ハルとアキ

花町 シュガー

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さよなら編

sideイロハ: おめでとうと、ありがとうと

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「おめでとうっ、ハル!!」

「えへへ、ありがとイロハっ。
先輩も、ありがとうございます」

「クスッ、いいえ。上手くいって良かったですハル様」

行事が終わって普段通りの日常が始まった放課後。
森の中のいつもの場所で、先輩とおれはハルを挟んで噴水の淵に座り報告を受けていた。

「じゃぁ、もうこれからは正式な婚約者同士なんだね」

「うん、そうなるね」

「わぁ…!なんか、感動する……っ!!」

「ぇ、感動するの?」

「するよ!
だってあの食堂の日から始まって、戦って戦って…よくやくここまで、きて…っ」

「えぇっ!? ちょ、イロハっ」

「うぇぇ……ハルぅぅぅ…!」

歓喜まわってぼろぼろ泣き始めるおれを、ハルは笑いながらぎゅぅっと抱きしめてくれた。

「もぉーイロハ落ち着いてっ」

「ハルぅ…っ、うぇぇハル、

よくっ、よく頑張ったねぇぇぇっ!」


「ーーっ、ん。ありがと……イロハっ」


ちょっとだけ、おれの涙がハルにも移ったみたい。


「落ち着いてー!」と背中をぽんぽんされながら、楽しそうに髪を掻き回されて。
おれも「お返しー!」とハルの髪の毛をわしゃわしゃにして。

そんなおれたちを、月森先輩は微笑ましそうに眺めていた。




「僕、正式にレイヤと婚約者同士になったけど…でも、前と変わらず一緒にいてくれる……?」

「何言ってんのハル。そんなの当たり前じゃん。」

(だって、何にも変わんないもん)

先輩の方へ目を向けると「その質問、月森の私にまで聞きますか?」っと苦笑されてた。

「あははっ、ごめんなさい…

でも、ちょっと不安になっちゃって……」

「ハル…」

ここで初めて会った時のように、ハルの右手をぎゅぅっと握る。
ハルと目が合って、優しく微笑んでみせた。

「何にも変わらないよ、ハル。初めてここで出会った時から…ずっとずっと、変わらない」

「イロ、ハ……」

「おれだけじゃなくて…カズマも、佐古くんも、みんなみんな同じだよ。ハルの側にずっといる」

「私もですよ、ハル様」

「先輩」

反対側のハルの左手を優しく握って、月森先輩もふわりと笑う。

「私やタイラも、ハル様のお側を離れません。
そしてハル様の親衛隊も、ハル様のことを決して嫌いになどなりませんよ。寧ろ、もっと人気が出るかと」

「ぇ?」

「どういうこと…?」と見つめても、先輩はクスクス楽しそうに笑うだけ。

「まぁ、それはおいおい分かりますよ」

「…? は、はぁ……」

「それより、そろそろ暗くなってまいりましたね。辺りも肌寒くなってきましたし…
お体に障る前に、寮へ帰りましょうか」

「はーい!」

パッと立ち上がって、先輩と一緒にハルの手を掴んだまま寮へ帰ろうと歩き出す。


「ーーぁ、あのっ」


「? どうしたのハル?」

「ハル様、どうかされましたか?」

おれと月森先輩で両脇から覗き込むと、俯いてたハルの顔がパッと直った。


「2人とも、本当にありがとうっ、

ーーーーこれからも、よろしくね……?」


「っ、もうハル!こっちこそ、これからもよろしくね!」

「クスクスッ。こちらこそ、これからもよろしくお願い致します、ハル様」

「ーーっ、ぅん」


「さっ!帰ろーよ!」と3人で寮までの道のりをわいわい歩いた。


それから、ロビーで帰りを待ってくれてたカズマと佐古くんとタイラちゃんに「おかえりなさい」と言われ

それに、何故かハルがまた涙ぐみ始めて

タイラちゃんが慌てて、ポケットから手品のように大量のハンカチを出してきて

それに佐古くんが絶妙なツッコミをいれて

みんなで、笑いあって

丁度ロビーを通った櫻さんと梅ちゃん先生にも笑われて


そんな、楽しそうな声が

ロビー全体に響き渡っていたーー






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