ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
98 / 536
親衛隊編

4

しおりを挟む




〝小鳥遊〟を、上手く学園に浸透させる。

今浴びせられてる好奇心のような、狙いを定めているような学園中の視線を、親衛隊を使って少しでも回避したい。

(毎日毎日これだと、きっとハルは倒れてしまう)

そんなの嫌だ。
早期に、どうにかしたい。

その為には、先ずこの2人を突破しなければいけない。

(無理な事言っちゃってるのはわかる)

でも

でも、どうかお願い先輩、星野くん……



「………、クスッ…まったく…貴方というお人は……」

ポン、と頭に手が乗った。

「そんな不安そうな顔で見つめないでください小鳥遊様。 大丈夫ですよ」

「っ……」

サワリ、サワリと優しく撫でられる。


「ーーかしこまりました。

それでは、一度小鳥遊様の変更点2つを取り入れて動いてみましょう」


「!」


(ほ、本当に……?)

見上げると、「安心してください」と言うようにニコリと微笑まれた。

「そ、そんな…正気ですか月森先輩!? それじゃぁ僕らはーー」

「星野」

「っ、は、はぃ……」

「私たちは小鳥遊様の為に居るのです。小鳥遊様がそう望まれているのならば、そうするのが道理。違いますか?」

「っ! 仰る通り…です……」

「今回小鳥遊様から頂いた変更点はこれまで例に無い異例なものですので、正直どうなるかは私も見当がつきません。 しかし、主人あるじがそれを望んでいるのです。私たちが後押しせずにはいられないでしょう」

ポン、と僕の頭を撫でている手と逆の手が星野くんの頭に乗る。

「何事も動いてみないと始まりません。先ずは、やってみましょう。そこでまた何かしらの問題点が出たら、その時にまた話し合いましょう。 よろしいですか? 星野」

「…っ、はぃ。わかりました、先輩……」

「ふふふ。 ーー小鳥遊様」

「はい」

「これから我々は貴方に従い、ルール変更をおこなって再度親衛隊の体制を整えます。
ですが、万が一何かしらのトラブルや事件が発生するようであれば、早急に元のルールへと変更を許可していただいてよろしいでしょうか?」

「はい、勿論です。よろしくお願いします先輩」

「……クスッ、貴方の強い決意、確かに受け取らせていただきました。それでは、貴方の仰った通りに動いてまいりますね」

(よかった…通った………)

これまで例がない変更らしいから、先輩にはかなり負担がかかってしまうだろうな…我儘言って申し訳ない。

「ぁ、あのっ、小鳥遊様!」

「? どうしたの星野くん」

「さ、先ほどは真っ向からご意見を否定してしまい、申し訳ありませんでした……!」

「ふふふ、いいよいいよー否定されるのは当たり前の意見だし。それに、反論してくれて凄く嬉しいよっ、流石副隊長さんだね。
これからも僕が何か変な事言ったら、すぐに教えてね?」

「っ、はぃ!ありがとうございます、小鳥遊様!」

ふふふ、お礼言われる事言ってないけどな。

「小鳥遊様」

「はい」

「これから私と星野で早急に隊の編成にかかります。幹部等の人選に関しては、私どもに任せていただいてよろしいですか?」

「はい、お願いします」

「承知しました。また、隊のメンバーごとにファイリングしたものも後日お届けに伺います、ご確認ください。純粋なメンバーを4分割したファイルが4冊、掛け持ちメンバーのファイルが1冊、私や星野・その他幹部の説明で1冊…計6冊程になりそうですが」

「はい!よろしくお願いします。寧ろ6冊も作らせちゃってごめんなさい。僕も何か手伝える事あったら……」

「いいえ小鳥遊様!僕たちが責任持ってやりますので、小鳥遊様はご自身のお体と学園の生活、それから生徒会を優先してください!!」

「クスッ、その通りですよ。このような雑務、私達にお任せください」

「…っ、ありがとう、ございます……」

(ありがたいな)

俺の我儘で仕事量がかなり増えてしまったのに、嫌な顔1つせず笑ってくれて。

本当に

(〝俺〟に協力してくれてありがとう。2人とも)


「……さて、せっかくの紅茶が冷めてしまいましたね。もう一度入れ直してきましょうか」

「いいえ、凄くいい香りなのでこのまま頂いてもいいですか?」

「ふふ、勿論ですよ小鳥遊様」


それからは、紅茶と茶菓子をご馳走になりながら何気ない会話が始まった。

(先輩も星野くんも、信じていい人たちだな)

ハルのことをこんなにも真剣に考えてくれている。
この人たちがハルの親衛隊で良かった……


「ーー月森先輩。星野くん」

「? 何でしょうか」

「2人には、僕のことを小鳥遊じゃなく〝ハル〟って呼んで欲しいんです。 駄目でしょうか……?」

「可能であればそうお呼びしたいのですが……よろしいでしょうか?」

「! 勿論ですっ!」

「クスッ、それでは親衛隊では私と星野のみ、小鳥遊様の事を〝ハル様〟とお呼びいたしましょう。
許可頂きありがとうございます」


この2人はイロハたち同様、ハルに凄く関わる人物になると思う。
だから、2人には〝小鳥遊〟でなく〝ハル〟を。

ーー〝俺〟じゃなく〝ハル〟を、覚えていて欲しい。


「私のことは、変わらず〝月森〟とお呼びください。月森一族は皆、主人からは名字で呼ばれるのです」

「わかりました、月森先輩。 星野くんは下の名前でいい?」

「ふわぁっ!ぇ、ぇと!ぁの!ぼ、僕のお名前…呼んで下さるんですか……?」

「勿論だよ!タイラって呼んでもいい?」

「!! ありがとうございます、小鳥遊さmーー」

デコピンッ!

「こらっ、タイラ違うでしょー僕のことはハルって呼ぶの。わかった? ほらタイラ、呼んでみて?」

「ぅ、ぁぁ、ぁ、あぅぅ……」

みるみる赤くなる顔、涙目になる目。

(あー可愛い本当)

「ふふふ。ほら、そんな顔で見つめられても逃がさないよ? タイラ、言ってみて」

「っ、うぅぅ……先輩っ」

「クスクス、私に助けを求めても無駄ですよ? ほら、ハル様がお望みです。呼んであげなさい星野」

「ひうぅ…ぁの、ぇと…ぇと…!」


結局、星野くんが顔を真っ赤っかにしながらしどろもどろに〝ハル様〟と呼んでくれたのは、寮の消灯時間ギリギリのことでしたとさ、まる。







[親衛隊編]-end-

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...