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期末テスト編
sideアキ: 雷 1
しおりを挟む俺とハルは双子だ。
双子は似てるところだらけと思われがちだが、
実は、似てないところもちらほらある。
俺たちの場合、その大きく似てないところが〝雷〟でーー
「ひっ…………!!」
1番大きな音が鳴ったと思ったら、バチッ!と消えた電気。
(ぁ、う…そ……っ)
部屋の中が一気に真っ暗になって、
雷の音だけがただただ響いている。
「…っ、ぁ………は……っ」
(や、ば……っ)
ーー幼い頃から、俺だけ雷が苦手だった。
苦手なんて生温いものではなく、恐怖だった。
原因は、母さん。
幼い頃から、いつも俺を上から見下ろして大きい声で怒っていた。
視線を合わせて怒られたことなど、一度もなくて。
だから、同じように空の上から凄い音を立てて落ちてくる雷は…どうしても怒っている母さんを思い出してしまって。
(っ、ハル………)
『アキ。 アキ、大丈夫だよ』
いつもいつも、雷の鳴る日はハルのベッドに潜り込んで、ハルに抱きしめてもらっていた。
『アキ、大丈夫だからね。僕がいるよ』
(ハル…ハル……っ!)
ハルは母さんたちには怒られないから、雷が怖くない。
怖いのは俺だけで。
俺とハルの、唯一の違い。
だから、学園じゃ絶対バレないようにしようと思ってたのに。
今日は佐古も居ないし、部屋に1人でラッキーだと思ってたのに。
どうしてこうも…タイミングが悪いんだ。
(しかも、一番バレちゃいけない人が…今、この部屋にいるのに……)
でも、
(も、無理…………っ)
自分で自分を抱きしめるように両手でぎゅぅぅっとしても、ガタガタ震えが止まらない体。
どんどん どんどん、浅くなってく呼吸。
(ハル…ハル……たすけて………っ)
幼いころから、雷の日はいつも一緒にいてくれて。
小さい手が背中をポンポンってしてくれて。
俺と同じ大きさの体が、ギュって包んでくれて……
ーーあぁ、もう駄目だ。
(「ハル」って、呼びたい……っ)
今、ハルの俺がこの場で「ハル」って呼んだら全てが水の泡になってしまう…そんなの嫌でも分かってる。
でも、それでも……
俺の体全部が、心全部が、ハルって呼びたいって叫んでて。
「ぁ……っ、ぅ………はぁっ」
ドクドクと心臓の音が早くなっていく。
(呼んじゃ、だめだ、だめ…だめ……っ)
でも、もう、もう無理ーー
(はっ、ぁ………っ!)
『アキ』
「っ、ぁ……た、すけて…………ハrーー」
フワリ
「大丈夫だ」
「ーーぇ……?」
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