ハルとアキ

花町 シュガー

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文化祭編

sideアキ: 文化祭開幕 1

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『これより、文化祭を開幕いたします!!』


実行委員会をまとめる副会長さんの一言により

いよいよ、文化祭が幕を開けたーー




「はい、着付けおっけい!次の人おいでー!」

「髪型化粧完璧、はい次」

「和菓子ガラスケース並べて!急げー!!」

「お茶沸かしてる? ポットフル活用しなきゃっ」

「えぇっと、午前中のシフトはーー」

バタバタと忙しなく準備する1年A組。
開幕早々廊下には既に生徒や外部の方の行列ができていて、もうてんやわんや状態だ。

「準備できた人からもうお客さん入れてこ!廊下大変なことなってる!!」

「おーけー了解!」「行くぞ!」

この忙しい中でも各々がそれぞれの動きを把握してテキパキやるべき事をしっかりやっているあたり、流石A組だと思う。

「ハル、おれも教室手伝ってくるから!和菓子準備しなきゃ!」

「俺も先に行くぞ、お茶やってくる。悪いな」

「わかった、気をつけてね!」

袴姿の可愛らしいイロハと文学青年のような着物のカズマも、着替えていた準備室から隣の教室へと向かって行った。

佐古は既に軍服姿で廊下の列を対応している。
みんなが「佐古の言うことは聞くだろう」と、満場一致で廊下担当になった。

『丸雛様っ、矢野元様っ!』
『キャーあの子かわいい!』
『カッコいい!ぇ、写真いいですか!?』
『お席まで案内してください!』


「……わぁ、人気だねぇ2人とも」

「似合ってっからなぁ…ほら、顔動かさない」

「は、はぃっ」

ザワザワとした声が響く隣の教室からは生徒の他にも女性や子どもの声が聞こえてきてて、何だか凄く不思議な感覚になる。

(そっか、外からも人が来てるんだよなぁ……)

体育大会の時はずっと生徒会室にこもってたから、行事の雰囲気とかが全く分からなかった。

今回の文化祭には、みんなと一緒にハルも参加出来ている。
それが凄く嬉しいなと、今になって実感してきた。

(うわ、何かテンション上がってきた……!)

いろんな人が来てるんだよな、楽しみだな!
俺も早く教室でおもてなししたい!
それに、生徒会の仕事で回った時に見た各クラスの出し物にも行ってみたい!
わぁ…どんな感じになってるんだろう……!!

ここは学校なのに、いつもは授業を受けている場所なのに、それが行事ってだけでこんなにも違う空間になっている。

「はい、小鳥遊くん完成」

「有難うっ」

「うん、やっぱやばいな俺完璧だわ。めっちゃ似合ってる。多分クラスで1番かも。うん」

「え、そ、そうかな……」

「おし、小鳥遊くんは教室行くの待ってて。俺も終わりだから一緒行こう」

「あ、僕も一緒に行くー!」

「うんっ、わかった」

着物と髪型は前に打ち合わせした時通りのもの
「化粧は小鳥遊くん必要ないけど、まぁちょっとだけ口紅するわな」と淡い赤色の口紅だけを追加された。

ハルの着付けの順番が1番最後だったこともあり、着付け担当の子と髪型化粧担当の子の3人で教室へと向かう。


カラカラ……


「「「「「ーーっ!!」」」」」

入った途端、あんなに騒がしかった教室がピタッ…と静かになった。

(あ、あれ……)


ポソッ…

「ほら小鳥遊くん、挨拶しよっ」

「似合ってっから大丈夫」

「ぁ、ぅ、ぅんっ」

2人にフォローされ、改めて前を向いて。


「い、いらっしゃいませ……っ」

「いらっしゃいませ」なんて言葉、言うのは初めてで緊張で震えてしまったけど。

でもそれ以上に


「「「キャー!!!!」」」

「「「うおぉぉぉぉ……!!」」」


お客さんたちの大きな叫び声に、教室が震えた。






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