ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
236 / 536
文化祭編

sideアキ: 残酷な朝

しおりを挟む


暖かいものに包まれている感覚がする。

暖かくて、近寄るとふんわり抱きしめてくれて。

それが、凄く気持ちよくて。


ただただ……幸せでーーーー





「ん…ん………」

(いま何時……8時前………)

季節は秋ということもあって朝はいつもひんやりするのに、今日は全然寒くない。

(あれ? 俺…何してたっけ……)


「んん……」


「っ、」


頭上で声が聞こえて、ピシッと体が固まる。

そろりと顔を上げると、よく知ってる綺麗に整った顔がスースー寝息をたてていて。

(レ、イヤ……?)

あれ?
俺、何でレイヤと一緒に寝てるんだ……?


(!! そうかっ、昨日ーー)

後夜祭でレイヤに告白して、ベッドに運ばれて

それから……

『レ、ヤぁっ!ぁ、あぁっ…も、出ちゃっ!』

『いいぜ、ほら、イけよ』

『ひあぁぁっ!ぁ、~~~~っ!』


(お、俺っ、レイヤとあんなことを…!)

やば、勢いもあったとはいえ…俺凄い乱れてた……
何回くらい出したのかさえ、定かではない。
ってかめちゃくちゃドロドロにされた記憶しか………

(あぁぁぁ……どうしよ…は、恥ずかし……っ)

顔がぶわぁっと熱くなってきて、思わず両手をあてる。

正直、いつ寝たのかの記憶も曖昧で。
そんな事も覚えてないくらいに……

(気持ち良かった…んだよなぁ……っ)

ただただ嬉しくて、気持ち良かった。

自分から…く、咥えちゃったし……
レイヤも、気持ち良かっただろうか?

(そうだと……嬉しい、な………)

ってか、俺たちまだ裸じゃん。
でも体とか全然ベタベタしてない。
レイヤが、綺麗にしてくれたのか?

気遣いにキュッと胸がなって、思わず目の前の体にもっと擦り寄る。
その拍子に昨日貰ったネックレスのチェーンがチャリッと鳴って、それにもテンションが上がって。

(ふふふ、やばっ)

どうしよ、俺いま凄い幸せ。
レイヤのこと…本当に好きすぎる……

〝愛おしい〟って多分こういう時に使う言葉なんだと思う。


「ん……んん………?」

擦り寄ったのがくすぐったかったのか、レイヤが身動いだ。

「……あぁ何だ。起きてたのか」

「すいません、起こしちゃいましたね……」

「いや、いい」

抱きしめてくれてた腕にまた力が入って、それが嬉しくてまた「えへへ」と笑う。


「おはようございますっ、レイヤ」



「あぁ、おはよう。 




ーーー〝ハル〟」







(ーーーーぁ)





ビクリと、体が震えた。


レイヤは、裸という事もあって寒いのかと思ったらしく布団をかけ直してくれた、けど……ちがくて。


(あぁ、そうだった………)


俺は、〝ハル〟だ。


ーーもう…〝俺〟じゃない。


後夜祭は、終わってたんだった……
魔法のような時間は、とっくの昔に過ぎてた。

(ははっ。俺、バカだなぁ……っ)

そんな事にも気付かずさっきまではしゃいでたのが、恥ずかしい。

大体、昨日だって散々〝ハル〟って呼ばれてたじゃないか。
このネックレスだって、俺のものじゃない。
そんなの、ちゃんと分かりきってた…はずなのに……


ーーなにを 今更、傷ついている………?


でも、その魔法の代償は……幸せだった分、大きくて。

(胸が…い、たい……っ)

深くまでえぐられて、胸の奥が痛い。


固まってしまった俺を、レイヤが暖めるようにゆっくりと抱きしめ直した。

頭上に、コツンと顎が乗る感触がする。


「あぁ…幸せだ……ハル」


「っ、」


噛みしめるように、とろけるような口調で吐かれる

ーー残酷な言葉。


「これからは、ずっと一緒だからな」

「っ、はぃ……ずっと…い、しょにっ、いてくださぃ………」


声が、どうしようもなく震える。

どうか どうかこの震えは、感極まってのものだと。
幸せすぎて震えてしまっているのだと…そう思って欲しい。

(レイ、ヤ……っ)

こんなに近くにいるのに、貴方は俺のものじゃない。
そうしたのは、紛れもなく俺。

(俺っ、ちゃんと白い魔女に…なれたかなぁ……)

王子様とお姫様を、幸せに……できただろうか。

(~~~~っ)




「一生、大切にする」


「……一生大切に…してくださいっ」


(ハルのこと、大事にしてあげてね)


「この先何があっても、絶対ぇ離さないから」


「ぅん、離さないで……っ」


(凄く優しくて、本当にいい子なんだ)


「どんな時も、側にいて、支える」


(体調が優れない時もあるけど、どうか側にいて、手を握ってあげて)


「初めてのこともいっぱい知って、たくさん楽しんで……
2人でずっと笑い合っていけるように努力するから」


(初めてのことばかりだと思うけど、この大きな腕と優しい体温が隣に居れば…きっと きっと大丈夫だと思うから)


「だからーー」


(だからーー)





「幸せに、なろうな」





「~~~~っ、はぃ…っ、レイヤ……」




(どうかハルを、幸せに、してあげてください)




ーー嗚呼、胸が痛い。



顔を見られたくなくて、そっと目の前の胸板に体を寄せた。

その際にカチャリ…と、ネックレスのチェーンが鳴って

それが、何だか酷く悲しげで

聴きたくなくて、目を閉じて心を遮断したーー


















[文化祭編]-end-




しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...