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文化祭編
sideアキ: 残酷な朝
しおりを挟む暖かいものに包まれている感覚がする。
暖かくて、近寄るとふんわり抱きしめてくれて。
それが、凄く気持ちよくて。
ただただ……幸せでーーーー
「ん…ん………」
(いま何時……8時前………)
季節は秋ということもあって朝はいつもひんやりするのに、今日は全然寒くない。
(あれ? 俺…何してたっけ……)
「んん……」
「っ、」
頭上で声が聞こえて、ピシッと体が固まる。
そろりと顔を上げると、よく知ってる綺麗に整った顔がスースー寝息をたてていて。
(レ、イヤ……?)
あれ?
俺、何でレイヤと一緒に寝てるんだ……?
(!! そうかっ、昨日ーー)
後夜祭でレイヤに告白して、ベッドに運ばれて
それから……
『レ、ヤぁっ!ぁ、あぁっ…も、出ちゃっ!』
『いいぜ、ほら、イけよ』
『ひあぁぁっ!ぁ、~~~~っ!』
(お、俺っ、レイヤとあんなことを…!)
やば、勢いもあったとはいえ…俺凄い乱れてた……
何回くらい出したのかさえ、定かではない。
ってかめちゃくちゃドロドロにされた記憶しか………
(あぁぁぁ……どうしよ…は、恥ずかし……っ)
顔がぶわぁっと熱くなってきて、思わず両手をあてる。
正直、いつ寝たのかの記憶も曖昧で。
そんな事も覚えてないくらいに……
(気持ち良かった…んだよなぁ……っ)
ただただ嬉しくて、気持ち良かった。
自分から…く、咥えちゃったし……
レイヤも、気持ち良かっただろうか?
(そうだと……嬉しい、な………)
ってか、俺たちまだ裸じゃん。
でも体とか全然ベタベタしてない。
レイヤが、綺麗にしてくれたのか?
気遣いにキュッと胸がなって、思わず目の前の体にもっと擦り寄る。
その拍子に昨日貰ったネックレスのチェーンがチャリッと鳴って、それにもテンションが上がって。
(ふふふ、やばっ)
どうしよ、俺いま凄い幸せ。
レイヤのこと…本当に好きすぎる……
〝愛おしい〟って多分こういう時に使う言葉なんだと思う。
「ん……んん………?」
擦り寄ったのがくすぐったかったのか、レイヤが身動いだ。
「……あぁ何だ。起きてたのか」
「すいません、起こしちゃいましたね……」
「いや、いい」
抱きしめてくれてた腕にまた力が入って、それが嬉しくてまた「えへへ」と笑う。
「おはようございますっ、レイヤ」
「あぁ、おはよう。
ーーー〝ハル〟」
(ーーーーぁ)
ビクリと、体が震えた。
レイヤは、裸という事もあって寒いのかと思ったらしく布団をかけ直してくれた、けど……ちがくて。
(あぁ、そうだった………)
俺は、〝ハル〟だ。
ーーもう…〝俺〟じゃない。
後夜祭は、終わってたんだった……
魔法のような時間は、とっくの昔に過ぎてた。
(ははっ。俺、バカだなぁ……っ)
そんな事にも気付かずさっきまではしゃいでたのが、恥ずかしい。
大体、昨日だって散々〝ハル〟って呼ばれてたじゃないか。
このネックレスだって、俺のものじゃない。
そんなの、ちゃんと分かりきってた…はずなのに……
ーーなにを 今更、傷ついている………?
でも、その魔法の代償は……幸せだった分、大きくて。
(胸が…い、たい……っ)
深くまでえぐられて、胸の奥が痛い。
固まってしまった俺を、レイヤが暖めるようにゆっくりと抱きしめ直した。
頭上に、コツンと顎が乗る感触がする。
「あぁ…幸せだ……ハル」
「っ、」
噛みしめるように、とろけるような口調で吐かれる
ーー残酷な言葉。
「これからは、ずっと一緒だからな」
「っ、はぃ……ずっと…い、しょにっ、いてくださぃ………」
声が、どうしようもなく震える。
どうか どうかこの震えは、感極まってのものだと。
幸せすぎて震えてしまっているのだと…そう思って欲しい。
(レイ、ヤ……っ)
こんなに近くにいるのに、貴方は俺のものじゃない。
そうしたのは、紛れもなく俺。
(俺っ、ちゃんと白い魔女に…なれたかなぁ……)
王子様とお姫様を、幸せに……できただろうか。
(~~~~っ)
「一生、大切にする」
「……一生大切に…してくださいっ」
(ハルのこと、大事にしてあげてね)
「この先何があっても、絶対ぇ離さないから」
「ぅん、離さないで……っ」
(凄く優しくて、本当にいい子なんだ)
「どんな時も、側にいて、支える」
(体調が優れない時もあるけど、どうか側にいて、手を握ってあげて)
「初めてのこともいっぱい知って、たくさん楽しんで……
2人でずっと笑い合っていけるように努力するから」
(初めてのことばかりだと思うけど、この大きな腕と優しい体温が隣に居れば…きっと きっと大丈夫だと思うから)
「だからーー」
(だからーー)
「幸せに、なろうな」
「~~~~っ、はぃ…っ、レイヤ……」
(どうかハルを、幸せに、してあげてください)
ーー嗚呼、胸が痛い。
顔を見られたくなくて、そっと目の前の胸板に体を寄せた。
その際にカチャリ…と、ネックレスのチェーンが鳴って
それが、何だか酷く悲しげで
聴きたくなくて、目を閉じて心を遮断したーー
[文化祭編]-end-
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