184 / 536
文化祭編
sideアキ: 久しぶりの、1人の生徒会室
しおりを挟む「…………静かだ……」
誰もいない、体育中の生徒会室。
いつもはレイヤがいるのに、今日は久しぶりに1人だ。
(〝会社の会議〟か)
夏休みが明けてから、レイヤは龍ヶ崎の会議へちょくちょくと出席するようになった。
「こういうのは早めが肝心だからね」と両親に言われているらしい。
だから、最近は時々学校にいない事がある。
(すごいなぁ……)
将来を期待されてるんだな。
まぁ、レイヤが社長になるとかすごい普通に想像できるけど。
(にしても、忙しいなぁあいつも……)
学校での授業に、文化祭準備に、龍ヶ崎の会議に……
ポソッ
「俺も、もっとしっかりしなきゃな」
忙しいレイヤを、支えなきゃ。
文化祭準備は手伝えるから、そこしっかりやろう。
「おし! この時間の業務するか!」
「へぇ……それぞれ面白そうな事するんだな」
各クラスの実行委員から提出された出し物の資料を確認していく。
毎年カフェや喫茶店は希望するクラスが多いらしく、早く提出した上位5組までと決まってるらしい。
(ハルのクラスは早めに書類提出したから、枠に入れてんな)
「別のクラスはスーツ喫茶とかやるのか…って〝T・Richardson(ティー・リチャードソン)〟着用!? やっば、気合い入ってんなぁ……」
T・Richardsonなんて、この世界に疎い俺でも知ってる。
正式には〝Taylor Richardson(テイラー リチャードソン)〟と呼ばれるそれは、予約が早くて3年待ちと言われる世界中から愛されている最高級のスーツのブランド。
そしてそこの社長である〝Padrick(パドリック)氏〟は、大人から子どもまで誰もが知ってる英国出身のハリウッドスターだ。
彼は日本の一般女性と結婚し、現在は日本を拠点に活躍しているらしい……が、
『それはどうやら表向きの情報でね?
本当は、その結婚したお嫁さんの連れ子さんと上手くいってないみたいだよ。それが原因で彼は日本に滞在する時間が長いんだって』
『夏休みパーティーに参加したんだけど、それがT・Richardsonスーツ着用必須のやつで。そこで聞いちゃったんだよね…』とイロハがこっそり教えてくれた噂。
(「連れ子と上手くいってない」かぁ……やっぱ、どんなに凄い人でも躓く場所はあるんだな)
まぁそりゃそうか、人間だし。
でも、そういうのは時間が解決してくれそう。
「ハルも持ってたなぁ。でもパーティーには行かなかったから着る結局機会は未だ無いけど……」
そして確かにこの学園の奴らなら1人一着ちゃんと持ってそうだ。でもそんな豪華なものを文化祭の出し物って……俺文化祭知らないけどそれくらい本気でするもんなの?
謎い…いや謎すぎるだろ……
(……ま、いいや)
取り敢えず提出順にカフェ喫茶店希望のクラスを並べて、選ばれた5組以外のクラスには再度提出をお願いして……
「飲食以外のクラスは特に被ってないな……」
被ってたらじゃんけんの予定だったけど、うまい具合に被ってない。
「恐怖のお化け屋敷に、劇に、合奏に、コスプレ貸出屋さんに、大規模隠れんぼに……」
それぞれの部活の出し物も、とてもユーモア溢れるものばかりだ。
(文化祭って、こんな感じなんだ)
楽しいな、何か本当にお祭りって感じ!
いや祭り行った事ないけど、こう…みんなでワイワイ出し物やって……多分こんな感じなんだろうなぁ。
「よし、書類分け終わったしpcにまとめるか」
キーンコーンカーンコーン……
「ん、終わりだ……」
(何か、1人だとやっぱり寂しいなぁ)
レイヤと話しながら、仕事がしたい。
せっかく席が隣同士なのに、うぅぅ……
「って、俺何考えてんだっ」
な、何か今すっごい乙女だった!
ひぇぇ……恋するとこうなるのか!?
うわキモっ! やばいやばいカムバック昔の俺ー!
パンパンッと思わず両頬を叩く。
「おっし!教室帰ろ」
やりきった書類とUSBをレイヤの机に置いて、ガチャッと扉を開ける。
と、
ーーパサッ
「ーーーーん?」
開けた扉から、何かが落ちてきた。
これは……
「……手紙?」
(扉の隙間に挟まってたのか?)
生徒会室の扉にわざわざ挟んで来るなんて、
きっと、所謂…〝ラブレター〟ってやつだと思う。
誰宛だろう、まぁ生徒会役員みんな顔整ってるしなぁ。
副会長さんへか、はたまた会計さんへか、書記さんへか……
(レイヤにだったら、ちょっと凹む…かも……)
まぁ、あいつ確かにかっこいいしなぁ。
でもここにいる生徒はみんな〝レイヤはハルの婚約者〟って事を知ってるはずだし……
でもっ、知っててもあわよくばーってなる人は、いるよねぇ……
何だかキュゥッと心臓が縮まって、緊張しながら恐る恐る封筒の裏面の宛名を見る。
と、
「ーーぇ?」
(う、そ…だろ……)
そこには〝小鳥遊 ハル様〟という文字。
しかも、手書きではなくpcで打たれたようなもの。
え、待って予想の斜め上なんだけどこれ、まじ?
まさかのハルかよおい!
レイヤかと思った俺の心配を返せ!!
(ま、まぁ…取り敢えず……何か恥ずかしいから生徒会室で開けようかな)
この学園に来てから、こんな手紙貰うのは初めてだ。
え、これラブレターだよな!? え、どうしよ!
教室で開けるのは気まずいし、でも放課後まで待てないし……
初めてもらったから内心ちょっとワクワクしてしまって、早く開けたいなと思ってる自分が、
ーーこの時までは、確かに、いた。
ガチャリともう一度生徒会室に戻り、封筒を開く。
「ってか、何か分厚いな……」
何枚手紙書いてんだよこいつ、すげぇな。
ガサガサと封筒の中に手を入れて、入っているものを何の躊躇も無く思いっきり全部引っ張り出した。
「ーーーーぇ?」
バサバサバサッ!!と凄い音をたてて、取り出したものが全部、手からこぼれ落ちる。
生徒会室の真っ赤な絨毯に、大量に広がった:それ|は
「っ、な、なに…この……〝写真〟………っ」
ーー大量の〝写真〟だった。
0
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
同室のイケメンに毎晩オカズにされる件
おみなしづき
BL
オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?
それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎
毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。
段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです!
※がっつりR18です。予告はありません。
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
運命と運命の人【完結】
なこ
BL
ユアンには10歳のときに結ばれた婚約者がいる。政略でも婚約者とは互いに心を通わせ、3日後には婚姻の儀を控えていた。
しかし運命と出会ってしまった婚約者はそれに抗うこともできず、呆然とするユアンを前にその相手と番ってしまう。
傷ついたユアン、運命の番たち、その周りにいる人々の苦悩や再生の物語。
『孕み子』という設定のもとに書かれております。孕み子と呼ばれる男の子たちは、子どもを産むことができる、という、それぐらいの、ゆる~い設定です。
3章ぐらいまでは、文字数が少ないので、さくさく読めるかと思います。
R18シーンありますが、下手くそです。
長い話しになりそうなので、気長にお付き合いいただける方にお楽しみ頂ければと思います(◞‿◟)
*R18の回にRつけました。気になる方はお避け下さい。そんなに激しいものではありませんが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる