ハルとアキ

花町 シュガー

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文化祭編

sideアキ: 衣装合わせ 1

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「みんなー衣装の準備できたよ!」

だんだん文化祭が近づいて来て
放課後残ってわいわい準備するクラスも出てきだして
学校全体が、活気溢れるようになってきた。

「わ、衣装だって!」

「俺どんなのだろ」

「僕可愛いのがいいなぁ!」

クラスのみんなが、衣装を準備してた子の周りに集まってる。

(衣装……か………)

あぁ、そう言えばこのクラスって大正ロマン喫茶っていうのするんだったっけ?
色々ありすぎて、決めたのが昔のような感覚だ。


あれから手紙の数はゆうに20を超え、30に届こうとしていた。
写真の数は、もう600枚を軽く超えている。
写っている様子も、最近の出来事のものばかりになってきてて。

(っ、気持ち悪い……)

最近、よく視線を感じる。
単に俺が敏感になりすぎているだけかもしれないが、多分変質者の視線だと…思う。

視線の方向へ目を向けるけど、そこにそれらしい奴がいたことは一度も無くて。

(怖い……っ)

この頃、食事の他にも、まともに寝れなくなる事が多くなってしまった。

部屋のカーテンは、いつどんな時でも締め切るようにしている。
でも、それでも〝何処かで見られているかもしれない〟という恐怖はどうしてもぬぐいきれなくて、寝ようとしても何度も何度も起きてしまって。

結局、気を失ったように知らないうちに寝て、重い体で朝を迎えているような毎日だ。

(みんなには『生徒会の仕事が忙しくて部屋にも持って帰ってるんだよね』って説明してるけど、そんな言い訳いつまで持つか……)

早く。
イロハたちや月森先輩についた嘘がバレる前に、早く奴を見つけなければ。

(一体、誰なんだ………)


「ハールっ!」

「っ、イロハ、どうしたの?」

「ふふふー今ね、カズマと佐古くんが呼ばれて変身中だから待ってるんだよ!」

「あの2人どんな衣装だろうなぁ~!」とワクワクしているイロハにクスッと笑いかけた。

佐古が毎日学校へ来るようになってから、クラスのみんなは何事も無く佐古を受け入れ、気兼ねなく話しかけてくれるようになった。

前みたいに変な距離感は何もなく、本当に対等に。

佐古も、それが凄く嬉しいらしい。

(この教室にも佐古の居場所が出来て、本当に良かった)

学力で選抜されたA組のことだ。
滅多な事がない限り、クラス替えなどは無い。

だから、願わくばこのまま3年間このクラスメイトで佐古の事を受け入れていって欲しいと思う。

「もうみんな結構着替えてるねっ」

「ね!それぞれ凄く似合ってるよねー!」

「うんうん、流石は舞台衣装専門の家だね」

「本当に!」

それぞれの特徴をこと細かに捉えて、ひとりひとりに全く違う衣装を着せている。
その全てが大正ロマンと呼ばれるジャンルのもので、レトロでとても素敵なデザインばかりだ。

「おれたちの衣装も楽しみだねぇハル!」

「うん!本当だねっ」

(ハルの衣装か……どんなのだろ)

きっと春色の何かじゃないかな? 袴かな?着物かな?
どんなデザインかなぁー!

「クスクスクスッ」

「? イロハどうしたの?」

「んーん、ハル楽しそうだなぁって。
ーー最近、元気無さそうだったから、心配してた」

「っ、イロハ……」

「目の下にクマ作ってるし、ご飯もあんまり食べないし……忙しいのは分かるけど、自分を1番に考えるんだよ?」

「それとね…」とイロハの両手が、俺の顔を包んだ。


「大変な時には、とにかく〝笑顔〟!!

笑う事が1番だからっ!」


「っ、」


「ね? そうだと思わないハル?」

「そう、だね……僕もそう思うよ、イロハっ」

「でしょ!? 
じゃぁ、今は初めての衣裳合わせでわくわくしてるんだし思いっきり楽しもう? ねっ?」

「~~~~っ、うん!」

ニコリと楽しそうに目の前の顔が笑って、泣きそうになる。


(やっぱり、イロハは凄いや)


普通だったら、俺はイロハに注意されても怒られても何も言えない場面。
それなのに、そんなことはせずただただ元気づけようとしてくれる。

イロハは本当どんな時でも明るくて、ピンッと真っ直ぐで、とても強くて。

(俺も、イロハみたいにならなきゃな)


ザワッ!!


「ん、何か黒板の方騒がしくなったね」

「カズマたち終わったのかも! おれたちも行ってみようよ!!」

「うんっ!」


その、視線の先には、


「「う、わぁ…………っ!!」」




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