ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
75 / 536
婚約者編

sideアキ: 黙っててごめんなさい 1

しおりを挟む




ドン!!

「おい、小鳥遊………」

「は、はぃ…」

食堂から慌ただしく教室に戻って午後の授業を受け終わって、帰る直前に梅谷先生から「寮帰ったら寮監室行っとけ」って小声で言われて。

それで、いま寮監室なんだけど……

(え、なんでまた壁ドンされてるの!? 梅谷先生壁ドン好きなの!?)

「てめぇ……この前放課後話した時俺言ったよなぁ?
『実は…』が無いように全部言えって」

「は、はい」

「はいじゃねぇよ! なんでお前〝龍ヶ崎の婚約者〟だって言わなかったんだ!!」

「だ、だってそれは僕の体には関係のない事だったので……っ」

「体じゃなくてもお前自身に大いに関係あんだろうが!! ったく…なんだこのクソだるい設定は……パーフェクトじゃねぇか………」

「まぁまぁ、落ち着いてください」

壁から手を離して「はぁぁ……」と深くため息を吐く先生に、櫻さんが声をかける。

「お、おれたちもビックリしたよハル……」

「まさか、会長がハルの婚約者だったとは…」

「イロハ、カズマ……
みんな、驚かせてしまって本当にごめんなさい」

シュンっとなって謝った。

「言おう言おうと思って、でもどう切り出せばいいのか分からなくて…伝えるのが、怖くて……」

結局、事後報告になってしまった。

「ハル、そんなに落ち込まなくてもいい。驚きはしたが、俺もイロハも変わらずハルとは友だちだ。関係は何も変わらない」

「そうだよ!佐古くんだってきっとそうだと思うから、大丈夫だよ!!」

「っ、ありがと……」

あの生徒会長の龍ヶ崎 レイヤの婚約者となれば、きっと友だちだろうと関係は変わってしまうと思って怖かったのに。
そんな俺の考えを先回りしてクギを刺してくれる2人に、胸がキュゥゥっとなる。

「それにしても小鳥遊くん。本日の食堂での出来事は私の耳にも入ってきましたが、そもそも今回の婚約はどのようにして決まられたのですか?」

差し支えなければ、お伺いしても?

お茶を出しながら優しく櫻さんに訊ねられた。

「はい、勿論です。お話ししますーー」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

同室のイケメンに毎晩オカズにされる件

おみなしづき
BL
 オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?  それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎  毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。  段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです! ※がっつりR18です。予告はありません。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

処理中です...