ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
151 / 536
期末テスト編

sideアキ: 決算締め切り日

しおりを挟む


「ーーん。よくできている資料だ」

「「ありがとうございます」」 

締め切り日の放課後。
会長と2人で理事長室を訪ねて報告書の提出をおこなった。

「3年生の先輩方にはテストに集中して欲しいと、今回は2人で作ったそうだね。先輩思いの生徒会だね」

「実は、それは会長の提案なんですよ」

「ほぉ、そうだったのかい? 私はてっきり小鳥遊くんかと思ったよ」

「クスクスッ。僕も提案を受けた時には驚きました」

「っ、その話は今はいいでしょう……」

「はぁぁ…」とため息を吐く会長にふふふと笑いかける。

「ーーしかし」

「? なにか?」

「今回は部活動に関しても厳しくしてくれたそうだね」

「えぇ。どうやら前々から虚偽の報告をすることが当たり前になっていたようですので、小鳥遊と一件一件調べました」

「ふむ…なるほど。実は、私も前々から生徒会が提出する報告書には疑問に思う点がちらほらあったんだ。だが、いかんせん調べる暇がなくてな……ありがとう、君たちには感謝するよ」

「いいえ、僕たちはやるべき事をやったまでです」

「クスッ、流石は〝龍ヶ崎〟と〝小鳥遊〟だね。これだけの資料を2人だけで作った事も十分素晴らしいが、なによりこうして悪事を暴いてくれたことに関しても、本当に素晴らしい」

「ありがとう。今後ともよろしく」と、理事長は綺麗に笑った。






「はぁぁぁ…やっと終わりましたねぇ~」

「そうだな」

あの雷の日から猛ダッシュで期限に間に合わせて、何とか無事提出することができた。

(色々あったけど、今日でようやく終わりか)

「んんー!お疲れ様でした、

「……ん?」

「?どうしたんですk…あ………」


チュッ


「っ!」


「ハハッ、慣れねぇなぁハル」


「う、ぅぅ……いきなりするの反則です、かいっ…

ーー!」


「ククククッ」


あれから、なかなかレイヤと呼ばない俺に呆れた会長が「会長って呼んだらペナルティな」とキスをしてくるようになった。
「周りに誰がいる時は、しょうがねぇから許してやるよ」って100歩譲ってくれた…けど……

(く、そぉ……っ)

「まぁ、俺としてはもっと間違ってくれても別に良いんだぜ?」

「っ!も、もう間違えません!」

「クッ、ハハッ。 はいはい」

「落ち着け」と言うように頭にポンッと手を置かれる。

「明日から、放課後はもう残る必要無くなるな」

「そうですね。そして、明後日からはいよいよ期末テストですね」

二日後、ついに期末テストが来る。
バタバタしながら勉強した分を、今日明日でちゃんと復習しとかなきゃ……

「頑張ってくださいねレイヤ。決算締め切りのせいで成績落としたとかやめてくださいよっ?」

「ハッ、誰に言ってんだ。その言葉そっくりそのまま返してやるよ。お前こそ気ぃ抜くなよ、ハル」

「ふふっ、そっちこそ誰に言ってるんですか」

クスクス笑いながら、ゆっくりと寮までの道を歩いた。





「送っていただいてありがとうございました」

「あぁ」

そっか、送ってもらうのも今日で終わりなのか。

これまで、道中いろんな話ししながら帰ってきたな……
………ちょっとだけ…寂しいかも……なんて

(って、なに考えてんだよ)

おかしいおかしい、今のやばい。
どうしたんだ俺。

(はぁぁ…早く部屋入ろ……)

「それじゃあ、失礼します。おやすみなさーー」


ドンッ


「っ、え?」


「ハル」


ドアに体を縫い付けられるように押さえられて、グイッといきなり顎を取られる。

「お前からキスしろ」

「ーーへ?」

「今まで送ってやっただろ? 今日で最後なんだから、なんかお礼貰ってもいいだろ」

「そ、それなら他のものをーー」

「駄目だ」

ズイッと更に顔を近づけられる。

「ほら、ハル」

「……っ、ぅ、うぅ…っ」

な、なんでこうなるんだ……っ!
レイヤってキス好きなのか!? なんなんだ!?

離してほしいけど、でもするまで許してくれなさそうで。

(~~~~っ、くそっ!)


「目、閉じててください……っ」


「ん」


ポツリと言うと、素直に閉じられる強い瞳。

(落ち着け、落ち着け俺……)

唇を、くっつけるだけだ。
うんそう、くっつけるだけ!簡単じゃん!!

それがキスするって意味なんだけど、とりあえず今は置いとく。

ゆっくりと深呼吸をして
「おしっ!」と意を決して少しずつ顔を近づけて


そして、震える呼吸で……ふわりと唇を重ねた。


(こ、これでいいよなっ)

よし、離そuーー


「んぅむ!?」


離れていく俺の頭をグッと固定され、驚いて開けてしまった俺の口内に雷の日のようにヌルッとしたものが侵入してきた。

「ふ、ぅ…ふぁっ、ん……!」

(ぁ、うそ……っ)

クチュクチュと口内をかき回され、頭がまたボォ…っとしてくる。

「ぅん…ふっ、ぅ……ん…レ、ヤぁ……」

「っ、ハル…」

抵抗しようとしても、体に力が入らなくて。

(も、だめ……)

立って…られなーー

「ぅ……プハッ、ぁ…」

ギリギリの瞬間で、タイミング良く唇が離れていって。
透明な糸がツゥー…と伸びていて、それをぼぅっと見てしまう。

「はぁ…は……ぁ……はぁ…はぁ……」

涙目になって肩で息をするのを、レイヤが優しく抱きしめた。

「はぁぁ……クソ…エロいな……」

「……っ」

(誰の…せいだよ……!)

「ま、これで礼は受け取ったかな」

楽しそうにクククッと喉で笑って、ポンポンと背中を叩いてきた。

「……なんですか」

「ほら、部屋に入れ」

「なっ、誰のせいでこうなってんですkーー」

チュッ

「!?」

「ははっ。たく……隙が多いぞハル」

ニヤリと笑われて「じゃあな」と会長は立ち去っていった。

(……な)

なんだこれ。
最近そうだけど、なんか急接近してないか?


『ーーお前の事が好きだ。ハル』


「っ、」


(だ、駄目だ、部屋入ってさっさと勉強しよう!そうだそうだ!!)


期末テストまで後2日。

俺は、余計な事が思い浮かばないようにとにかくシャーペンを動かしまくった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

同室のイケメンに毎晩オカズにされる件

おみなしづき
BL
 オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?  それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎  毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。  段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです! ※がっつりR18です。予告はありません。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

運命と運命の人【完結】

なこ
BL
ユアンには10歳のときに結ばれた婚約者がいる。政略でも婚約者とは互いに心を通わせ、3日後には婚姻の儀を控えていた。 しかし運命と出会ってしまった婚約者はそれに抗うこともできず、呆然とするユアンを前にその相手と番ってしまう。 傷ついたユアン、運命の番たち、その周りにいる人々の苦悩や再生の物語。 『孕み子』という設定のもとに書かれております。孕み子と呼ばれる男の子たちは、子どもを産むことができる、という、それぐらいの、ゆる~い設定です。 3章ぐらいまでは、文字数が少ないので、さくさく読めるかと思います。 R18シーンありますが、下手くそです。 長い話しになりそうなので、気長にお付き合いいただける方にお楽しみ頂ければと思います(◞‿◟) *R18の回にRつけました。気になる方はお避け下さい。そんなに激しいものではありませんが…

処理中です...