189 / 536
文化祭編
sideアキ: 衣装合わせ 1
しおりを挟む「みんなー衣装の準備できたよ!」
だんだん文化祭が近づいて来て
放課後残ってわいわい準備するクラスも出てきだして
学校全体が、活気溢れるようになってきた。
「わ、衣装だって!」
「俺どんなのだろ」
「僕可愛いのがいいなぁ!」
クラスのみんなが、衣装を準備してた子の周りに集まってる。
(衣装……か………)
あぁ、そう言えばこのクラスって大正ロマン喫茶っていうのするんだったっけ?
色々ありすぎて、決めたのが昔のような感覚だ。
あれから手紙の数はゆうに20を超え、30に届こうとしていた。
写真の数は、もう600枚を軽く超えている。
写っている様子も、最近の出来事のものばかりになってきてて。
(っ、気持ち悪い……)
最近、よく視線を感じる。
単に俺が敏感になりすぎているだけかもしれないが、多分変質者の視線だと…思う。
視線の方向へ目を向けるけど、そこにそれらしい奴がいたことは一度も無くて。
(怖い……っ)
この頃、食事の他にも、まともに寝れなくなる事が多くなってしまった。
部屋のカーテンは、いつどんな時でも締め切るようにしている。
でも、それでも〝何処かで見られているかもしれない〟という恐怖はどうしてもぬぐいきれなくて、寝ようとしても何度も何度も起きてしまって。
結局、気を失ったように知らないうちに寝て、重い体で朝を迎えているような毎日だ。
(みんなには『生徒会の仕事が忙しくて部屋にも持って帰ってるんだよね』って説明してるけど、そんな言い訳いつまで持つか……)
早く。
イロハたちや月森先輩についた嘘がバレる前に、早く奴を見つけなければ。
(一体、誰なんだ………)
「ハールっ!」
「っ、イロハ、どうしたの?」
「ふふふー今ね、カズマと佐古くんが呼ばれて変身中だから待ってるんだよ!」
「あの2人どんな衣装だろうなぁ~!」とワクワクしているイロハにクスッと笑いかけた。
佐古が毎日学校へ来るようになってから、クラスのみんなは何事も無く佐古を受け入れ、気兼ねなく話しかけてくれるようになった。
前みたいに変な距離感は何もなく、本当に対等に。
佐古も、それが凄く嬉しいらしい。
(この教室にも佐古の居場所が出来て、本当に良かった)
学力で選抜されたA組のことだ。
滅多な事がない限り、クラス替えなどは無い。
だから、願わくばこのまま3年間このクラスメイトで佐古の事を受け入れていって欲しいと思う。
「もうみんな結構着替えてるねっ」
「ね!それぞれ凄く似合ってるよねー!」
「うんうん、流石は舞台衣装専門の家だね」
「本当に!」
それぞれの特徴をこと細かに捉えて、ひとりひとりに全く違う衣装を着せている。
その全てが大正ロマンと呼ばれるジャンルのもので、レトロでとても素敵なデザインばかりだ。
「おれたちの衣装も楽しみだねぇハル!」
「うん!本当だねっ」
(ハルの衣装か……どんなのだろ)
きっと春色の何かじゃないかな? 袴かな?着物かな?
どんなデザインかなぁー!
「クスクスクスッ」
「? イロハどうしたの?」
「んーん、ハル楽しそうだなぁって。
ーー最近、元気無さそうだったから、心配してた」
「っ、イロハ……」
「目の下にクマ作ってるし、ご飯もあんまり食べないし……忙しいのは分かるけど、自分を1番に考えるんだよ?」
「それとね…」とイロハの両手が、俺の顔を包んだ。
「大変な時には、とにかく〝笑顔〟!!
笑う事が1番だからっ!」
「っ、」
「ね? そうだと思わないハル?」
「そう、だね……僕もそう思うよ、イロハっ」
「でしょ!?
じゃぁ、今は初めての衣裳合わせでわくわくしてるんだし思いっきり楽しもう? ねっ?」
「~~~~っ、うん!」
ニコリと楽しそうに目の前の顔が笑って、泣きそうになる。
(やっぱり、イロハは凄いや)
普通だったら、俺はイロハに注意されても怒られても何も言えない場面。
それなのに、そんなことはせずただただ元気づけようとしてくれる。
イロハは本当どんな時でも明るくて、ピンッと真っ直ぐで、とても強くて。
(俺も、イロハみたいにならなきゃな)
ザワッ!!
「ん、何か黒板の方騒がしくなったね」
「カズマたち終わったのかも! おれたちも行ってみようよ!!」
「うんっ!」
その、視線の先には、
「「う、わぁ…………っ!!」」
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
同室のイケメンに毎晩オカズにされる件
おみなしづき
BL
オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?
それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎
毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。
段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです!
※がっつりR18です。予告はありません。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
運命と運命の人【完結】
なこ
BL
ユアンには10歳のときに結ばれた婚約者がいる。政略でも婚約者とは互いに心を通わせ、3日後には婚姻の儀を控えていた。
しかし運命と出会ってしまった婚約者はそれに抗うこともできず、呆然とするユアンを前にその相手と番ってしまう。
傷ついたユアン、運命の番たち、その周りにいる人々の苦悩や再生の物語。
『孕み子』という設定のもとに書かれております。孕み子と呼ばれる男の子たちは、子どもを産むことができる、という、それぐらいの、ゆる~い設定です。
3章ぐらいまでは、文字数が少ないので、さくさく読めるかと思います。
R18シーンありますが、下手くそです。
長い話しになりそうなので、気長にお付き合いいただける方にお楽しみ頂ければと思います(◞‿◟)
*R18の回にRつけました。気になる方はお避け下さい。そんなに激しいものではありませんが…
愛欲の炎に抱かれて
藤波蕚
BL
ベータの夫と政略結婚したオメガの理人。しかし夫には昔からの恋人が居て、ほとんど家に帰って来ない。
とある日、夫や理人の父の経営する会社の業界のパーティーに、パートナーとして参加する。そこで出会ったのは、ハーフリムの眼鏡をかけた怜悧な背の高い青年だった
▽追記 2023/09/15
感想にてご指摘頂いたので、登場人物の名前にふりがなをふりました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる