」

(クリスマス、か……)

きっと、沢山のクリスマスケーキとクリスマスツリーが並ぶのだろうな。
プレゼントの交換なんてのもあるのだろうか。

(…ふふふ、楽しそうだ)

「ククッ、ハルは何か欲しいもんあんのか?」

「ぇ?」

「顔が笑ってる。クリスマスパーティーのこと考えてたんだろ? クリスマスプレゼント、何がいい?」

え、個別にくれるってこと?

(あ、そっか、婚約者同士だもんね)

「そう、ですね………」


(……それは)


「ーークスッ、秘密ですっ」


(これから、ハルに聞いてくださいね)







「はい、お願いします」

「ん」

書類を終わらせてチェックしてもらう。

「………問題ねぇな」

「有難うございますっ」

(やる事終わった…後10分くらいか。まぁ、いい時間帯かなぁ)

「ハル」

「はい? ーーわっ」

横から手が伸びていて、グイッと引っ張られる。
そのまま、倒れこむように座ってるレイヤの膝の上に乗せられた。

「ぇ、な、なにっ」

「あぁ? 何かねぇと触っちゃ駄目なのか?」

「いやっ、そんなわけじゃないけど……っ」

「クククッ、照れんな」

慌てる俺の頭を撫でて、おでこにチュッと軽いキスを贈られる。

「早くこの距離感に慣れろ、ハル」

「ーーっ、はぃ…っ」

「クククッ」

目の前で幸せそうに笑われて、キュッと胸が切なく鳴った。

「んー……」

「…ちょっと、なに触ってるんですか」

「ん? お前の体」

「なんで」

「いやぁ、相変わらず細ぇなぁって……」

「なっ!? こ、これでも大分前の体重に戻ってきてます!もうちょっとですもんっ」

「あーはいはい、そうだな」

「怒るな 怒るな」と苦笑される。

ハルといつ交代が来てもバレないように、今はとにかく食べて元の身体つきに戻ることに専念中で。

(くそぉ……これでもいっぱい食ってんだよ!)

ジドォ…っと睨み付けると、ふわりと抱きしめられた。

「はぁぁ……早く太れよハル」

「…そんな丸々にはなりませんよ」

「ははっ、別に丸々太っても良いんだぜ?どんなお前でも愛せる自信あるわ、俺」

「へ、」

「だって中身は一緒だろ? 変わんねぇよ」

「ーーっ」

(あぁ、もう……っ)

あの外見しか見なかったレイヤから、こんな声が聞けるようになるとは。

(ほんっと…腹立つくらいかっこいい……)

このやろう、どうしてくれるんだ。
胸が痛すぎて泣きそうになる。


「ん、」


「……? どうかしましたか?」

「いや、別に ………ちょっと動くなよ?」

「?」

首筋に顔を埋められてくすぐったい。
我慢して動かないでいると、埋められた部分にピリッとした痛みが走った。

「っ、」

(な、なに!?)

結構長く痛みが続いて、レイヤの顔が離れていくと同時にその痛みはなくなって…なんだかじんじんする感覚が残った。

「ん、もういいぞ」

「……何したんですかレイヤ」

「ん? 〝薄くなってた〟から、付け直し」

「は?」

(何が薄くなったんだ?)

顔を見ても、楽しそうにニヤリと笑われるだけで答えてくれそうな雰囲気ではない。

「ま、大したもんじゃねぇよ」

「……わかり…ました………」

「ククッ、そうむくれんな。 ほら」

「?」

「キスして、〝ハル〟」

「ーーっ」

(ははっ………ほんと)


ーーーーなんて、残酷な人なんだろう。



重ねた唇は、暖かくて。

(あーぁ、まだ授業中なのにな)


だんだん深くなっていくそれに、目を閉じて溺れたーー








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

同室のイケメンに毎晩オカズにされる件

おみなしづき
BL
 オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?  それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎  毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。  段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです! ※がっつりR18です。予告はありません。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

運命と運命の人【完結】

なこ
BL
ユアンには10歳のときに結ばれた婚約者がいる。政略でも婚約者とは互いに心を通わせ、3日後には婚姻の儀を控えていた。 しかし運命と出会ってしまった婚約者はそれに抗うこともできず、呆然とするユアンを前にその相手と番ってしまう。 傷ついたユアン、運命の番たち、その周りにいる人々の苦悩や再生の物語。 『孕み子』という設定のもとに書かれております。孕み子と呼ばれる男の子たちは、子どもを産むことができる、という、それぐらいの、ゆる~い設定です。 3章ぐらいまでは、文字数が少ないので、さくさく読めるかと思います。 R18シーンありますが、下手くそです。 長い話しになりそうなので、気長にお付き合いいただける方にお楽しみ頂ければと思います(◞‿◟) *R18の回にRつけました。気になる方はお避け下さい。そんなに激しいものではありませんが…

処理中です...