ハルとアキ

花町 シュガー

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文化祭編

sideアキ: 写真と、実行委員会と 1

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(今日も、入ってる)


下駄箱の中に入ってる手紙を、みんなにバレないようにそっとカバンへしまった。


あの日、生徒会室で初めて手紙を受け取った時。
カタカタ震える手で何とか全ての写真を回収して、逃げるように教室に帰った。
授業なんて集中できるはずも無く、ずっとずっと写真のことを考えてしまって……

学校が終わって自室に戻って改めて確認した写真は、どれもこれも全部に俺が写っていた。

(一体いつ、撮られてたの……?)

入学式の写真や、教室でみんなと話してる写真。
更には森の中の噴水での写真まである。

所々イロハたちが写っているが、どう見てもメインはハルだと言うように俺が写真の中心にいて。

「…っ、ぅ……」

(こわ、い………っ)

カタカタ震えるのが止まらなくて、自分で自分をぎゅぅっと抱きしめた。

全然、気づかなかった。

俺が馬鹿なのかな?
でもイロハ達にも何も言われたこと無かったし、本当にバレないように隠し撮りされてたんだな……

(ど、しよ……っ、誰かに報告………)

真っ先に思い浮かんだ大好きな人物は、今最も多忙を極めている。
邪魔者には、なりたくないな…重荷にも……

俺が支えないといけないのに、逆に迷惑かけてしまったら元も子もない。

(その関係から、月森先輩やタイラにも言えないな)

月森先輩はレイヤと同じクラス。
だから、ハルの事がレイヤに漏れてしまう危険がある。
いくら月森でも……多分、レイヤには勝てない気がする。
それくらい、レイヤに愛されてる感が恥ずかしいことにある。

タイラも同様だろうな。
何かあったら直ぐに先輩へ報告するはず。

(イロハとカズマも、無理)

2人は今実行委員として、クラスの為に一生懸命業務をしている。
そんな2人の邪魔を、したくない。

(佐古、は………)

出会ってからかなり変わって、今は毎日一緒に学校へ行ってくれて。
部屋でも、料理を一緒に作ってくれて。
ハルのことを親身になって、本当に心配してくれる。

「っ、駄目だ……」

そんな佐古にこんな写真を貰ったことを言ったら、どう思われるだろう?
前にレイヤに軽く襲われかけた時。あの時だってすごく心配してくれて、それを夏休みまで引きずっていた。
そんな佐古の負担に、もうなりたくない。
もう、心配をさせたくない。

ハルである俺の為にクシャリと苦しそうに顔を歪めるのを……もう、見たくない。

(梅谷先生と櫻さんも、佐古と同様の答えだな……)

凄くいい先生たちだから、心配かけて困らせたくない。

ってことは………


「ははっ、誰にも言えないじゃん」


ーー1人で、解決するしか、ない。


その事実に、どうしようもなくヒヤリと心臓が冷えて。

(っ、大丈夫…大丈夫……)

震える体をもっと強く、自分で抱きしめた。




それから、毎朝例の手紙は下駄箱に入っているようになった。
イロハ達にバレないようにそぉっと回収するのが日課になってしまって。

生徒会室でも、1人で業務している時には必ずと言っていいほど扉に挟まれている。

(ハルのクラスの時間割と、レイヤが学園にいない時間帯を把握してんのか……)

そうじゃなきゃ、こんなピンポイントで手紙なんか挟めない。

しかも、ハルが生徒会室に来るのは体育の時間帯。
つまり授業中だ。

(来た時には何も挟まってないのを見ると、授業中に挟まれてる)

生徒には、無理なんじゃないだろうか?

って事、は………

(先生方も、疑わないといけない…のか?)

一体、誰。
誰がこんなことをーー

手紙の数は、もう10をとっくに越した。
入っている写真も、時系列順になっているのかどんどん今のハルの近状へと近づいていて……


「ーール、ハールっ、ハル?」


「っ、ぁ…なに……?」

「ご飯、食べないの?」

今は、食堂。
いつも通り4人で来ている。

(食堂……人、多いな………)

そういえば、貰う写真にもよく食堂で撮られたものが入っていた。
楽しそうにメニューを見つめているものや、いただきますと手を合わせる様子、口一杯に頬張っている様子まで……


ーー〝今〟も、撮られているのだろうか?


「っ、」

「ハル…? どうしたの?」

「体調でも悪いのか?」

「ぁっ、えぇっと……っ」

ハッと3人を見ると、いつの間にか心配そうに俺を見ていた。

「う、ううん平気っ。ただ、何か食欲無くて……」

「大丈夫か? 最近ずっとそんな感じじゃないか」

「前はいっぱい食べてたのに……ハル、どうしたの? どっか悪い?」

佐古も、目で「大丈夫か?」と訊いてきてて。

「ううん。本当に大丈夫だよ。有難うみんな」

〝この瞬間も、今、写真を撮られているかもしれない〟

それを考えただけで、こんなに美味しそうな食事が最近は喉を通らなくなった。

(っ、駄目だ……)

変質者の事を考えるのは一人の時間だけにしろ、俺。

今は、みんなと楽しく話す時間。
これ以上もう心配させないように、パッと笑顔をつくる。

「ねぇっ、それより今日は第一回目の実行委員会だね」

「準備はどうですか?うちの実行委員さん方?」と聞くと、委員さんは「えっへん!」と自信満々のご様子。

「もう資料ばっちしだから!それに発表も!!たくさん練習したもんねっ、ねーカズマ!」

「そうだな」

「えへへー今日楽しみにしといてねハル!」

「うんっ、すっごい楽しみ」

「梅ちゃん先生や櫻ちゃん達にも練習付き合って貰ったの!もー梅ちゃん先生が凄い厳しくてね? それでーー」

楽しそうに話すイロハたちの会話に救われながら、

ヒヤリと冷える胸をそっと抑えた。







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