150年後の敵国に転生した大将軍

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6章 学園

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 例の公爵はこの後しばらくこの国に留まるということで、いろいろと観光名所を巡るらしい。国の要所にはいかない、と。そういえば、聞いた話だと、実はあの公爵を迎え入れるために国境、つまりカーボ辺境伯領まで国の迎えをやっていたらしい。そういえば、兄上の結婚式が迫っているのに、父上が何か忙しくしていたような? そのあたりの憂いがないように、僕たちに皇国からの使者が会わないで済むように、と頑張っていたようだ。

 厚かましくも、辺境伯騎士団の視察をしたいとも言っていたらしいが、それはもちろん断った。誰がこちらの手の内を見せるものか。しかも、それをひょうひょうとした態度で行ってきたらしい。本当に厄介な奴。

 ちなみにこの辺りの情報源はシントです。

 そんなごたごたで大人たちが忙しい中、今日は僕らの学園初日。真新しい制服に身を包み、姉上と馬車に乗り込む。一番上の学年から、一番下の学年まで、同じところで学ぶため、建物も一つ。ということで、一緒に行けるのだ。

「ふふ、アランが制服を着ているなんて本当に不思議」

「そうですね。
 自分でもなかなか違和感あります」

「わたくし、真ん中で本当によかったですわ。
 兄上とも、そしてアランともこうして一緒に学園に行けるのですもの」

 楽しそうにほほ笑む姉上に、僕も自然と嬉しくなる。正直学園なんて行ったことがないから、多少は緊張しているのだ。でも、きっとどうにかなるはず!

 そうこうしているうちに馬車は学園へと到着した。

 
 門を通り過ぎて、馬車から降りる。クラスについては事前に連絡をもらっていて、今日はそのまま教室に向かえばいいらしい。ちなみに僕はAクラス。他にどんな人がいるのかはわからない。

 基本はあの視察であったことがある人だろうから、初めて会うのは特別入試で入ってきた一般の人くらいかな?

 クラスが間違っていないことを何度も確認して、緊張のまま教室の扉を開ける。そこにはもう何人かが来ていた。あっ!

「シント、殿下!」

「アラン!
 よかった、同じクラスだったんだね」

「はい。
 よかった、シント殿下がいるなら安心だ」

「それはこっちのセリフだけれど……。
 それにしても、ここにいる間はアランに殿下って呼ばれないといけないのか」

「それは我慢してよ。
 怒られるの僕だし」

 わかってる、というシント。まあ、僕としても今まで通り呼びたかったけどさ。ここはもう公の場なんだ。仕方ない。

 シントと会話をしている間にも、続々と人が入ってくる。やっぱり見たことがある人ばかりだ。まあ、すべての領地を巡って、なおかつまだ各領学校にも入る前だからほとんど家にいる。交流する機会があるのは当然のことだよね。

「あ、シェリー」

「本当だ。
 まさかここで固めてくるとは」

「まあ、気楽ではあるけれどさ」

 シャーロット嬢もこちらに気が付いたようで、ほほえみながらこちらに手を振っている。デザインを変えることが許されていないこの学園では、みんなが同一デザインの制服を着ている。にもかかわらず、シャーロット嬢は明らかにほかのご令嬢とは違っていた。なんというか、オーラが違うのだ。

 もしかしたらシントも違うのかもしれないが、一緒にいすぎて正直よくわからない。そしてシャーロット嬢も合流して三人で話していると、いつの間にか時間が経っていたようだ。鐘の音がなる。それから少しして先生と思わしき男性が入ってくる。思っていたよりも若い先生だ。

「えーっと、ほとんど揃ってますね。
 はい、私がこのクラスの担任になります、リーケトルエン・ミズフェと申します。
 よろしくお願いいたします」
 
 担任……。こんな若いのに、なんだかめんどくさそうなこのクラスの担任。困らせないように頑張ろう。

「それでは、君たちのクラスメイトになる子たちを紹介しますね」

 あれ? 僕らはここに直接集合だったんだけれど、先生から直接紹介? そんな疑問は入ってきた人たちの自己紹介で解消された。

 入ってきたのは男子が二名。二人とも僕たちと同じ真新しい制服を着ている。

「は、初めまして!
 オシンと言います。
 これからよろしくお願いします!」

「あ、え、え、っと。
 キラって、言います。
 よろしく、お願いします……」

 おお、全然違う性格なのはよくわかった。それにしても、なるほど。家名を言わなかったということは、この人たちが今回の特別入試による入学生なのだろう。

「よろしくね、オシン、キラ」

 王太子たるシントによる歓迎の言葉に、周りも同様に歓迎の言葉を口にする。これで何とかこのクラスになじんでくれればいいのだが。
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