ハルとアキ

花町 シュガー

文字の大きさ
上 下
8 / 536
友だち編

2

しおりを挟む





「こんにち、わ……」

(う、わぁ……)

まず目に飛び込んできたのは、大きなシャンデリア。
細かい装飾なのにすごく綺麗に手入れをされてて、美しく光を灯していた。

(すごい綺麗…キラキラしてる……)

俺の屋敷にもシャンデリアはあるけど、それとはまた違った感じで、本当に綺麗で。

思わずポーっと見惚れてしまってーー


クスクスクス


「っ!?」


(え、)

控えめな笑い声にハッと振り向くと、長い髪を左で結び肩から流している優しげな雰囲気の人が立っていた。

「驚かせてしまって申し訳ありません。
学生たちが何気なく通り越してしまうシャンデリアに見惚れている貴方が可愛くて、つい……」

「か、かわっ!? ゃ、ぇと、そのっ……」

シャンデリア見慣れてない人って思われたかな!?

ワタワタと手を動かして「これは、あのっ」と必死に挽回しようとする俺の頭に、その人がポンッと手をのせる。

「ふふふっ、別に貴方を馬鹿にしたりとかそういう目で見ているわけではないんです。ただ、貴方の家にも沢山あって見慣れているでしょうシャンデリアに、目をキラキラさせれて見惚れてくれているのが、本当に本当に可愛くて…ただそれだけなんですよ?」

変な誤解をさせてしまいましたね、ごめんなさい。

優しく笑いながら、その人はサワサワと頭を撫でてくれる。

(ぁ、手、気持ちいい……)


ーー幼い頃から、両親に頭を撫でられるのはいつもハルだった。


『今日は体調がいいんだね』

『お夕食全部食べれたのね、偉いわ!』

そう言って、母さんや父さんに頭を撫でられるハルを、いつも遠くから見ていた。

俺だって、今日はいつもより元気なんだよ?
今日は何も残さずに頑張って食べたの。

だから、

俺も…ハルみたいにあたま撫でて……?


『アキすごい!今日は全部食べれてる、えらいねっ!』


(ハル……)

誰も気付いてくれない、そんな時でもハルはいつも気付いてくれて。
俺と同じ小さな手が、頭を撫でてくれて……

嗚呼、どうしよう。

さっき屋敷を出て、まだ学校に着いたばかりなのに。


(もう、ハルに会いたいよ……)








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

同室のイケメンに毎晩オカズにされる件

おみなしづき
BL
 オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?  それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎  毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。  段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです! ※がっつりR18です。予告はありません。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

運命と運命の人【完結】

なこ
BL
ユアンには10歳のときに結ばれた婚約者がいる。政略でも婚約者とは互いに心を通わせ、3日後には婚姻の儀を控えていた。 しかし運命と出会ってしまった婚約者はそれに抗うこともできず、呆然とするユアンを前にその相手と番ってしまう。 傷ついたユアン、運命の番たち、その周りにいる人々の苦悩や再生の物語。 『孕み子』という設定のもとに書かれております。孕み子と呼ばれる男の子たちは、子どもを産むことができる、という、それぐらいの、ゆる~い設定です。 3章ぐらいまでは、文字数が少ないので、さくさく読めるかと思います。 R18シーンありますが、下手くそです。 長い話しになりそうなので、気長にお付き合いいただける方にお楽しみ頂ければと思います(◞‿◟) *R18の回にRつけました。気になる方はお避け下さい。そんなに激しいものではありませんが…

処理中です...