ハルとアキ

花町 シュガー

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婚約者編

sideアキ: さぁ、始まりだ!

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ついに

ついに、待ちに待った。


(入学式の日だ!!)


「佐古くんっ、先に洗面台使っていい?」

「おー」

「ありがとう!」

昨日から帰ってきてる佐古と仲良く朝ごはんを食べ、そのまま先に顔洗って歯磨きをして。
佐古と交代してから朝ごはんの食器を洗って、途中から佐古が濯ぐ人をしてくれて。


「ーーよし、それじゃぁ僕は行こうかなっ」

「は、もう? まだ時間早えぇだろ」

家事をしたままの足でパタパタ玄関に向かう俺を、不思議そうにみてる。

「学校楽しみで!貼り出されてるクラス分けの掲示板も見なきゃだし、人多くなる前に確認しとこうかなって。
それに、僕みんなより歩くの遅いからそろそろ出とかなきゃ」

初めての学校。
初めてのクラス。
初めての行事。

全てが楽しみで、ワクワクする。

(学校って、どんなところなんだろう……!)

「俺も行く」

「え?」

さっきまでリビングで寛いでたのに、いつの間にか佐古が隣で靴を履いてた。

「そ、そんなっ、佐古くんまだ時間あるんだしゆっくりしてても……」

「つぅかお前、その荷物はなんなんだ?」

「あ、これ?明日から授業始まるし、鞄重くなるから辞書とかだけでも先に置いとこうかなって」

今日は特に必要なものは無いけど、計画的に持って行こうと思ってたから俺の鞄は辞書とか重いものでパンパンだ。

「はぁぁぁ…くそ真面目だな、お前」

「なっ!だ、だって初めてなんだから!
事前に持ってくものは計画的に、て、わっ」

両手で持ってた鞄をグイッと佐古に取られた。

「え、ちょ、なんで……」

「あぁ? お前重みぃだろ、持ってやるっつってんだよ分かれよ」

そのまま片手で背負うように持ってくれる。

「…………」

「あ、いや、別に、これはお前が弱いとか、そんなんじゃねぇぞっ。ただ、その」

「……っ、あははっ、分かってるよ佐古くん。ありがとう」

「っ、早くいくぞ、ハル」

バタンッ、と先に佐古が出て行く。

(ほんっと優しいなぁ)

料理教室をした日から、佐古は少しずつ俺に関わってくれるようになった。
距離を置かず、対等に接してくれる。
そして、なんだかイロハたちみたいに佐古もハルを助けてくれるようになって……

(ほんっと恵まれてるや)

ありがたい。


佐古には「俺のことは名字で呼んで欲しいからお前のことも名字で呼ぶぞ」って言われたけど、それは俺が拒否した。

『佐古くんのことはちゃんと名字で呼ぶ。だから、僕のことは小鳥遊じゃなくて〝ハル〟って呼んで欲しい。
……お願い』

佐古の中の〝ハル〟をもっと確かなものにしたくて、俺は名字で呼ばれたくなかった。

佐古も、有無を言わさない俺の目に止む終えず了承してくれたような感じで……
でも、ちゃんとハルって呼んでくれる。

本当、真面目な奴。

思い出してクスリと笑って、クルッと部屋の方を向いて。

ポソッ
「いってきます」

佐古を追いかけるようにガチャッ、とドアを開けた。



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