204 / 536
文化祭編
sideアキ: 文化祭開幕 1
しおりを挟む『これより、文化祭を開幕いたします!!』
実行委員会をまとめる副会長さんの一言により
いよいよ、文化祭が幕を開けたーー
「はい、着付けおっけい!次の人おいでー!」
「髪型化粧完璧、はい次」
「和菓子ガラスケース並べて!急げー!!」
「お茶沸かしてる? ポットフル活用しなきゃっ」
「えぇっと、午前中のシフトはーー」
バタバタと忙しなく準備する1年A組。
開幕早々廊下には既に生徒や外部の方の行列ができていて、もうてんやわんや状態だ。
「準備できた人からもうお客さん入れてこ!廊下大変なことなってる!!」
「おーけー了解!」「行くぞ!」
この忙しい中でも各々がそれぞれの動きを把握してテキパキやるべき事をしっかりやっているあたり、流石A組だと思う。
「ハル、おれも教室手伝ってくるから!和菓子準備しなきゃ!」
「俺も先に行くぞ、お茶やってくる。悪いな」
「わかった、気をつけてね!」
袴姿の可愛らしいイロハと文学青年のような着物のカズマも、着替えていた準備室から隣の教室へと向かって行った。
佐古は既に軍服姿で廊下の列を対応している。
みんなが「佐古の言うことは聞くだろう」と、満場一致で廊下担当になった。
『丸雛様っ、矢野元様っ!』
『キャーあの子かわいい!』
『カッコいい!ぇ、写真いいですか!?』
『お席まで案内してください!』
「……わぁ、人気だねぇ2人とも」
「似合ってっからなぁ…ほら、顔動かさない」
「は、はぃっ」
ザワザワとした声が響く隣の教室からは生徒の他にも女性や子どもの声が聞こえてきてて、何だか凄く不思議な感覚になる。
(そっか、外からも人が来てるんだよなぁ……)
体育大会の時はずっと生徒会室にこもってたから、行事の雰囲気とかが全く分からなかった。
今回の文化祭には、みんなと一緒にハルも参加出来ている。
それが凄く嬉しいなと、今になって実感してきた。
(うわ、何かテンション上がってきた……!)
いろんな人が来てるんだよな、楽しみだな!
俺も早く教室でおもてなししたい!
それに、生徒会の仕事で回った時に見た各クラスの出し物にも行ってみたい!
わぁ…どんな感じになってるんだろう……!!
ここは学校なのに、いつもは授業を受けている場所なのに、それが行事ってだけでこんなにも違う空間になっている。
「はい、小鳥遊くん完成」
「有難うっ」
「うん、やっぱやばいな俺完璧だわ。めっちゃ似合ってる。多分クラスで1番かも。うん」
「え、そ、そうかな……」
「おし、小鳥遊くんは教室行くの待ってて。俺も終わりだから一緒行こう」
「あ、僕も一緒に行くー!」
「うんっ、わかった」
着物と髪型は前に打ち合わせした時通りのもの
「化粧は小鳥遊くん必要ないけど、まぁちょっとだけ口紅するわな」と淡い赤色の口紅だけを追加された。
ハルの着付けの順番が1番最後だったこともあり、着付け担当の子と髪型化粧担当の子の3人で教室へと向かう。
カラカラ……
「「「「「ーーっ!!」」」」」
入った途端、あんなに騒がしかった教室がピタッ…と静かになった。
(あ、あれ……)
ポソッ…
「ほら小鳥遊くん、挨拶しよっ」
「似合ってっから大丈夫」
「ぁ、ぅ、ぅんっ」
2人にフォローされ、改めて前を向いて。
「い、いらっしゃいませ……っ」
「いらっしゃいませ」なんて言葉、言うのは初めてで緊張で震えてしまったけど。
でもそれ以上に
「「「キャー!!!!」」」
「「「うおぉぉぉぉ……!!」」」
お客さんたちの大きな叫び声に、教室が震えた。
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話
蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。
終始彼の視点で話が進みます。
浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。
※誰とも関係はほぼ進展しません。
※pixivにて公開している物と同内容です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる