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第一章 ハンドリーツ編
18.遠い町(キャロルサイド)
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暗い寒空の下、キャロルはフォレストを雪の上に下ろし、そこに毛布代わりとしてコートをかけた。
フォレストは未だ、深い眠りの中にいる。そこから目覚めるのがいつになるのかは、キャロルにさえわからなかった。
キャロルは白い息を吐いて立ち上がり、フォレストから視線を逸らす。
ポケットから携帯を取り出して、いくつかのボタンを押すと耳に当てた。
「私よ。例の作戦を今すぐ実行に移して。……この町は、もう捨てるわ」
『了解しました、キャロル様。……ごふぉ! むぐぉ!』
電話の向こう側から、肉体の破壊される、血液の飛び散る音が聞こえる。
――その存在を深く知ることが死につながる、まさに情報の劇薬。厄介な兵器ね。
キャロルは電話を切った。ほんの数秒間、目を閉じ、犠牲となった仲間たちに想いを馳せる。
だがすぐに、その瞳は遠く離れた光り輝く町へと向けられた。
「……仕方のないことよね。戦争に犠牲は付きものだし、これで奴らを一網打尽にできる可能性があるのだとしたら、やる以外にはないのだから」
計画自体は失敗に終わった。目を付けた古代兵器は、現代の人間がコントロールできるほど容易いものではなかった。成果は何もあげられなかったものの、それがわかったということこそが成果だった。
「それでも構わないわ。お父様の求めているものは、この程度のものではなかったのだから」
キャロルはほくそ笑み、視線の先にある、ハンドリーツの町並みを眺めた。
「これで死んだら、それまでの男だったっていうだけの話よ、リュウ」
目を細める。憎むように、嘲るように。
手を伸ばす。町に手のひらを重ね、ゆっくりと、転がすようにして握り潰す。
「見物ね。あなたたちがこのピンチをどう乗り越えるのか」
フォレストは未だ、深い眠りの中にいる。そこから目覚めるのがいつになるのかは、キャロルにさえわからなかった。
キャロルは白い息を吐いて立ち上がり、フォレストから視線を逸らす。
ポケットから携帯を取り出して、いくつかのボタンを押すと耳に当てた。
「私よ。例の作戦を今すぐ実行に移して。……この町は、もう捨てるわ」
『了解しました、キャロル様。……ごふぉ! むぐぉ!』
電話の向こう側から、肉体の破壊される、血液の飛び散る音が聞こえる。
――その存在を深く知ることが死につながる、まさに情報の劇薬。厄介な兵器ね。
キャロルは電話を切った。ほんの数秒間、目を閉じ、犠牲となった仲間たちに想いを馳せる。
だがすぐに、その瞳は遠く離れた光り輝く町へと向けられた。
「……仕方のないことよね。戦争に犠牲は付きものだし、これで奴らを一網打尽にできる可能性があるのだとしたら、やる以外にはないのだから」
計画自体は失敗に終わった。目を付けた古代兵器は、現代の人間がコントロールできるほど容易いものではなかった。成果は何もあげられなかったものの、それがわかったということこそが成果だった。
「それでも構わないわ。お父様の求めているものは、この程度のものではなかったのだから」
キャロルはほくそ笑み、視線の先にある、ハンドリーツの町並みを眺めた。
「これで死んだら、それまでの男だったっていうだけの話よ、リュウ」
目を細める。憎むように、嘲るように。
手を伸ばす。町に手のひらを重ね、ゆっくりと、転がすようにして握り潰す。
「見物ね。あなたたちがこのピンチをどう乗り越えるのか」
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